社外エアサス導入ガイド(第4回)
エアサスで車高が変わる仕組み。ベローズとスリーブの違い
エアサスの仕組みを、初心者向けに解説。目に見えない空気(エア)で車高を上げ下げする……と言われても、少々イメージしにくいが、目に見えるエアバッグの存在を知ると、グッと理解がしやすい。まずはエアバッグの種類「ベローズ」と「スリーブ」の違いから。
エアサスの主役パーツ「エアバッグ」にも種類がある
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前回は、車高調と比較しながら、エアサスのメリット・デメリットを検証しました。
●アドバイザー:ACC タイソン研究員
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今日はエアサスが気になっている初心者の人向けに、エアサス入門をやります。
●レポーター:イルミちゃん
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まずは、エアサスとは何なのかをカンタンに説明しておきましょう。
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エアサスって、いろいろな部品が出てきて複雑なイメージがありますが……
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そうですね。車高を上げ下げする仕組みが必要ですので、車高調に比べたら部品も多いし。
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そもそも、なぜ空気で車高を上げ下げできるの?
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それは、一番メインのパーツとなるエアバッグのおかげですね。
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このエアバッグが、エア(空気)の出し入れで伸び縮みするので、車の車高を上げたり下げたりできるのです。
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お団子がペチャンコになるときが、限界車高ってことか。
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……なお、エアバッグは「お団子タイプ」だけではありません。
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ム?
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こういう形のもあります。
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ムムム……これは、なんだろう。
……磯辺巻きタイプ? -
いや、べつに無理矢理、食べ物にしなくていいです。
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……ですね。
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最初に出てきたお団子型のほうを、「ベローズタイプ」と言います。
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ほぉ。
そんな名前があったのか。 -
そして磯辺巻き型が「スリーブタイプ」です。
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(……もしかして気に入りました?)
エアサスのベローズとスリーブの違い
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問題は、お団子と磯辺巻き、どっちが美味しいのか?
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う〜ん、そこはね、一長一短ありますよ。
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そりゃそーだ。
どっちも捨てがたい。 -
まず、お団子のベローズタイプのほうが、ペチャンコになったときの厚みが薄い。
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と、言うことは……
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車高をより低くするという意味では、ベローズのほうが有利です。
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なるほど。
それに対して磯辺巻きのメリットは? -
スリーブタイプは、純正エアサスで採用されるタイプと同じですね。
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ほほう。
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スリーブのエアサスのほうが、カンタンに言ってしまえば柔らかめというか……、ゴム自体の固さも違うし、縮んだときのゴムの当たり具合もソフトなんです。
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それで、純正が採用するんですね。
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そうですね。おおまかに言ってしまうと車高重視のベローズ、乗り心地重視のスリーブなのですが……
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……う〜ん、どっちにしようかなぁ。
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そこは悩まなくても大丈夫です。
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え!?
それはなぜ? -
今、言ったようなエアバッグの性質の違いだけではなく、そもそもスペース的にどちらが入るか、という問題もあります。なので車種ごとに最適なタイプを、メーカー側で決めていくものなのです。
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あ〜そういうことか。
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どっちのタイプでも付けられる車種の場合は、どういう味付けにするかで使い分けています。
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そのへんの味付けは、メーカーによって違う?
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そうですね。あとは車種によってはフロントがスリーブ、後ろがベローズという風に組み合わせる場合もあります。
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それって……前後どちらかだけ、車高が落ちきらない心配とかはないの?
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それは大丈夫。ACCエアサスの限界車高の基準を満たせるように、サイズなども含めて選定していきます。ベローズが落ちきらない、ということにはなりません。
ACCエアサスの30アルファード用のフロント例。
30アルファードでは、リアもお団子のベローズを採用している。
空気を溜めるエアタンク、空気を集めるコンプレッサー
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エアバッグへの空気の出し入れで車高調整するためには、車高を上げるときに備えて、空気を溜めておく必要があります。
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そうなりますね。
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そこで必要になってくるのが、エアタンク。
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この中に、空気を溜めておくんですね〜。
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ACCエアサスの標準キットの容量は、全車種で4ガロンとなっています。
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ガロン?
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ガロンはアメリカで使われる体積の単位です。1ガロンは、約3.8リットルですね。
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あー。アメリカのスーパーで売っている牛乳とか、巨大なんですよね。ハーフガロンでも、約2リットル。
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今は「空気の話」ですが。
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そうでした。その4ガロンタンクで、何回車高を上げ下げできるのかが問題ですね。
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それは車種によってエアバッグのサイズも違うので、1回の上げ下げで使う空気の量も違ってくるのですが……目安としては、1往復半ぐらい。
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1往復半、ってことは……、
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マックスまで車高を上げて、ベタベタに下げて、またマックスまで車高を上げる……ぐらいまで車高を動かしたら、タンクのエアがなくなってきて、コンプレッサーが回り出す、という感じです。
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コンプレッサー?
エアタンクの容量が大きければ、連続的な車高の上げ下げができる
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コンプレッサーが自動的に空気を集めてくれるなら、タンクが空っぽになっても問題はない。空気はタダだし。
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そうなんですが、コンプレッサーが回り出すと、空気を集めるのを待たないといけません。
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フム。
「待ち」が発生するんですね。 -
だから、タンクの容量が大きいほど、連続的に車高の上げ下げできるのです。
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そういうことか〜。
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ACCエアサスは、昔は3ガロンでした。でもそれでは容量不足な車種も出てくるので、4ガロンに統一しました。
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それで、1往復半が目安なんですね。
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さらに普通の使い方だと、マックスまで車高を上げるなんてことはあまりなくて、下げた状態から乗る高さまでしか上げないでしょう?
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それはそうだ。
走行車高まで上げれば十分。 -
つまり半分くらいのストロークしかさせないので、その分、実質的に動かせる回数はもっと増えますね。
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そっか。
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もっと容量が欲しい、という場合には、オプションで2つ3つとタンクを追加することもできますが。
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アメリカンですね〜♪
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いっぽうで、タンクを小さく加工したい、というリクエストもよくある。
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え!? ……な、なんで?
容量が減ってしまうのに。 -
エアサスを組む車の、スペアタイヤのスペースに収めるためには、あと5センチ短いタンクがほしいんです〜などの状況もあるわけで。
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なるほどォ。
そういうことか〜。 -
エアサスのインストールにこだわるのも、楽しいですよ。そのあたりはACCとしても、きめ細かく対応できるようにしています。
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4ガロンタンク1個というのは、あくまでも標準キットの話なんですね〜。
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ハイ。エアサスは、標準キット以外にも細かくいろいろとオプションパーツが用意されている足回りなんですよ。
コンプレッサーは空気を集める部品ですね
1回のストロークはエアバッグ容量の半分程度
エアバッグに空気を送り込むのがスイッチの役割
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ところで、エアタンクに溜まった空気は、どのようにエアバッグに送り込んでいるんでしょうか?
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それがスイッチの役割ですね。
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このスイッチの裏にもホースをつなげますが、空気の「入り口」と「出口」があって……
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普段は内部のバルブ(弁)が閉じた状態になっています。
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手で操作すると、バルブが開く。
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そうです。それでエアタンクから空気を送り込んで車高をあげたり、空気を抜いて車高を下げたりしているのです。
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エアサスの仕組みが分かった気がします♪ 意外とカンタンだった。
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……というのが、機械式のシンプルなエアサスの構造ですね。
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なぬ? キカイ式?
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エアサスのバルブ(弁)には、機械式と電磁弁があるんですよ。
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デ……デンジベン???
なんなの、その敷居の高そうなネーミングは…… -
しかし、エアサス選びの前に、この違いを知っておくことは重要ですよ。
DIY Laboアドバイザー:岡本泰三 エアサスメーカー・ACC代表。米国に渡り、ACC USAの立ち上げも実現。本名は泰三(たいぞう)だが、英語圏の人には発音が難しいらしく、US時代に「タイソン」が通称に。そのまま呼び名として定着している。●ACC 住所:兵庫県神崎郡福崎町西田原1512-1 TEL:0790-23-0700 http://www.accincjp.com/
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