ドレスアップの気になる話題
ファンレスのLEDヘッドライトを買う前に、知っておくべき話
LEDヘッドライトバルブの「ファンレスVSファン付き」論争(第2回)。ファン付き派と思われていたIPFが、最近になってファンレスのバルブを発売、という新展開。ここで改めて、ファンレスLEDバルブのメリットとデメリットを解説。
ファンレスのメリット・デメリット
バルブを小型化できるので対応車種が拡大
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「ファン付きVSファンレス」論争、第2回です。
※第1回目の論争は、「LEDヘッドライトの冷却ファンが壊れる、は本当か?」参照。
●レポーター:イルミちゃん
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今回は、「ファンレスバルブ」のメリット・デメリットについて解説したいと思います。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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……まずは、突如登場したIPFの「LEDヘッドライトバルブ・ファンレス(H4タイプ)」の紹介をしておきます。
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ファンレス化の最大のメリットは、なんといってもバルブを小型化できる点にあります。
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それでは、従来からある「ファン付き」(↓)と見比べてみましょう。
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確かに、ずいぶんとコンパクトになっていますね。
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そうなんです。「ファン付き」のほうは、冷却ファンだけでなく、ドライバーユニット(※LEDを駆動する部品)も一体化していましたから。
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あれ!?
そういえばドライバーユニットはどこへ? -
ファンレスでは別体(↓)にしています。
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つまり、ドライバーユニットは別で取り付ける必要は出てきますね。
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そうですね。一体化しているほうが、取り付けはシンプルです。ただ、バルブが小さいほうが取り回し性は上とも言えますが。
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『IPFのバルブはお尻がデッカイ』と言われていたのが、よほど悔しかったと見えます。
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そういう話じゃなくて、バルブのコンパクト化によって、取り付けできる車種が増えたのが、最大のメリットです!!
IPFのLEDヘッドライトバルブ「141HLB」
バルブ全体の比較
✔ ひとくちメモ
従来のファン付きLEDヘッドライトバルブ(H4タイプ)は、キャラバンや軽バンなどでは後方スペースが足りず、装着不可だった。ファンをなくせば冷却性能は下がる
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さて! コンパクトさは見た目にも分かりやすいのですが、当然ながらファンレス化のデメリットがあるはず。
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ファンをなくせば冷却性能が下がる。ここが一番の問題ですね。
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……ということは?
壊れやすくなるか、寿命が短くなる? -
ファン付きLEDヘッドライトバルブの場合、「冷却ファンが壊れる」という心配をする人が多いという話がありましたよね。
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前回の「LEDヘッドライトの冷却ファンが壊れる、は本当か?」の話題ですね。
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しかし、ファンがなくなると放熱が難しい。「ファンレスで明るいバルブ」というのは、逆に壊れるリスクが上がるわけです。
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そりゃそーだ。
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一般的なアプローチで言えば、ファンレスは流す電流を減らすしかありません。
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……電流を減らせば、消費電力も下がって、発熱も減りますね。
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そういうことですね。
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……しかし、暗くなる。
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そうなんですよ。そういう風に作っていいなら、話はカンタンなんですが……、
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でもなあ。それでは、積極的にファンレスを選ぶ気が起きませんね。
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そうです。
作り手側としても、それでは納得できません。
この放熱機構の差で、同じ明るさを出すのは無理がある。
ファンレスのデメリットを減らす工夫とは?
ヒートシンクの放熱性は材質で変わる
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まず、ファンレスでもできるだけ明るいバルブを作るために、ファン以外の方法で放熱性を上げていきました。
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ホホウ。
どんな手が? -
ヒートシンクの材質や、加工方法も変えています。従来は「アルミのダイキャスト」。今回は「アルミの押し出し成形」です。
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……そう言われても、どう違うのかよく分かりませんがっ!?
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「ダイキャスト」は金型を使って抜く工法。「押し出し」は、ニューッと出てきたアルミを切って加工する、という工法です。
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フムフム。
工法の違いなんですね。 -
で、押し出し成形のアルミ材のほうが、熱伝導率が上がります。
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新型は小さいけど、LEDの熱を奪いやすいってこと?
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そうです。だから、もしもファンなしの状態で比べた場合には、放熱性が上がっています。
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へぇ〜。
同じアルミ合金でも差があるんですねぇ。 -
ただ、欠点としては細かな加工はしづらい。デザインというよりは放熱させるためだけのヒートシンクというカンジになってきますね。
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なるほど。
見た目は無骨になってくる。でも機能美とも言えるか。 -
それとドライバーユニットも発熱するので、筐体を新しく設計し直しました。
ただの柄だけではなく、放熱性を考えている。
基板の作りにも、最新の技術を投入
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LEDが付く基板が、非常に特殊な基板になっています。
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材料が「銅」に変わりました。アルミより熱伝導率が高い材質ですね。
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アルミ基板の上をいく、銅基板か〜。そして素材として、値段も高い。
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それだけならまあ、世の中にあるものなんですが、さらに工夫しています。
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と言いますと?
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チップLEDの底面って、「電極」の他に、実は「放熱するためのパッド」があるんですけどね……、
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LEDチップの底面の話!?
見えないですけど。 -
通常は、その放熱パッドって、ただ基板の上にのっかっているだけなんです。
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フムフム。
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でも今回のファンレスバルブの基板は、銅の材質がそのまませり上がっている部分があって、そこにLED底面の放熱パッドが密着するようになっているんです。
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平べったい基板ではない?
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一見、普通に板状なんですが、実は凹凸がある。
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へー。基板の出っ張り(銅)が直接当たって、熱を奪う仕組みだ!
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これって実は、銅基板でもなかなか出来ない「基板製造の最新技術」なんですが、それを取り入れてます。
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ほええ。
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というように、細かいところを煮詰めていきまして……、
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……その結果?
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消費電力で比較すると、ファン付きは24W、ファンレスは19Wとなっています。
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同じIPF同士で24Wと19W。つまりは、それがファン付きとファンレスのパワー差ってことか〜。
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言い方を変えると、これだけのことをいろいろやって19Wがマックスだった、ということです。
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それはつまり、イイ線まで来たけれど、ファン付きよりは少し暗い?
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パワー的に比較すれば。
そういうことになります。 -
ファンレスの負け。
けってい。 -
いやいや、そんな単純な話じゃないのです。IPFとしては、ここからもう一段工夫しまして……、
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……その結果?
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結論から言えば「最高光度点」(一番明るいポイント)で比較すると、ファンレスでも遜色ない明るさにできたんですよ。
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あん? その話、ちょっとリクツに合わないし、なんか怪しいし……。
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これは照射比較で見比べてもらうと、よく分かりますヨ。
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というわけで「LEDヘッドライトの〈ファンレス VS ファン付き〉明るさ比較」に続く!
✔ ひとくちメモ
●今回は同等の配光性能を持つIPFのバルブ同士なので、相対的な差を見るスペックとしては、消費電力の差は参考になる。●しかし、比較対象メーカーが異なる場合は、配光性能も異なるため、消費電力で選ぶより、配光も含めたトータルバランスが重要。
●「スペック上の消費電力=路面の明るさ」ではないので、メーカー側が言う消費電力何ワットのうたい文句は、実際の明るさを示す数値としては、あまり参考にならない。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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