ショックの底付きと勘違いするのは早い、走行中のゴンゴン異音

走行中に段差を越えたら、ゴンゴン(ガンガン)音がして、突き上げ感もある。「ショックが底付きしている」っぽい感じだが、そうとは限らない。というより、むしろ勘違いであるケースも多い。では、何が起こっているのか。
ショックの底付きで走行中にガンガン音がする……それ、本当に底付き?
-
ショックの底付き講習、後編です。
※前編は「ショックの底付きとは? 車高調でも起こる原因と対策」参照。
●レポーター:イルミちゃん
-
「ショックが底付きしているみたいなんです…」っていう悩み相談が、J-LINEにもよく寄せられるんですけどね。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
-
フムフム。
-
よくよく内容を聞くと、「それは底付きではナイ!」というケースも多いんですよ。
-
どういうことなんでしょうか?
-
よくあるのが、車高の低い車で「走行中に段差を通過して沈み込むと、ガンガン・ゴンゴン音がして、突き上げ感もひどいんです」みたいな悩み。
-
……ウンウン。
まさに底付きっぽいですね。 -
いやいや、ゴンゴンとかガンガンと音がする時点で、底付きかどうか怪しいものです。
-
それはなぜ?
-
前回解説した通り、基本的には、ショックが底付きする前にバンプタッチするはずなんですよ。
-
バンプラバーは、ゴムやウレタンなどのクッションです。だから鉄と当たっても、ゴンゴンとかガンガンという音は出ません。
-
そういえばそうか。
-
もちろん、バンプタッチにもドンドンという突き上げ感はありますから、乗り心地が悪いのは同じですが、それにしてもガンガンはおかしい。
-
なるほどね。
-
もちろん、車高を落とすためにバンプラバーを切ったり取ったりしているような車は別ですよ。
-
バンプラバーを取ってしまったら、鉄×鉄の接触も起こりうる。
-
その手の加工はしていない前提だとすると……
-
疑わしいのは、ショックの底付きではなく、伸びきりのほうなんです。
-
何ですかそれ?
-
ショックのストローク量には限界がある、というのはイメージできると思うんですけど……
-
限界があるのは、縮む方向だけではない。当然、伸びるほうにも限界があります。
-
伸びきったらどうなるの?
-
それは鉄×鉄の接触なので、ゴンゴン異音がするし、乗り心地も悪いですよ。
-
お尻が痛くなりそう。
-
底付きの場合は、底付きを防ぐためのバンプラバーがあるけど、伸びきる方向にはクッションはありません。
-
ますますヒドイ。
-
だからスゴイ異音がするんですよ。
-
それで走行中に、ゴンゴンとかガンガンって異音がするのか〜。
-
ショックも壊れてしまいますから、その状態を放置するのも良くありません。
-
……ところで、なぜショックが伸びきるの? 車高を落とす車なら、底付き方向なのでは???



全長調整式を無駄に縮め過ぎると、ショックが伸びきる
-
ショックの底付きならぬ伸びきりの原因は、ショックの縮め過ぎです。
-
車高調の調整の仕方が原因?
-
そういうことですね。リアのトーションビーム式で、やりがちな失敗です。
-
トーションビーム式(あるいはリンク式)は、リアショックとバネが別体になっています。
-
今どきの全長調整式車高調は、リアショックの全長調整もできます。
-
バネ側にもショック側にも、調整機構がありますね。
-
ストラット式のフロントは、ショックの全長調整で車高が変えられますが、トーションビーム式のリアにおいては、車高を決めているのはバネのほうです。
-
フムフム。
-
しかし「ショックを縮めたほうが、車高が落ちる」と勘違いして、短くする人が多い。
-
とりあえず短くしておこう、みたいなノリですね。
-
しかし、それほど車高を落としていないにもかかわらず、ショックの全長が短くなるとどうなるか。
-
え〜っと……。
-
ショックが伸ばされるわけですよ。
-
あー。
引っ張られるみたいなイメージですね。 -
その状態で走行して段差をまたぐと、まず縮んで……伸びるタイミングで、伸びきってしまいます。
-
それでゴンゴン異音がするのかー。
-
そうなったらもう、ショックは棒と同じです。当然乗り心地も悪い。
-
ショック、壊れませんかね?
-
その状態を続けたら、壊れるでしょうね。
-
バンプラバーという名の防波堤がない分、底付きより深刻と言えそうです。

セッティングが怪しい車はジャッキアップしてみる手も
-
ホホウ。
-
通常は、車をジャッキアップすると、まずショックが伸びていきますよね。そしてショックが伸びきった状態になって、タイヤが浮き始めます。
-
伸びる方向にストロークがあるから、こういう挙動になるのです。
-
なるほど。
そんなことで判別できるのか。 -
ところが、走行中にショックが伸びきるようなセッティングになっている車は、ジャッキアップした瞬間に、タイヤが浮き始めるんです。
-
いくらも伸びる余地がないから……。
-
そうなんです。そういう状態だと、走行中に段差をまたいだタイミングなどで、伸びきってゴンゴン異音が出たりします。
-
その場合はつまり、ショックの全長調整を伸ばすのが正解ってことですね。
-
しかしショックを長くし過ぎると、今度は底付きしやすくなるので、伸ばせばいいというものではないです。
-
調整機構が付いているのはいいけれど、けっきょく調整が難しいですなぁ。
-
ショックのストロークの理想をいえば……伸びる方向に3・縮む方向に7ぐらいの割合で、ストロークできる状態にしたいですね。
-
J-LINE流のリアショック調整方法は、「ショックアブソーバー調整方法、リアは手強い」が参考になります。ちょっと難しいですけれど。
そういう、伸びきるセッティングになっている車は、ジャッキアップしてみればすぐ分かります

ジャッキアップすると……

車体は浮くけどタイヤはすぐ浮かない


DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
関連記事
- ショックの底付きとは? 車高調でも起こる原因と対策
- 車高調の異音「コトコト音」の原因と対策
- ショック抜けの異音や症状は、ショップでも判断できないことが多い!?
- ショックアブソーバー調整方法、リアは手強い
- リアショックの全長調整でやりがちな失敗
- バンプラバーをカットする(切る)前に知っておくべきこと
- わざとバンプタッチ(フルバンプ)させれば限界車高が分かる
- バンプラバーの正しい切り方(カットする長さ)とは?
- 車高調の乗り心地が悪いときの改善策は?
- 30アルファードの車高を落としきるJ-LINEアーム
- 30アルファードのエアサス下げ止まり対策にもなるJ-LINEアームとは?
- 30アルファード/ヴェルファイアのローダウン車は干渉に注意!!