LEDヘッドライトバルブの知識
コンパクトなLEDヘッドライトバルブは熱ダレも起こりやすい
コンパクトなLEDヘッドライトバルブの、わかっておくべきデメリットの続き。今回は明るさアップと連動する「熱ダレ問題」のリスクをおさらい解説。さらに配光性能におよぼす悪影響についても言及。
コンパクトなLEDヘッドライトバルブが主流の中、改めて重要な熱ダレ問題
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「コンパクトなLEDヘッドライトバルブのデメリットは?」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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前回は「コンパクトなLEDヘッドライトはヒートシンクが小さいから、明るさを抑えている」というお話をしましたが……
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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ルーメン値でみると、こういう差がありました。
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ただ、LEDバルブの実用性を測る上ではスペック上のルーメンだけ見ていてもダメです。DIYラボ上ではずっと言い続けていることですが。
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ふむ。
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例えば以前に、LEDヘッドライトバルブの熱ダレ問題(↓)についてお話したことがあります。
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そういえばLEDヘッドライトは時間の経過とともに「熱ダレ」してしまうんでしたね。
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放熱性能が低いLEDヘッドライトバルブだと、点灯直後は明るくても、熱ダレによって明るさ(ルーメン値)も下がっていくのです。
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例えば3000ルーメンのLEDヘッドライトバルブが、点灯しているうちに2000ルーメンになるかもしれないという……。
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その減衰率をできるだけ少なくするために、IPFのLEDヘッドライト(通常モデル)は大型ヒートシンクと冷却ファンを組み合わせて放熱を重視しているのです。
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その視点でいくと、小さいヒートシンクしか付いていないコンパクトなLEDヘッドライトは……
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当然、熱ダレが起こりやすくなります。放熱が追いつかないのに出力だけ上げているLEDヘッドライトバルブだと、わずか5分10分経過後には極端にルーメン値が落ちるケースもざらにあります。
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この話だけ聞いても、箱に書いてあるルーメン値がアテにならないことが、よく分かるという……
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IPFの製品同士で比較しても、通常モデルよりコンパクトモデルはどうしても不利になります。
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ふむ。
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で、この問題をできるだけ軽減するために、小さいながらもファンを内蔵しています。
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え? IPFのコンパクトモデルは、こんな小さな灯体の中に冷却ファンが入っているんだ。
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小型防水電動ファンを積んでいます。それから放熱効果を高める特許技術LACH(ラック)なども組み合わせて、小さくても、できる限りの放熱性は保てるように設計しています。
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コンパクトなモデルでも無茶はしていない設計なのね。
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IPFとしては、コンパクトな中でもやれることは全部やってはいます。
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では、そんな技術屋のIPFが昔からとことんこだわってきた「配光性能」はどうなのか。
ハイビーム | ロービーム | |
通常モデル | 5400ルーメン | 3800ルーメン |
コンパクト | 4000ルーメン | 3200ルーメン |
純正ハロゲン | 2500ルーメン | 1500ルーメン |
✔ ひとくちメモ
LACHとは「LEDエアクーリングホール」の略で、特殊形状の通気口をボディに開け、LEDバルブから発生する熱を活用した煙突効果によって、LEDの熱を奪う空冷機構のこと。これはIPF特許技術のひとつ。
コンパクトなLEDヘッドライトの配光性能はどうなのか?
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コンパクトなLEDヘッドライトでも配光には悪影響はないのでしょうか?
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比較すると通常モデルよりは甘いところが出てきます。ただ、そのあたりもできる限りの性能は持たせています。
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フムフム。
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ただし、通常モデル(オールインワンタイプ)で採用していた背面間距離の短い基板は、採用できていません。
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背面間距離……ってなんのことでしたっけ?
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おさらいですが、純正で付いているハロゲンバルブのフィラメントは、1本で全方向に光を飛ばしています。
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それに対して、LEDヘッドライトバルブでは、2つのLEDチップを背中合わせに配置しています。
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つまりLEDバルブの場合は、光源が2つに分かれる。
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そのLEDとLEDの背面間の距離は、縮まれば縮まるほどフィラメントのような一個の光源に近づきます。
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もともとの純正光源の条件に近づくほど、配光性能が高くなるという話でしたね。
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LED同士の距離を限りなく近づけるために、IPFの通常モデル(オールインワンタイプ)では2枚の基板を貼り合わせる「デュアルCPS」という製造方法を使っていましたが……
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今回のコンパクトなLEDヘッドライトバルブでは使っていないの?
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そうなんです。コンパクトモデルの場合、ボディを薄くすることで、放熱問題が厳しくなってしまいます。
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そういうことか……。
薄く作るのも難しいんだ。 -
ただでさえコンパクトなLEDヘッドライトバルブは熱ダレしやすいのに、その傾向がより顕著になってしまいます。
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でも、だからといってボディを厚くして、背面間距離が長くなるのもダメなんでしょう?
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単純に背面間距離の長いLEDバルブを作ってしまったら、配光はグチャグチャです。
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放熱性をキープしようとすれば、配光が乱れる。バランス取りが難しいですね。
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そこでコンパクトなLEDヘッドライトバルブでは、トップシェードの部分をチューニングして、配光を出せるようにしています。
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これはこれで、IPF独自の配光制御技術を盛り込んでいるのです。
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ではコンパクトなLEDヘッドライトを選んでも、カットラインが出ないとか幻惑光が飛ぶとか、そういう心配はいらないのね。
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IPF製に関してはそう言えます。
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しかし、そもそもの理屈で言えば「熱ダレ」や「配光の乱れ」は、コンパクトなLEDヘッドライトバルブで起こりやすい傾向にある。
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それは間違いないですね。
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そのくらいシビアなものなんだと知った上で、LEDヘッドライトバルブを選びたいところです。
純正ハロゲンバルブの照射
左右非対象形状のトップシェードを採用している。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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