ヒューズ電源のQ&A
ヒューズ電源の〈向き〉の謎。「電源側から分岐するより、逆のほうがよいのでは?」論
エーモンのヒューズ電源は、電源取り出しアイテムの超定番だが、取り付け時の「向き」が指定されている。しかし、「逆向きのほうが理にかなっているのではないか?」という疑問を持つ人もいる。この点についてエーモンに直撃取材した。
電源側から分岐すると、過電流になるのではないか?
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読者の方から、ヒューズ電源の向きに関して、とても興味深い質問がきました~。
●レポーター:イルミちゃん
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う~ん。これはなかなかに理論的で鋭いツッコミと言えますが、どうなんでしょうか。解説はエーモンの中塚研究員です。
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よろしくお願いします。
●アドバイザー:エーモン 中塚研究員
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まずは、石橋叩さんが言っている要点を、初心者にも分かりやすく説明したいのですが……
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そうですね。まずは、ヒューズ電源の前に、ヒューズの内部構造について説明しておきましょう。
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ヒューズの中身はこうなっています。
(↓) -
この図では、左の端子のほうから電気が流れてきます。
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つまり、左が「電源側」。
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そして、この場合、エーモンのヒューズ電源を付けるときは、「電源側に取り出しコードが来る向き」で取り付けるよう指定しています。
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どちらが電源側なのか、検電テスターで調べたうえで……
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電源側に分岐コードが来る向きで、付けます。
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エーモンは、そもそも、なぜヒューズ電源を付けるときの向きを指定しているのでしょうか?
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正しい向きで取り付けた場合には、ヒューズのエレメントを通過する前に電気をもらうことになります。
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つまり、「ヒューズのエレメントを通過する電流量は、純正状態と変わらない」わけです。
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後付け電装品が使う電気は、ヒューズを通過していないんだ。
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そうです。取り出す電流量は、取り出し線に付いているもうひとつのヒューズで制限しています。
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ヒューズ電源を逆向きに付けた場合は、なにが問題なのでしょうか?
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その場合は、「エレメントを通過する電流量が、純正状態より増える」ことになりますよね。
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例えば、後付け電装品が5アンペア近く使う場合、もともとの純正機器が5アンペア以上使ったら、ヒューズが切れてしまいます。
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……そこ! ここまでのエーモンの見解を聞いて、「そこでヒューズは切れるべきだろ」と思う人は多いはず。この点について、エーモンにツッコミます!
■ 質問
「ヒューズ電源の正しい付け方(取り出し)。向きに注意!!」によると、「電源側から取り出す」とあります。
しかし、それだと、例えば10アンペアのヒューズから取り出す場合、元の純正機器が10アンペア近くまで電気を使い、自分が取り付けた機器が、(取り出し線のヒューズ容量ギリギリの)5アンペアまで使ってしまうと、どのヒューズも切れる事なく、トータル15アンペア近く流れてしまう気がしますが、いかがでしょうか?
この場合、電源の反対側から取れば、元々のヒューズ端子に取り付けたヒューズに全電流が流れることになり、ちゃんと定格以上の電流を検知して切れてくれるように思います。
なぜ「電源側」から取るのか、お教えください。
質問者╱石橋叩 渡(いしばしだたき・わたる)
✔ 10アンペアのヒューズと交換するヒューズ電源を例すると、取り出し容量は5アンペアまで(5アンペアのヒューズが付いている)
10アンペアのヒューズが入っている回路に、10アンペア超の電流が流れるのは過電流では?
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エーモンが「ヒューズ電源の向きを指定している理由」は分かりましたが……
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はい。
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その考え方だと、「もともと10アンペアのヒューズが入っている回路」に、10アンペア超の電流を流すことを許容してしまっていることになりませんか?
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読者の方の質問がまさにそこですね。
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そうです。エーモン指定の向きとは逆に付けておけば、純正+後付け電装品で、合計10アンペアを超えた場合に、ヒューズが切れる。
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エーモンは、この点をよしとしていないようですが、ヒューズの役割としては本来これが正しいように思えます。
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なるほど。しかし、10アンペア超の電流が流れる状況が生まれるのは、ヒューズの手前までだけです。
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……ふむ。
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ヒューズ以降の純正ラインは、もともとの純正機器が使う電流しか流れないし、分岐線には後付け電装品の電流しか流れませんので。
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そりゃそうだけど……回路全体で見た場合、ヒューズの手前までが過電流になるじゃないか! どうなんだね?
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そこは、心配しなくても大丈夫なんですよ。車の構造的に。
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……ほえ?
ヒューズボックスまではそもそも大電流が流れている
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車の電気の流れを、簡略化して示すと、以下のようになっています。(※アンペア数はあくまでも例)
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バッテリーとヒューズボックスの間には、ヒュージブルリンクというのがあります。
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ヒューズの大元締めみたいなカンジですね。
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そうですね。基本的にはヒュージブルリンク内のヒューズは、かなり大きいアンペア数(例:100Aなど)が搭載されています。
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そこから例えば100アンペアのラインがヒューズボックスに流れてくるわけか。
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そうです。大電流ですので、ここにはかなり太い配線が使われています。
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……そういうことか。
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その大電流がヒューズボックスに入ってきて、金属を介して、各ヒューズの端子とつながっています。
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その極太回路から、ヒューズを介して、細線がはじまる……みたいな流れなんだ。
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そうなんです。考え方として、10アンペアのヒューズが入っている回路は、そこから先の配線と電装品の保護のための10アンペア制限なのです。
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ふむ。
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だからヒューズ電源を付けたことによって、確かに理論上は10アンペアヒューズの電源側では10アンペア超の電気が流れることになりますが、問題にはならないのです。
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なるほどね〜。
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逆向きにヒューズ電源を付けても動作はしますが、10アンペアのヒューズ電源で、仮に12アンペアなどの電流が流れた場合、そのたびにヒューズ電源を交換しないといけないことになる。だから、基本は電源側に差し込んでくださいね、とご案内しております。
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いや~、石橋叩 渡さんのおかげで、勉強になりましたよ。
ヒューズから電源を取り出すのは定番ではありますが、定番だからといってデメリットがないわけではありません。はじめてヒューズから電源取り出ししようとしているなら、下の動画(YouTube)の内容もチェックしておくことを強くオススメします(DIYラボ編集部)
DIY Laboアドバイザー:中塚雅彦
カーDIY用品メーカー・エーモン広報担当で、エーモンの顔と言える人物。端子や配線コードの仕様など細かいところまで深い知識を持っているので、DIYラボでは「電装DIYのきほん」に関する記事を担当。中塚ハカセ、とも呼ばれている。
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