車検に関する話題
HIDヘッドライトが
ロービーム車検で落ちる理由
9月1日から車検がロービーム検査に切り替わったことで、現場ではテスター測定できないケースが続出。車検場が大混雑しているという話が漏れ伝わってきている。
ようはそれだけ、「カットライン(配光)が出ていない車が世の中に多かった」ということだ。
DIYラボでは「LEDヘッドライト化するときは、バルブの配光性能がシビアに問われる」注意喚起を行ってきたが、後付けLEDヘッドライトはまだまだ新しい存在であり、「車検場を混雑させるほど装着車が多い」とは思えない。
つまり今回のロービーム車検の問題は、既存のHID車にも大きな影響を与えている。それも、思ったよりも深刻に。
そこで「HID装着車」に特化したロービーム車検の問題点を、IPFの市川研究員に緊急インタビューした。
HID化の光量アップがカットライン崩れの要因にも
HID(右)は、ハロゲン(左)の約3倍も光量が出ている。
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今回のテーマは「HID装着車」にしぼっていきます。
●レポーター:イルミちゃん
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実際のところ、HID車もかなりテスター測定ではねられているようです。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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「LEDバルブの場合は配光がシビア」とは教わりましたが……HIDバルブは、もともとハロゲンバルブの光源位置に近いはずでは?
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きちんと作られた製品なら、純正の光源位置に揃えてあります。
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とはいえ、世の中には光源位置がズレているHIDもたくさんありそうですね。
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その場合はもちろん配光が狂っていて、ロービーム車検ではじかれるでしょうが、今回の問題はそれだけではないのです……。
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というと?
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「もともと純正がハロゲン」の車の場合は、HID化すると光量が約3倍にもなるんですね。
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3倍ってスゴイですね。
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その光量によって、純正ハロゲンバルブの時は「リフレクターにいちおう反射していたけれど、路面に届くほどではなかった弱い反射光」まで路面に届くことはあり得ます。
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フムフム。
明るくなるんだから、いい話でしょ? -
本来光をあてたくないところまで光が飛ぶということは、カットライン(配光)が崩れるということです。
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うぐっ。それ、例のヘッドライトテスターがエルボー点を見つけられず測定不可になる(※)パターンに……?
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そういうケースが続出しているようですね。
問題なのはマルチリフレクター車
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もともと純正のリフレクターは、純正ハロゲンの光源位置や光量に合わせて設計されています。当然ですが。
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それは、そうでしょうね。
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そこに極端に明るいHIDバルブを持ってくれば、いくら光源位置などが合わせてあっても、絶対的な光量の強さで配光にも影響が出てしまう。
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それって、「きちんとしたメーカー製HIDでも、車検対応とも言い切れなくなる」のが恐いですよね?
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もともとマルチリフレクターヘッドライトの車を、コンバージョンキットでHID化する場合は、「組み合わせによって車検NG」となるケースはあり得ますね。
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その言い方だと、プロジェクターヘッドライトの場合は大丈夫だと?
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ですね。プロジェクターヘッドライトは構造的にカットラインが出ますので、テスターの作動にあまり心配はないと思います。
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マルチリフレクターヘッドライトだけは、要注意ってことか〜。
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ただマルチリフレクターでも「もともと純正でHIDが付いている車両」の場合は、ほぼ心配ないと思います。
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純正HID車両だって、社外HIDバルブに交換したら同じことでは?
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HIDからHIDへの交換なので、せいぜい光量は20〜30パーセントアップ程度でしょう。主な目的は「色」なので、配光への影響は少ないかと。
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なるほどォ。
よく分かりました。
プロジェクターは基本的にビシっとカットラインが出る
D2系・D4系などの純正HID交換タイプなら配光への影響は少ない
ま
と
め
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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