デッドニング完全ガイド
デッドニングとは? その目的を初心者向きに解説すると…
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デッドニングとは?……の疑問に、初心者向けに回答。作業工程に入る前に、デッドニングをする目的を明確に解説する。今まで「何となくは分かるけど」だった人も、デッドニングがバッチリわかる。
スピーカー周りのデッドニングと、ドアのデッドニングは目的が違う!?
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「エーモン(オーディア)の新型デッドニングキットを徹底解説」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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エーモンの新しいデッドニングキットは、「ドア用」と「スピーカー用」に分かれているので、今日はこの違いを解説しておきましょう。
●アドバイザー:エーモン 中塚研究員
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どっちにしても、ドアに対して施工するのは同じですよね???
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そうなんですけど、「ドア用」のデッドニングキットの最大の目的は、ドアスピーカーのエンクロージャー化(※)にあります。
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……んんん???
そんな難しいコト言われても。 -
あ、カンタンに言うと、「スピーカーの箱を作る」っていう意味ですね。
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スピーカーボックスを作るってこと?
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そうです。車のスピーカーは、ドアの鉄板に固定されているだけの状態で、厳密には「箱」がない状態ですよね。
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ふむ。ホームオーディオのスピーカーみたいな、立派な箱は付いてませんね。
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でもスピーカーをしっかり鳴らすためには、「箱」は必要です。
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そういえば……そもそも論として、なんで「箱」がいるんだろう?
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スピーカーって、オモテ面からだけ音が出ているわけではないんですよ。
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コーンの振動によって、同じように背面からも音が出ています。
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そうだったのか。
後ろ側でも音楽聴けるのかな。 -
でも、背面から出た音が、ドア鉄板に跳ね返ってオモテに出てくると都合が悪いんですよ。
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それはなぜ?
パワーアップにはならないの? -
そうはなりません。本来必要な、オモテ側の音と打ち消し合ってしまいます。
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スピーカー背面から出た音っていうのは、ジャマなんですね、つまり。
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そうなんです。だから箱に閉じ込めて消すのです。
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だとすると車のドアスピーカーって、ずいぶんいい加減な付け方をしていることになりますね。
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いちおう、車のドアは2枚の鉄板で袋状になっているので、ドアがスピーカーボックスの役割を果たすことにはなっていますが……
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あ、そっか。車はドア自体がスピーカーボックスの役割なのか。
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しかし純正の状態だと、室内側の鉄板(インナーパネル)は、サービスホールで穴だらけです。
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この上から、ドア内張りでフタをしているだけ。なので、スカスカに背面の音が漏れてしまう状態なんです。
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う~ん。
音を打ち消し合いまくりってことか。 -
その状態では、いくら高価なスピーカーを付けても、その性能を発揮することはできません。
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穴だらけの箱では、箱とは言えませんね。
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そこで、デッドニングの目的のひとつが「スピーカーの箱(スピーカーボックス)を作る」ということなんです。
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必要性は分かったけど、どうやって箱を作るの?
※ エンクロージャー(enclosure )は「囲い」「筐体」を意味する英語で、オーディオにおけるエンクロージャーはスピーカーの「箱」を差す。つまりスピーカーボックスのこと。
✔ スピーカーコーンのオモテ面とウラ面では、出てくる音の位相が反対(逆位相)。
✔ 元の音に対して、逆位相の音を重ねると、お互いが打ち消し合って音が消える。スピーカーに箱が必要な最大の理由と言える。
ドア内部は二重構造で袋状になっている
サービスホール(穴)を塞ぐことでドア自体をスピーカーボックス化する
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そこで登場するのが、デッドニングキット・ドア用です。
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このキットの中には、ドアのアウターパネル用とインナーパネル用の制振材が入っているんですが……
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アウターパネルとインナーパネル?
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ドアの鉄板は二重構造になっていると言いましたが、外側の鉄板がアウターパネルで、室内側の鉄板がインナーパネルです。
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ドア内張りを外したときに手前に見える鉄板が、インナーパネルですね。
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手前の鉄板には、穴がいっぱい開いていますね。
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これがサービスホールです。この穴を、制振材(制振シート)で塞ぐんですよ。
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そうすることによって、スピーカーのコーン背面から出た音が、オモテ側に反射してくるのを防ぐのです。
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フタをするんだ~。
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もともとドアの鉄板は二重で、袋状になっていますから、手前のインナーパネルの穴を塞げば、ドアそのものがスピーカーボックス化するのです。
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ズルイ……いや、ウマイこと考えたな。
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これが、ドアデッドニングの最大の目的と言えますね。
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純正スピーカーでも音が良くなるっていうのは、そういう理由だったのか。
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ハイ。でも音が良くなる理由はまだあります。デッドニングの目的はひとつではありません。
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まだあるの?
デッドニングキット ハイグレード・ドア用
ドアに制振材を貼って、鉄板のびびり(共振)をなくす
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さきほど、インナーパネルの穴を制振材で塞ぐと言いましたが、実際の作業では穴を塞ぐ前にやることがあります。
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と言いますと?
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穴を塞ぐ前に、その奥に見えるアウターパネル(車体外側の鉄板)にも制振材を貼るんですよ。
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この作業の目的は?
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ドアの鉄板の補強ですね。純正の状態だと、スピーカーの振動によってドア鉄板も共振(きょうしん)してしまっている状態です。
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ふむふむ。
鉄板がビビっているってことか。 -
そうです。スピーカーはコーンの振動で音を出しますから、土台の鉄板が共振していては困ります。
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確かに。
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「ドア鉄板の共振を押さえる」ことで、ビビリ音を消すとともに、スピーカーの音がしっかり前に出るようにするんです。この目的のために、制振材でドアを補強します。
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なるほど。どちらかと言えば、こっちの目的のほうがデッドニングのイメージかな。
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それともうひとつ。デッドニングキットには、吸音材も入っています。
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これはなに?
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アウターパネル(外側の鉄板)に制振材を貼った上から、この吸音材を貼るんですよ。
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この吸音材は、「スピーカー背面から出た音を吸収して消す」ことが目的です。
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なるほど。単に箱にして閉じ込めるだけではなくて、消しにいくのか。
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このあたりをトータルで処理して「車のドア全体を、スピーカーボックス化する」ということですね。
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デッドニングの目的が、バッチリ分かりました~。
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ここまでが、ドア鉄板のデッドニングですね。
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……そういえば、エーモンのデッドニングキットは「ドア用」だけでなく「スピーカー用」もありましたね。
DIY Laboアドバイザー:中塚雅彦
カーDIY用品メーカー・エーモン広報担当で、エーモンの顔と言える人物。端子や配線コードの仕様など細かいところまで深い知識を持っているので、DIYラボでは「電装DIYのきほん」に関する記事を担当。中塚ハカセ、とも呼ばれている。
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