ドレスアップ用語解説
ヘッドライトのカットオフラインとは?
ヘッドライト関連で、非常に重要なランプ用語・カットオフライン。省略してカットライン、カットオフと呼ばれることもある。ようするにロービームの上方の光をカットする境界線なのだが、バルブ交換後「出ない!」と悩む人が多い。その理由とは?
カットオフラインは、ロービームの上方の光をカットする境界線
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車のランプ用語としてよく出てくる、「カットライン」について教わります。
●レポーター:イルミちゃん
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正式名称は「カットオフライン」。「カットオフ」と省略して言ったりもしますが、全部同じ意味です。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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それで、カットオフラインとは?
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自動車のヘッドランプの前照灯(ロービーム)は、上方に光が飛ばないように、設計されていますよね。
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対向車が眩しくないようにするため、ですね。
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そうですね。路面は照らしたいけれど、対向車には眩しくないようにしないといけない。だから、上方に飛ぶ光を遮光しているのです。
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この「照らしているエリア」と「照らさないエリア」の境界線がカットオフライン。ようは、この境界線で光をカットするからカットオフ、というわけです。
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水平なラインではなく、左上がりのラインになっていますね。左右とも、ビシッと。
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日本は左側通行なので、対向車に眩しくなく、かつ歩道側が先まで見通せるよう、左上がりのカットラインになっているのです。
純正ヘッドライトのカットライン
ビシッ
カットオフラインが出ないのはナゼか?
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カットオフラインが出ているのは、車のヘッドランプとしては当然なのですが……、
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問題が起こるのは、社外品のLEDヘッドライトバルブや、HIDに交換したときですよね。
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「カットオフラインが出ない」という症状で悩んでいる人が多いんですよ〜。
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なぜ? 純正では出ていたカットオフラインが、消えてしまっている?
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純正のヘッドライトは、純正バルブに合わせて設計されています。社外のLEDやHIDを付けるような車の場合は、基本的にもともとは電球(ハロゲンバルブや白熱球)が付いていたわけです。
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電球だったから、LED化したいんですもんね。
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そうなんですが、ヘッドライトのリフレクター(反射面)は、電球の光源位置に合わせて、ランプとしての配光が出るように設計されています。
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……で、例えば社外のLEDバルブに交換して……、
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その光源の位置が純正からズレると、リフレクターに対しての光の当たり方が変わってしまいます。
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おお〜、なるほど。
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結果、同じヘッドランプなのに配光が狂ってしまい、カットラインが崩れたり、まったく出なくなったりします。
カットラインが崩れてしまったり……
モヤ〜
懐中電灯っぽく丸く照らすのみで、カットラインがない(※左)
特にLEDヘッドライトで問題が起こりやすい
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同じ交換でも、電球から電球に交換するケースもありますよね。
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普通にタマ切れしたときとか……?
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あるいは、高効率ハロゲンと呼ばれる明るいハロゲンに交換したりとか。
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ああ。
そういうパターンもありますね。 -
で、電球の場合は、光源位置がきちんと規格で決められているので、「許容範囲内の僅かな差はあっても、基本的に大きくはズレない」という前提があります。
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では社外品でも、ハロゲンバルブに交換したときは問題は起こりにくい?
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そうなんです。「カットオフラインが出ない」といった問題は、特にLEDヘッドライトバルブで起こりがちです。
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それは、なぜですか?
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そもそもLEDは、光源としての特性も違う。電球のように360度方向に照射しません。
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そっか。LEDの光は指向性が強くて、照射範囲が狭めになりますよね。
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ですね。だからIPFのLEDヘッドライトバルブでも、表と裏にLEDチップを搭載して、配置も純正の電球のフィラメントに揃えているんですよ。
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LEDヘッドライトバルブにおいては、特にこの光源の位置が重要です。
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しっかり作り込めば、LEDヘッドライトバルブでもカットラインは出るわけか〜。
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なお、ヘッドライトがプロジェクタータイプの場合は、内部で仕切りの壁のようなものがあります。それで遮光しているので、基本的にはカットラインは出ます。
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それでは、カットラインが出なくて悩むケースというのは……、
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主にリフレクタータイプのヘッドライトで、社外品のLEDバルブなどを付けたとき、ですね。
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ちなみに、付けたLEDヘッドライトにカットラインが出ない場合は、出るようにする方法はないのでしょうか?
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それは難しい話ですね。そもそもバルブ側の作りの問題なので、光軸調整などでは直せません。
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つまりリフレクターヘッドライトの場合は、バルブ選びの時点で決まっている、ということになりますね。
LED光源の位置を純正と揃える!
配光性能が高ければ、LEDでも純正のようなカットラインが出る
ビシッ
実はカットオフライン上にも光は飛んでいる
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せっかくですから、カットオフラインについて、もう少し深い話もしておきますね。
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お待たせしました。
マニアのみなさん。 -
実はカットオフラインの上は、光がまったく飛んでいない、というわけではありません。
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……え?
どういうことですか? -
IPFのLEDヘッドライトでも、カットライン上にうっすらと光が飛んでいるんです。実は。
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これは……上方散乱光! 出てたらダメなやつ!?
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違います!! ここは「ゾーンIII」(ゾーンスリー)というエリア。純正ヘッドライトのリフレクターの作りで「わざと少しだけ光を照射している」のです。
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ええ〜!?
なんのために? -
標識を照らしたり、対向車や歩行者から、視認してもらうための光です。相手から見て眩しくはないけれど、車が来ているな、と分かる程度に光を飛ばしているんです。
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それにしても……どうしていきなり、ゾーンスリー? ワンとかツーは、どこいったのって感じですが……、
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ありますよ。
ゾーンI〜IVまで。 -
こんなの初めて聞きましたが。
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これは、純正ヘッドライト開発段階での、規格上の話ですね。
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つまり一般ユーザーには、直接は関係のないコトではありますが……、
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ゾーンI〜IV、それぞれの明るさの下限や上限なども決まっていて、それを満たした上で量産されているんです。
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なるほど〜。純正ヘッドライトは細かいところまで配光を作り込んでいるわけですね。
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そうなんです。だから後付けバルブを作る上でも、「純正電球の照射を再現する」っていうのは大切なんですよ。
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カットラインがしっかり出ているとか、ゾーンIIIにも適切な光が飛んでいるのは、純正光源に近いものが再現できている証なんですね〜。
IPFのLEDヘッドライトバルブの配光
対向車側から見ると……確かに眩しくないが、ピンポイントで光って見える!
ゾーンI〜IVの位置関係
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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