ドレスアップの気になる話題
ハイビームにも配光って関係あるの?
通常、「配光」や「カットオフライン」はロービームでの話題だが、ハイビームはどうなのか。意外と知らないハイビームの配光について、基本からおさらい。
ハイビームにカットラインはないが、配光はある
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ハイビームは、遠くまで光を飛ばすことが目的ですよね。
●レポーター:イルミちゃん
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対向車がいない状況で使う前提なので、当然カットオフラインというのはありません。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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じゃあ、配光ウンヌンはハイビームには関係ないんだ。
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いいえ。カットラインはないけど、これはこれで「配光」なんです。
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え?
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ハイビームは遠くに飛ばすためのライトなので、「中心部の最高光度をとにかく高くしたい」というのがあります。
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これは……。
地球温暖化とかのグラフ!? -
違います。これは等光度図です。ハイビーム時の。
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つまりはハイビーム時の光の分布図みたいな?
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そうです。「中心部の明るさによって、ハイビームとしての飛距離が決まってくる」ので、真ん中の明るさを重視した配光です。
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なるほどー。カットライン下の明るさを重視したロービーム配光とは全然違いマスね。
ハイビームの配光(純正ハロゲン)
ハイビームの配光(純正ハロゲン)
ロービームの配光(純正ハロゲン)
ハイビーム時の配光にも味付けの差がある
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ところで、H4タイプのヘッドライトでよくある話なんですが……、
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H4は、1個のバルブでハイビームとロービームを切り替えるバルブタイプですね。
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ハイ。そのH4のヘッドライトだと、「ハイビームにしたときに手前が暗いよ?」という人が意外と多い。
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あー。遠くに光を飛ばそうとするから、ロービーム時に比べて手前の路面が暗く見えるんだ。
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これはヘッドライトの特性上、仕方ない面がある。しかし配光にこだわるIPFとしては、ひと工夫したい面があったので……
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ほう。
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中心部の明るさはそのままで、それを下に広げるような配光になるように設計しているんですよ。
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本当だ。
よく見ると、下に光を広げているッ! -
IPFの「341HLB」はロービーム時のワイド配光にこだわっている、という話を前回しましたが……、
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ハイビーム時は、タテワイドってことだ。
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そうなんです。だから純正のH4ハロゲンバルブに比べると、手前の路面も明るくはなっていますよ。
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スゴイ。
こんな光の分布のコントロールが出来るとは! -
だから、「ハイビームに配光は関係ない」っていうのは誤解なんです。
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なるほど、なるほど。
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ハロゲンやHIDでは、こういう配光のコントロールは難しいのですが、LEDヘッドライトバルブは設計で可能です。
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配光マニア・IPFの腕の見せドコロですね〜。
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中には、これでも手前が暗いという人もいますが、それはもう、H4ヘッドライトとしての特性上の限界なんです。
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手前を明るして、遠くが暗くなったらハイビームとして、本末転倒ですもんね。
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まったくもって、そうなんです。
LEDヘッドライト等光度図
IPFのLEDヘッドライト「341HLB」のハイビーム配光(※画像はハイエース装着時)
純正のハイビーム
純正ハロゲンバルブ
IPFのハイビーム
LEDヘッドライトバルブ「341HLB」
ハイビームについて意外と知らない話
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ハイビームと言えば、「ハイビーム点灯時にロービームが消灯する」ことを不思議に思う人もいますが、これは正常な挙動です。
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そういえば、ロービームも点灯していてくれれば、手前も明るくなるのに。
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実はハイビームとロービームが同時点灯してしまう現象は、昔の車のハロゲンH4バルブで時々あったんですが……
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それいいね!
ъ(^ー^) -
いや、これは良くない現象なんです。
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あり?
明るくなりそうなのに…… -
ハロゲンバルブでも、寿命が極端に短くなる恐れがあります。負荷も熱も倍ですから。
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そっかー。
負荷もダブルか〜。 -
昔はそういう挙動の車もあって、それを防止するための「同時点灯防止ユニット」というものがあったほど。
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へー!
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ただ、今でも「パッシング時だけはロービームとハイビーム同時点灯」という制御の車はけっこうありますね。
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そうなんだ。
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これは車種によります。基本はパッシングの瞬間、ロービームは消えている車が多い。
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そんな細かい差があるとは……知りませんでした。
H4バルブは、ハロゲンもLEDも光源が2つ。ハイビーム点灯時は、ロービームを消灯させる。
IPFはローとハイのメリハリを重視する配光
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でもハイビーム時に、手前の路面が暗いよ〜という意見があるなら、「ハイビームとロービームの同時点灯」は解決策になるのでは?
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そういう制御は可能ですが、トータルの出力はあくまでも同じわけですから、さっき言った最高光度点が、下がってしまってしまいます。
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……ということは?
ハイビーム側の飛距離が短くなる? -
そうなんです。そうすると手前が明るくなるけど、遠くが暗くなってしまいます。
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ウーム。
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だから、IPFではあくまでもロービームはロービーム、ハイビームはハイビームの特性に沿って、ハッキリ分けています。
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なるほどね〜。
……でもね、市川研究員。 -
はい?
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だったら、2倍の電気を流して、ハイビームとロービームを同時点灯させればいいのでは。それなら、遠くも犠牲にならない。
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それ……。
放熱が追いつかない。 -
あ、そっか。
冷却がシビアなんでしたね。 -
それにね、もしローハイ同時フルパワーを放熱できるほどの放熱性能なら、それをロービームに振り向ければもっと明るいLEDヘッドライトが作れることになります。
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それもそうだなァ。
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IPFの場合は、ハイビーム時はあくまでも遠くの明るさを重視する、という純正の配光設計に沿っているんです。
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……というわけで、カットラインのないハイビームにも配光はある! そこのところは、よく分かって頂けたと思います。
冷却ファンと大型ヒートシンクの組み合わせで冷却性能を重視しても、限界がある。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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