ドレスアップの気になる話題
LEDヘッドライトの寿命を気にするなら、明るさだけでは選べない
LEDヘッドライトバルブ選びの失敗例。明るさだけを重視して、早々に切れてしまうことがある。なぜなら明るさに比例して熱が増え、熱はバルブの寿命を縮めるから。選ぶ際には、放熱設計についてもチェックしよう。
5000ルーメンクラスのLEDヘッドライトは、熱で寿命が縮まらないの?
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最新型のLEDヘッドライトの明るさは、HIDバルブに迫るルーメン値を持っているということをレポートしましたが……
●レポーター:イルミちゃん
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ハイ。IPFの最新型のLEDヘッドライトは5000ルーメン(左右分)ありますから。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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……今日は、そんな明るさ自慢の「闇」に迫ります。ダマされないぞー。
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と言いますと?
闇ってなに? -
従来よりも明るいということは、普通に考えたら、「熱」大丈夫ですか? という話になる。
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ああ、そういうことですね。
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3600ルーメンが5000ルーメンになったら、消費電力だって上がっているはず!?
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確かに上がってます。前モデルは20Wで、新型は28Wまで上がっています。
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発光効率の高いLEDで28Wって、相当な話ですね。通りで明るいはずだ。
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なので当然「発熱」も増えています。
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ホラね!
ということは、やっぱり……。 -
やっぱりって?
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新型は明るいけど寿命は短くなった! そうでしょう!!
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そんな製品作りは、IPFではしません。
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でも前モデルだって、放熱性能ギリギリまで明るくしていたはず! そこからさらに5000ルーメンになったんだから、明らかにムジュンしているぞ!
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放熱性能が前モデルと同じだったらそういうことになりますが、放熱性能も大幅に上がっているのです。
IPFのLEDヘッドライトX2シリーズ
LEDヘッドライトの進化は「熱」との戦い
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実際のところ、LEDヘッドライトの開発は、熱との戦いになってきています。
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30Wに迫る消費電力ですもんね〜。もはやHID並。
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「光」に変換されなかった分は「熱」になるので、まずは、できるだけ「光」になる分が増えるように、発光効率を高めていくことが大切です。
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フムフム。
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で、残った熱は、「放熱」で処理しないといけません。
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でもヒートシンク(放熱器)を大きくしたら、対応車種が限られてしまうんですよね〜。前モデルでもお尻の大きさは、有名でした。
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確かに、ヒートシンクを無制限に大きくすることはできません。で、まずは熱源であるLEDチップに近い場所から、放熱を見直しています。
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LEDに近い場所とは?
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基板です。実は、新型LEDヘッドライトバルブでは、こんなに大きい銅基板を採用しています。
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普段は隠れていて見えませんでしたが、こんなに長かったのか! 銅の剣みたい。
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前モデルはアルミ合金ボディに銅基板を貼り付けたような構造でしたが、今回は銅基板がそのままヒートシンクに達する長さを持っています。
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それならLEDから奪った熱を、直接ヒートシンクに運べますね〜。
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それとヒートシンクも、前モデルは「ダイキャスト」のアルミでしたが、今回のは「押し出し成形」のアルミです。
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と、言われても分からない人が多いと思いますが……
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押し出し成形のアルミ材のほうが、熱伝導率が高いです。その代わり、細かな加工はしにくいので、凝ったデザインは作りにくい。
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つまり、見た目より性能を取った?
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カンタンに言うとそうですね。
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5000ルーメンともなると、カッコつけてる場合じゃないぞ、ということか。
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そう言えば、ヒートシンクのサイズも少し大きくしたんですよ。
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ああッ! 一段とお尻が大きくなった! 以前はボリューミィなお尻を気にしている風でしたが、とうとう開き直ったようです。
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……。
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しかし、そうなると車体に当たって、付かない車種が増えるのでは?
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そうならないように大きくしました。
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どういうこと?
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前モデルのLEDヘッドライトで、いろいろな車種の取り付けデータを集めたので、それを生かして、「適合車種には影響が出ないようにヒートシンクを大きく」しました。
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なるほどね〜。
地味な工夫を重ねているなァ。 -
細かい話をすれば、ファンの形状も換えました。四角形から円形に。
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円形の方が、いいことがあるの?
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ヒートシンクが円形なので、ファンも円形のほうがプロペラを大きくして風量が稼げます。
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風量は46%もアップしているんですよ。
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挙げ足を取るようですが……、それって「うるさくなった」ってコトでは?
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いやいや。逆に、従来モデルより静かになっています。大きいファンなら回転数を抑えながら風量を上げられる、ということなんです。
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なるほどね〜。
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このように冷却を工夫した結果、ルーメン値は5000ルーメンに上がりましたが、温度は前モデル(3600ルーメン)より下がったんです。
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それなら、寿命が縮まる心配はないんだ。
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ただ、このクラスになるとさすがにファンレスでの設計は無理なので、ファンレスモデルの開発予定はありません。
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そういえばファン付きVSファンレス論争もありましたが……
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最近は、自動車メーカー純正のLEDヘッドライトもファン付きになっています。「明るさ」と「長寿命」を両立するためにはファンは必要、というのは明らかです。
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熱と戦う、LEDヘッドライトバルブ開発の最前線からレポートをお伝えしました。
性能を重視するIPFのLEDヘッドライトは、前モデルからお尻がデカイ。
銅は高価だが、熱伝導率が高く、放熱に有利
外側のボディも、熱伝導率がいいアルミ合金に変更。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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