社外エアサス導入ガイド(第4回)
電磁弁は故障する、という前提に立ったエアサスの組み方
電磁弁式のエアサスは、機械式と比べると故障の可能性が上がる。定期的なメンテナンスも必要。しかし電磁弁を諦めることはない。故障の心配とガッツリ向き合い、「電磁弁は故障する」前提に立った組み方をする手がある。
シンプルな機械式エアサスの組み方
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「エアサスの仕組み。電磁弁と機械式の違いとは?」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
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今日は、ACCの機械式エアサスと、電磁弁エアサスの組み方の違いを解説していきます。
●アドバイザー:ACC タイソン研究員
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電磁弁のメリットやデメリットについては、前回教わりました。リモコンなどが付けられるのは魅力だけど、故障が心配なパーツです。
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そうですね。ACCとしては、電磁弁はメンテナンスやオーバーホールが必ず必要な部品、という前提に立って、商品設計しているんです。
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……と言いますと?
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その仕組みを説明するために、まずは機械式エアサスの組み方を紹介しましょう。
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ACCエアサスの標準キットは、機械式ですね。
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そうです。
標準キットだと、このように組みます(↓) -
それぞれの部品については、「エアサスで車高が変わる仕組み」で解説した通りですね。
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まだ解説していなかったのは、インフレーションバルブですかね。
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なんだこれ?
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これは、タイヤに空気を入れるときのバルブと同じものです。
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ナゼ、ここから空気を入れるの?
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通常はコンプレッサーが空気を集めますが、緊急時……例えばコンプレッサーが故障した、なんていう時には、ここから直接空気を入れることも可能な仕組みです。
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あー、なるほど。
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コンプレッサーが動かなくなって、車高が下がってしまったときに、ガソリンスタンドでここから空気を補充することもできたり。
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緊急用、なんですね。
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それ以外では、エアサスを組んだ直後の、タンクが空っぽの状態。ゼロからコンプレッサーが空気を集めると、20分位かかったりする。その負担を減らすため、最初は外部から直接空気を入れられるようになっています。
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なるほど、なるほど。
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タンク、コンプレッサー、サスペンション、スイッチ、メーターのほか、このインフレーションバルブまで合わせたのが、ACCの標準キットの中身です。
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ここまでは、標準キット。
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次に、オプションの電磁弁エアサスの組み方を紹介しましょう。
電磁弁が故障した場合でも、機械式エアサスとして車に乗りつづけられる組み方
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電磁弁って、機械式エアサスでいうところの「手動スイッチ」の代わりになるパーツですよね。
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そうなんですが、ACCの電磁弁エアサスでは、あくまでも機械式のスイッチは残したまま、組むんです。
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え!?
どういうことでしょうか? -
あくまでも、機械式エアサスの仕組みはそのままに、電磁弁を割り込ませるという組み方です。
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ホホウ。機械式と電磁弁を、並行して組んだ……みたいな感じ?
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そうですね。ポイントとしては、電磁弁ユニットにつながる経路に、グローブバルブという栓を付けておくところ。
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グローブバルブというのは、栓なんですね。
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このグローブバルブを閉めると、空気の流れを完全に遮断することができます。
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遮断してしまったら、電磁弁に空気が行かないのでは?
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そうです。つまり「緊急時は栓を閉じると、電磁弁ユニットだけを外せる」ということなんです。
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あー!
この状態でも、空気が漏れないんだ。 -
電磁弁ユニットがなくなっても、グローブバルブを閉じてあれば、空気が漏れることはありません。
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これって、もしかして……元のシンプルな機械式エアサスに戻った状態ってこと?
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そういうことです。
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なんか意図が分かってきた。
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もしも電磁弁が故障して修理が必要になっても、電磁弁を外した状態で、機械式エアサスとして車に乗り続けることができる。そういう組み方です。
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考えましたね〜。
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もしも電磁弁だけを単独で組んでいると、電磁弁が故障したときには、車ごと預けないといけなくなります。
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上の組み方なら、電磁弁だけ外して修理に出せるんだ。
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ですね。だからACCで電磁弁エアサスを組むときは、基本的にこういう組み方を推奨しています。
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これって……ある意味で、ACCは電磁弁ユニットを完全には信頼していない、ということですよね?
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ですね。故障はいろいろです。掃除で直る場合もあれば、部品交換が必要なケースもある。いずれにしても、「オーバーホールが必要な時は来る」前提に立っています。
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ACCがエアサスメーカーとして歴史があるのも、分かる気がするなぁ〜。
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とはいえ、リモコンが欲しいとか、車高のメモリー機能がほしいという人には、電磁弁は必須。ですから、この組み方をオススメしています。
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機械式エアサスの安心感と、電磁弁エアサスの利便性。両方を取るエアサスの組み方、でした。
これがACCの電磁弁エアサスの組み方です(↓)
このパーツだけ外せる仕組み
✔ この組み方を、ACCでは「アフターレベルシステム」と呼んでいる。ACC電磁弁エアサスでは、これが基本形となる。
DIY Laboアドバイザー:岡本泰三 エアサスメーカー・ACC代表。米国に渡り、ACC USAの立ち上げも実現。本名は泰三(たいぞう)だが、英語圏の人には発音が難しいらしく、US時代に「タイソン」が通称に。そのまま呼び名として定着している。●ACC 住所:兵庫県神崎郡福崎町西田原1512-1 TEL:0790-23-0700 http://www.accincjp.com/
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