社外エアサス導入ガイド(第4回)
エアサスの仕組み。電磁弁と機械式の違いとは?
エアサスを買う時の重要な選択肢、電磁弁or機械式。ここでは初心者が「電磁弁にするか、機械式でいくか」を選ぶことを想定して、わかりやすく解説。それぞれのメリット・デメリットを知っておこう。
エアサスの「電磁弁」と「ソレノイドバルブ」は同じもの
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「エアサスで車高が変わる仕組み。ベローズとスリーブの違い」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
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今日は、エアサスの電磁弁と機械式の違いについて、分かりやすく解説しておきます。
●アドバイザー:ACC タイソン研究員
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デンジベン対キカイシキ。……どういう戦いなのか、想像がつきませんが。なんとなくデンジベンのほうが、新型っぽい。
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ちなみに「ソレノイドバルブ」という言葉もありますが……
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……ソレ……なに?
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ソレノイドバルブとは、電磁弁の英語版ですね。
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はあ……。
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ダンプバルブと言ったりもしますが、ぜんぶ同じ「電磁弁」を指しています。
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なお、ACCのタイソン研究員は帰国子女だから、英語も堪能ですが、この先は日本語の「電磁弁」で統一しての解説です。
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電磁弁そのものは、エアサスだけではなくて、油圧式サスペンションや工業用など、いろいろなところで使われている部品なんですよ。
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へー!
汎用的な部品なんですね。 -
そうなんです。で、ACCエアサスのオプションとして用意している電磁弁はコレです(↓)
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これがデンジベンかぁー。
(……ところで、なにコレ?)
全部同じアイテムのこと
電磁弁 | ソレノイドバルブ | ダンプバルブ |
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エアサスの電磁弁(ソレノイドバルブ)とは?
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では、改めて質問しますが、電磁弁とは?
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電気式のバルブ……ですね。
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バルブって?
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バルブというのは「開け閉めするフタ」のことです。
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ガスの元栓みたいな?
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ですね。エアサスの足回りに空気を出し入れ(車高調整)するのも、同じようにバルブを使っています。
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バルブで、空気を入れたり出したりしている。
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そして電磁弁ではない普通の機械式エアサスは、パドルスイッチ自体がバルブでもあるんです。
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このスイッチの裏に直接、エアーのホースがつながっています。
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裏から見ると、IN(入り口)とOUT(出口)がありますね。
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スイッチの裏に、実際に空気が通っていたんですね〜。
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機械式エアサスの場合はそうですね。つまり手動でバルブを開け閉めしているのが機械式。
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人力だったとは。
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対して電磁弁は、ボタン操作やスイッチ操作で電気信号を送って、実際に開け閉めしているのは電磁弁なんですね。
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電気を流すと、コイルが磁力を帯びる(電磁石)。その磁力でバルブ(フタ)を開け閉めする仕組みです。
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ようするに、機械式は「手動」で、電磁弁は「電気制御」なんですね。
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そうですね。それによるメリットもあれば、デメリットもありますが。
離れた場所にバルブがある
電磁弁エアサスにするメリット
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これは、空気の流量を多くできるからです。
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機械式だとできないんですか?
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機械式は、人間の力で直接バルブを開けるわけですから、ヘタに空気を増やして極端に高いエア圧がかかっていると、スイッチが重くなったりして使い勝手が悪い。
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あー。人力のデメリットか。
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そうなんです。電磁弁の場合は、電磁石の力でバルブを開け閉めするので、大きなエア圧をかけられる。それで空気の流量を増やせるのです。
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なるほどね。
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それと、いろいろなオプションパーツを付けられるようになる拡張性があります。
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例えば?
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スイッチではなく、リモコンで操作したりとか……
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電磁弁は、電気信号で操作するものだから、リモコン制御もできます。
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なるほど。
このメリットは大きい。 -
それから車高をメモリー(記憶)しておくコントローラーなども、使えるようになります。
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こういうアイテムは、機械式だと使えないんだ。
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そうなります。機械式の場合は、電気信号で動いているわけではないので。
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そっか〜。こういうオプションは、電子制御ならでは……なんですね。
電磁弁エアサスのメリットは、まず車高を上げ下げするスピードを速くできること
ストロークは同じだがスピードが速くなる
電磁弁のデメリットはトラブル・故障の心配
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電磁弁にはいろいろメリットがありますが、いっぽうで電磁弁特有のデメリットもあります。
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そこが気になるところですね。
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まず電磁弁ユニットは掃除したり、オーバーホールしたり、といったメンテナンスが必要です。
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……フム。
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磁石の力でフタを開け閉めさせて、圧力の高いエアーを流すので、Oリングなどのシール部品は消耗品になってくるし……
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負荷がかかりそうですもんね。
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そうなんです。エアの流量が増えて高速に上げ下げできる反面、負荷が大きい。定期的にメンテナンスしていかないと、壊れてしまいます。
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もともとエアサスといえば、不安になるのは故障の問題ですが……
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電磁弁については、故障しやすい部品であることがデメリットです。ポートを塞ぐときにゴミが噛んでしまい、そこからエア漏れを起こすというトラブルもあるし。
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……メリットとデメリットが、ハッキリとある部品なんですねー。
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ハイ。そういうわけでACCエアサスにおいては、電磁弁はオプションで、標準キットはすべて機械式です
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ACCエアサスの信頼性の高さは、そういう理由もありそうです。
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あとは、機械式のほうが車高の微調整はやりやすいというメリットもありますので。
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対して、空気の流量が多い電磁弁は、どうしても微調整が難しいのです。
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そういうことか。
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それと高速な上げ下げをしない分、機械式のほうが全体的に部品の寿命は延びます。
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負荷が少ないのはイイコトだ。
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機械式が、故障しないわけではありません。でも仕組みがシンプルなだけに、トラブルや故障が少ない。それが機械式の最大のメリットです。
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……ただ、電磁弁エアサスのリモコンやメモリー機能は、やっぱり魅力だなぁ。
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ですよね。ウチでは8割方のユーザーが機械式を選びますが、残り2割の電磁弁を付ける人は、そういう理由の人が多いですね。
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……でも故障は恐い。
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そこで、機械式と電磁弁を併用するシステムもあるんですよ。電磁弁を選択するなら、オススメの組み方です。
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両方使うって……。
そんなのアリ?
つまり定期的にコレを外す必要も生じる
走行車高などを細かく調整しやすい
DIY Laboアドバイザー:岡本泰三 エアサスメーカー・ACC代表。米国に渡り、ACC USAの立ち上げも実現。本名は泰三(たいぞう)だが、英語圏の人には発音が難しいらしく、US時代に「タイソン」が通称に。そのまま呼び名として定着している。●ACC 住所:兵庫県神崎郡福崎町西田原1512-1 TEL:0790-23-0700 http://www.accincjp.com/
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