ドレスアップの気になる話題
配光の出ていないLEDやHIDを光軸調整で直すことはできる?
配光性能が低くカットラインも出ていない。そんなLEDヘッドライトバルブ(またはHID)を買ってしまった場合、「光軸調整でなんとかゴマかす」ことはできるのか?
カットラインが出ていないバルブを光軸調整で何とかするには?
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あのぉ〜市川研究員、
今日は私の悩み相談なのですが…●レポーター:イルミちゃん
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どうかしましたか?
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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通販でLEDヘッドライトバルブを買ったら、カットラインが全然出ていなくて、グレア光もひどくて…
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……なるほど。
IPFのを買ってくれなかったのですね。 -
だって!
安かったので!!! -
わかりました。で、悩み相談というのは?
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先日、市川研究員に「光軸調整の正しいやり方」を教わったじゃないですか。
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はい。やりましたね。
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こんなやり方があるんだったら、べつに配光が出ていない安物バルブでも光軸調整すればなんとかなるのでは? と思ったのです。
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いや〜、それは難しい話ですねぇ。
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なぜですか? 光軸調整して光を下げれば、上方散乱光もなくせますよね?
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やってみるとよく分かりますよ。
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というわけでカットラインも出てない左のバルブなんですが…
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純正のカットラインをマーキングした位置(黄色テープ)より上に光が飛んでいるので、対向車に眩しい光になっていますね〜。
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そうなんです。でも光軸調整で下げればいいかなって。
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この状態だと光の頂上の部分を、純正のカットライン位置まで下げざるを得ませんね。そうするとどうなるか、やってみましょう。
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ホラ! なかなかイイ感じになったじゃないですか! 上方散乱光も押さえられましたよ〜。
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……。
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てゆーか、IPFのLEDヘッドライトより「広い範囲」を照らしてて明るくないですかコレ! もしかしてこの結果、ヤバくない?
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……よくあるんですよね、その勘違い。
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勘違い?
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確かに光軸調整でカットラインを下げ気味にすることはできますが、そもそも配光の出ていないバルブの場合、一番明るいところが、かなり下にいってしまいます。
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でもこのほうが、広い範囲が明るくなっていいのでは?
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それは違います。カットラインよりず〜っと下のほうが明るくても、クルマのすぐ手前が明るくなるだけ。走行中のドライバーを助ける光にはなりません。
光軸調整前はこんな状態
あらかじめ純正カットラインの高さを、黄色のテープでマーキングしてある。
光軸調整で、左の光軸を下げた
やり方については「光軸調整の正しいやり方」参照。
カットライン直下が明るいライト=走りやすいライト
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ムムム……IPFのLEDヘッドライトバルブの配光を改めてチェックしてみよう。
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「左上がりのカットラインが立ち上がる『エルボー点』直下のあたり」が最も明るくなるように作っています。理由は、そこが「一番遠くを照らす光」だからですよ。
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そっか! 壁ドン(※)で見ると壁だから分かりにくいけど、カットライン直下は一番遠くを照らす光ですね。
(※)壁にヘッドライトの光をあてて配光を見ることを指すらしい
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まさしくココに、明るさのピークがくるように作り込むのです。すると遠いところから近い場所まで、均一に明るく見えるバルブになります。
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ほほぉ。では左側のバルブのように、明るさのピークの位置がかなり下のほうだと…
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クルマのすぐ手前ばかりが明るくて、遠くに光がぜんぜん飛んでいない。これは実際に走行すると、とても暗く感じるのです。
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そもそも上の写真のようなアングルで、「バルブの明るさ比較」をすること自体、間違いというか。
よく見かける気がするけど。 -
一見すると照射範囲が広いほうが明るい、と誤解してしまう人は多いかもしれませんね。
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改めて、配光って深いなぁ。
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配光は本当に深いですよ〜。
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カットラインが出ている=配光OK、という単純な話でもなさそうですね。
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そうですね。実際のところは「必要なところに必要な光を配るのが配光」です。
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ナルホドねぇ。なんだか知識が深まったぞ〜♪
クルマのすぐ前が明るくても、意味がない
LEDに限らずHIDやハロゲンだって同じこと!
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今回の話は、LEDに限ったコトですか?
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HIDでも同じことです。エルボー点付近に強い光が集まるように作ってますよ。
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ほんとだ、カットライン直下が強烈に明るい!
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カットライン上に上方散乱光を出してはいけない。しかしカットライン直下(エルボー点付近)が一番明るくなるようにしたい、というのが技術者たちの狙いどころです。
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そんなコダワリがあったとは。
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そもそもは純正だってそういう作りなんですよ。
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本当だ。色味はともかく、純正はさすがだなぁ〜。
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そうなんですよね。
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結論としては、ようするに「配光性能の低いバルブを、光軸調整でなんとかするのは難しい」というコトですかね。
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分かってもらえたみたいで。
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仕方ない、光軸を上げるか。
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え、今日の話聞いてました?
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IPFのと同じ高さまで、明るさのピーク位置を上げよう!
この場合はそれしかないよね。 -
それは対向車にとても迷惑なのでやめて。そもそもカットラインが出ていないというのは、そういうことです。
やっぱり分かってない?
IPFのHIDの照射
純正もそうなっていた
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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