電装DIYのQ&A
ヒューズボックスの「空きスロット」から電源取り出しするのはNG
ヒューズからの電源取り出しで、ふと疑問に思う点。ヒューズボックスには、ヒューズが付いていない空きスロット(穴)が存在する。試みに検電テスターで調べると、電気は来ている。ここから電源を取り出してもいいものか。電装のプロに聞いた。
ヒューズの入っていない「空きスロット」に電源が来ているのはなぜか?
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今日はヒューズからの電源取り出しに関しての、注意点をお話しようと思います。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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実は、読者の方からこんな疑問(↓)が寄せられました。
●レポーター:イルミちゃん
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という質問内容なのですが……なんのことでしょうか?
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ヒューズボックスの純正ヒューズが入っていない空きスロット部分(穴だけ)に、ヒューズ電源を差して電源を取ってもいいのか、という話ですね。
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え? もともとヒューズが入っていないところに、電気が来ているんですか!?
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ああ、それ自体はよくある話ですね。電気は来ていたりします。
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へぇ〜。
そうなんだ! -
ヒューズが入っていなくても、電源側の回路はつながっている、という状況なんですよね。
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では、ヒューズ電源を差せば電気は取れる!?
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取れます。しかし、その電源の取り方はやめたほうがいいです。
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なぜですか?
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この回路がなんの回路なのかは、車種ごとの配線図で調べても載っていないんですよ。
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そもそも使っていないわけですしね……。
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例えばの話、「フォグランプが付いている車はヒューズが入っていて、付いていない車は入っていない」程度の装備上の違いの場合は、配線図を調べればそれも含めて分かることなんですね。
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つまり、そういう装備の差でもない。
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そうなんです。ようは、その車では使われない回路。他グレード、あるいは他車種用の回路だということです。
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他車種用ってどういうことですか?
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ヒューズボックス自体、完全に車種専用設計ではなくて、いろいろな車で使い回す汎用部品です。他車種では使う回路用のヒューズスペースは、当然あると思います。
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あ〜、そういうことか。
■ 質問
ヒューズボックスから電源を取り出そうとしていますが、ヒューズが付いていない、空きのところから電源を取り出しても問題ないですか?
検電テスターで調べたら、常時電源・ACC電源・IG電源は来ています。しかし、その空き部分は「何のオプションで使用するもの」等の記載がありません。アンペア数の記載もないため、どのアンペア数のヒューズ電源を使うのかもわかりません。
質問╱MITSUサン
電源側の端子にテスターを当てると反応がある
ヒューズが入っていない=何アンペア流せる回路なのかも分からない
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でも、電源が来ているのは確かなんだから、ちょっと位もらってもいいような……
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ところが、正体不明の電源なので、何アンペア取り出していいか想像がつかないのです。
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そっか。
しかも配線図を見たところで分からない。 -
ヒューズからの電源取り出しの基本中の基本ですが……例えば純正ヒューズが10アンペアや15アンペアだとして、「マージンも考えて、数アンペアを取り出して使っても問題ないだろう」と目測が立ちますよね。
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電源取り出し量については、「車のヒューズから取れる電源容量。限界は何アンペア?」でも詳しく触れています。
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ところが、もともとの数字(基準)がなかったら、その回路自体が何アンペアまで耐えられるように設計されているのか分かりませんよね。
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確かに。
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ヒューズボックスの内部には、パターン(電気が流れる道)が走っています。で、たくさん電流が流れるヒューズの裏には、それなりに太いパターン(道)が通っていて、十分な電気が流れるようになっています。
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つまり30アンペアヒューズの裏側は、道もそれなりに太くなっている。
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逆に、小さいヒューズが入っているパターンは、それなりに細い。
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表からは見えなくても、内部的な道の太さはそれぞれ違うんですね。
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つまり、細いパターンしかない回路に対して、テキトウなアンペア数のヒューズ電源を付けたとしたら、ヒューズが切れる前にパターンが切れてしまう可能性もあります。
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最悪はもっと深刻なトラブルが起きても不思議ではない。
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そうなんです。ある意味ブラックボックスからうかつに電源を取るのは危険だし、そもそもメリットがありません。
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無理矢理メリットを考えるとすれば……「他の電装品で使っていないから、もし飛ばしても他の電装品に影響が出ない」とは言えるのでは?
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あー、それでいうなら、そもそも「純正ではつながっていない回路に電気を流す」という発想自体がNGですね。
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付ける製品の消費電力が小さくても?
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そういう問題ではなくて、ヒューズ電源を差し込む、ということは、「もともとつながっていない回路を導通させる」ということです。
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ヒューズ電源根元のヒューズを介して、反対側にも電気が流れるということか。
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その先がどうなっているかも分からないのに、です。
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ヒューズが入っていない位だから、どこにもつながっていないのでは?
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かもしれませんが、それは憶測でしかない。もしもどこかにつながっていたら思わぬトラブルを引き起こかねない。
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なーるほど。
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そんなリスクを取ってまで、そこから電源を取るメリットは何もありません。デメリットしかないので、やめておきましょう。
ヒューズ電源のきほんは、「ヒューズ電源の種類と選び方」参照。
ヒューズ電源は、それ自体が「ヒューズ」でもある。つまり両側の接点をつなげることになる。
ヒューズから電源を取り出すのは定番ではありますが、定番だからといってデメリットがないわけではありません。はじめてヒューズから電源取り出ししようとしているなら、下の動画(YouTube)の内容もチェックしておくことを強くオススメします(DIYラボ編集部)
DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。勉強家。●コムエンタープライズ TEL 079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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