ヘッドライトのLED化
LEDヘッドライトの消費電力も30Wオーバーの時代へ。問われる放熱性能
今どきのLEDヘッドライトは消費電力も上がっている。もはや35W-HIDと同等レベル。それだけに明るいが、これによって重要度が増した、LEDヘッドライトバルブの放熱性能の進化に注目してみる。
明るくなっても放熱が追いつかなかったら、LEDヘッドライトバルブの寿命が縮む
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LEDというと、低消費電力なイメージがあります。しかしLEDヘッドライトバルブも、パワーが上がるにつれて消費電力が上がってきています。
●レポーター:イルミちゃん
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IPFのH4・LEDヘッドライトバルブの新型モデルでは、ロービーム32W╱ハイビーム36Wに上がっています。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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ようするに、35W-HIDと同等レベルの消費電力まで上がってきている。……どおりで明るいはずだ。
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色も白いし、明るいし、ワイド配光だし、運転しやすくなるのは明白ですけど……
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けど?
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熱はLEDの寿命を縮めますよね? 「明るくて短命なLEDバルブができました!」では、誰も買わない。
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それはそうですね。言い換えると、明るくするためには、今までより冷えるようにするしかありません。
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ヒートシンクや冷却ファンを大きくするとか?
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……しかし新型と旧型を比較する限り、サイズは同じ。
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これ以上、ヒートシンクを大きくして放熱性を上げていったら、取り付け性に問題が出ます。
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ふむ。
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ヘッドライト裏のスペースが狭い車種では、取り付けできなくなってしまいますので。
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モデルチェンジの結果、今まで付いていた車種で付かなくなったらショックだ。
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ですよね。
だから、そういう解決策はあり得ません。 -
では、何をしたの?
純正ハロゲン
最新のH4・LEDヘッドライト
LEDヘッドライトの明るさは、放熱性能で決まる!?
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ヒートシンクは同じモノでも、ヒートシンクの温度が高まれば放熱容量は大きくなります。
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ん?
どういうことでしょうか? -
従来モデルより多くの熱をヒートシンクに運べば、同じヒートシンクでも冷却性能は上がります。
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……そのリクツは、なんとなく分かりますけど。
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ようするに、いかに効率よく「熱」をヒートシンクまで運ぶか、という話です。
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しかし、熱を伝えていく銀色のボディの部分も、見た目はほぼ同じに見えますけど?
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熱伝導率の高い銅基板を使っているんですが、新型では約460%ほど、面積が拡大しているんです。
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冷やすべきはLEDですから、その熱をそのままヒートシンクまで運びます。
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長い銅基板でそのまま運ぶ気か!
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ハイ。そうです。
全部、銅のまま後ろまで熱をひっぱる。 -
銅は、熱伝導率が高いが、値段も高い。
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……そーなんですよね。
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まさしく「IPFの技術部の暴走」が見て取れる部分です。
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しかし熱だまりを減らせば、LEDのピーク温度が下がるので、結果的にパワー(消費電力)が上げられます。つまり明るくできる。
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それはそうだけど、コストの面とかありますよね。
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さらには、ボディの材質も変えていまして。
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まだあるのか。
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従来モデルは「ADC12」というアルミダイキャスト材でしたが、今回は「DMS3」という、三菱ケミカル製の高熱伝導アルミダイキャスト合金です。
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高熱伝導……話がどんどん大げさになってきた。
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まさしくヒートシンクのための最新型アルミ素材です。
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……コホン。性能が高いのはけっこうなんだが、原材料費はいくらなのかね?(社長)
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……ウチ、そういう会社じゃないんで。
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どーゆー会社なんだ、いったい。
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現時点で、技術的にやりたいこと・使いたい素材はすべて注ぎ込んだ、という感じですね。
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ふ~む。
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その結果として、ヒートシンクサイズは変わらずとも冷却性能は上がっているのです。
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最新の放熱性能あってこその“明るさ”なんですね。
見た目は似ていますが、まず、中身の基板がぜんぜん違います
LEDヘッドライトバルブのサンプル基板。
1個あたりのサイズの違い
✔ ひとくちメモ
ロー側LEDチップの下に小さな穴が開いていて、LEDバルブから発生する熱を活用した煙突効果によって、冷気を直接LED基板に吹き付ける「LEDエアクーリングホール」という新技術も投入されている。これはIPF特許技術のひとつ。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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