キャンバーボルトを取り付ける前に知っておくべきこと
キャンバーボルトとは、ショックとナックルアームを固定しているボルト2本のうち、1本を細いボルトに交換することで意図的にガタを作り、ナックルアームを寝かせてキャンバー角を付けるアイテム。「上下どちらのボルトを交換すべきか?」「2本ともキャンバーボルトに交換してはいけないのはナゼか?」など、取り付けに関しての重要なポイントをJ-LINEに教わった。
キャンバーボルトは上下どちらのボルトと交換すべきか?
-
今日はキャンバーボルトの取り付け方について、J-LINEに教わります。
●レポーター:イルミちゃん
-
キャンバーボルトの取り付けに関しては、決まってよく質問されるポイントが2つあります。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
-
ほほう。
それってなんですか? -
多いのが、上下どちらのボルトと交換するんですか? という質問。
-
う〜ん。
私にはなんのコトだかさっぱり分かりませんが。上下ってなんの話? -
まずはおさらいから、いきましょう。キャンバーボルトとは、ショックとナックルアームを固定している2本のボルトのうちの1本を、純正より細いボルトに交換するという発想のものです。
-
ボルトを交換するだけ?
-
そうです。このボルトが純正より細くなることで、遊びというか、ガタができます。
-
確かにボルトが細くなったらガタが出ますね。……大丈夫かしら。
-
そのガタを利用して、ナックルアームの角度を寝かせ、その状態でボルトを締め込んで固定するんです。
-
ナックルアームの角度が寝るということは……え〜っと、
-
ナックルアームは前輪の支柱になっているアーム。なのでナックルを寝かせればハブも倒れて、キャンバー角が付きます。
-
へぇ〜。
そういう仕組みなんですね。 -
そうなんです。で、前置きが長くなりましたが、このショックとナックルアームを固定しているボルトは2本あるのです。
-
あ、そういえばショック下部のブラケットには2つ穴があります。
-
そこで皆さん、どっちのボルトを交換するべきか、と悩むわけですね。
-
どっちを交換すればいいんですか?
-
J-LINEのキャンバーボルトは、下側のボルトを交換してください、と説明書にも書いています。
-
ん? なんで下側なんですか?
-
上側のボルトを交換するということは、ナックルアーム上側を内側に入れる、という動きになります。
-
上側が内側に入れば、キャンバー角が付きそうな気がしますけど?
-
そう。それでもキャンバー角は付きますよ。ただ車高調によってはナックルアームが内側に入ると、ショックとぶつかることがあるんですよ。
-
ああっ、ホントだ! ナックルとショックって、隙間があまりないんですね〜。
-
そうなんですよ。上の写真ぐらいの隙間だと、倒したらぶつかるパターン。
-
ぶつかったらどうなるんでしょう?
-
そこで止まってしまいます。「もっとキャンバー角が付けられたのに、その手前で止まる」ということです。
-
それは……もったいない!
-
だから、下側のボルトを交換してください、と言っているわけなのです。
-
下側でもナックルアームが寝れば、ぶつかるのは同じでは?
-
いや、下側のボルトを交換する場合は、ナックルアーム下側を外側に出す、という動きになります。外方向に出るぶんには障害物がありません。
-
そういうことかー! これって、上に付けても下に付けても、キャンバーの角度が変わったりはしないんですね?
-
そうですね。上側に付けてもぶつからないのであれば、どっちに付けても同じです。
-
なるほど〜。
-
だからぶつからないと分かっている車高調なら、上側でもいいですよ。その場合はどっちでもいいんです。
-
上に付けても下に付けてもキャンバー角が付く……ムムム、待てよ?
-
なにか???
-
氏家研究員、もしも上下2本ともキャンバーボルトに交換したら、もっとキャンバー角が付くんじゃないですかコレ?
-
はい。それが、よく質問されるポイントその2です。次はその話をしましょう。
ショックとナックルアームの固定ボルトを交換
ショック下部はボルト2本で固定されている
ナックルが内側に倒れてショックとぶつかる可能性がある
下側のボルトを交換した例
キャンバーボルトを1本のみにしておくべき理由
-
2本つければ、さらにキャンバー角が付くのは確か。けれどもキャンバーボルトは、基本的には1本だけにしておくべきです。
-
それは、なぜですか?
-
片方のボルトが純正のままであれば、上下方向に動いてしまう心配はないからです。
-
……ムムム。
というと? -
最初に言った通り、キャンバーボルトはガタを利用しています。でも2本のうち1本が純正ボルトのままであれば、あくまでもその純正ボルトを軸にした動きしかしない。
-
つまり、キャンバー角を付けるための左右方向の動きに限定されるわけか。
-
ところが2本とも換えてしまうと、上下にも動く余地が出来てしまう。
-
なるほど。
-
もちろんボルトはしっかり締めるから、基本的には動かない。でも、ドーン!! っと突き上げる衝撃を受けたとき、ボルト位置が上下にズレる恐れはあるわけです。
-
そっか。走行中は上下方向のほうが、大きな力が伝わりそうだしなぁ。
-
1本が純正でバチっと固定されていれば、その心配はない。これがキャンバーボルトは2本のうち1本にしておくべき、という理由です。
純正ボルトがある限り、上下にズレる心配がない
関連記事
- キャンバーボルトのリスクを正しく理解する
- キャンバーボルトの取り付け方法
- 鬼キャンタイプのキャンバーバーボルトとは?
- キャンバーボルトの上下交換はなぜやらないほうがいいのか?
- キャンバーボルトの「調整式」「固定式」の違いと、よくある誤解
- リア用のキャンバーボルトはなぜないの?
- 適切なキャンバーボルト「サイズ」の選び方
- キャンバーボルトとピロアッパーマウント調整、どっちがいいの?
- 車高調のアッパーマウントでキャンバー調整する方法
- キャンバー角を付けても車検には通る?
- キャンバーボルトでの調整には独自の注意点がある
- J-LINEがキャンバーボルトに力を入れる理由
- ロアアーム交換でキャンバー角が付く、という誤解
- キャンバー角はこう決める! 重要なのは前後バランス
- 車高が低い車の「ドライブシャフトブーツの寿命」を延ばす方法
- 初心者のためのホイールアライメント講習スタート
- トー角の調整(サイドスリップ調整)はDIYでできるのか?