ランプのQ&A
LEDヘッドライトバルブが二面発光の理由。三面発光や片面発光はどうなの?
「社外のLEDヘッドライトは二面発光が多いけれど、三面発光の方がより効率よく光るのでは?」また「片面発光のバルブは、照射ムラは出ないの?」など、LEDヘッドライトのバルブ設計にまつわる疑問を、バルブメーカーに取材した。
社外品のLEDヘッドライトに二面発光が多いのはナゼ?
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読者の方から、こんなマニアックな質問を頂きました。
●レポーター:イルミちゃん
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LEDバルブの設計そのものに対する知的な疑問です。バルブメーカーに聞いてみましょう。
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なるほど。……実はこの質問の中に出てくる「三面発光」は、IPFも検討したことがあります。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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ほう。
じゃあやっぱり、川崎さんの指摘は鋭い面があるんだ。 -
でも、最終的には2つのチップLEDを背中合わせにする「二面発光」となっています。
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この「二面発光」が、LEDヘッドライトバルブの標準的なカタチになっていますね。
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そうですね。三面発光のLEDヘッドライトもありますけど、主流は二面発光です。
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まず、「片面の場合は照射ムラは出ないのか?」という点についてはどうでしょう。
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おっしゃる通り、「片面発光」では無理がありますね。
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ふむ。
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LEDヘッドライトバルブの場合は、「片面発光」だとリフレクターにしっかり光が当たりませんので、カットラインがきれいに出せません。
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ほう。
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ロービーム照射時のヘッドライトを正面から見ると分かるんですが、リフレクターの上半分プラス、ナナメ下まで巻き込むように光が反射しています。
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あれ、リフレクター全部が光っているわけではないんだ。
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リフレクター全面が光るのはハイビームの時ですね。
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ああ、なるほど。
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しかし、ロービーム時も上半分だけではなく、ナナメ下まで巻き込むようにリフレクターが光っています。
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フムフム。
上半分プラスアルファってことね。 -
しかし、チップLEDを片面にしか配置しない設計だと、リフレクターへの反射は半分(以下)となりますから、ロービームの配光を再現することはできないってことです。
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なるほど。では、「片面の場合に照射ムラは出ないのですか?」という質問に対しては、「出る」ということだ。
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そうですね。だから最近は片面発光というのは、ほとんど見かけなりました。
■ 質問
LEDヘッドライトのバルブについてです。LEDチップが両面だったり片面だったりしますが、片面の場合に照射ムラは出ないのですか? また、多くのLEDバルブの先端部が円状になってますが、影が出来たりしないのでしょうか? ハロゲンやHIDはガラス管で360度発光なのに理解出来ません(O_O)
チップLEDの発光範囲が180度なら、先端部を無くすとか、三角錐(ピラミッド)形状で三面発光とかなら、効率が良くなりそうですが、どうしてそうしないのでしょうか?
質問╱川崎さん
IPFの初期型のLEDヘッドライトバルブ(H4)。大ヒットモデル。
ロービーム照射時
LEDヘッドライトバルブの先端部が円形になっているのは理由がある
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引き続き疑問点を検証。「多くのLEDバルブの先端部が円状になっている」ことについてです。
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IPFのLEDヘッドライトバルブ(H4型)も、先端部が円形になっています。
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これによって影が出たりしないのか、という質問ですが……
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そもそもH4のバルブ(電球)自体も、アタマがブラックトップになっているんですよ。
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ホントだ。
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これは、バルブから出る直射光が対向車を幻惑するのを防ぐために付いているんですよ。
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あー。
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「ヘッドライトが地面を照らす光」とは、「リフレクターに反射した光」なんですね。
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フムフム。
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逆に言うと、リフレクターに当たらずに正面などに飛んでいってしまう光は、路面を照らすわけではないので不要なんですよ。
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前に飛んでいく光は、いらないってこと?
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ハイ。だからそういう余計な光が対向車を幻惑したりしないよう、バルブのアタマがカサでフタしてあるのです。
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なるほど。
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車種によっては、灯体側にシェード(カサ)が付いている場合もありますが、目的は同じです。
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ではLEDヘッドライトバルブの先端形状も、純正の構造をなぞった形ってことか。
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そうですね。これはリフレクターに当たらない光をカットしているだけなので、路面照射に影が出たりという心配はありません。
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360度照射の電球も、正面には光を飛ばさないようになっている、ということです。
左が新型で、右が従来型。ちなみに新型ではバッジを付けて高級感を上げている。
左が純正電球、右がIPFの従来モデルのLEDヘッドライトバルブだ。
三面発光LEDヘッドライトは二面発光より不利な点がある
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次は、川崎さんの提案。「三角錐形状で3面発光(※リフレクター車なら逆向きの三角錐)」についてです。
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ハイ。冒頭でも触れましたが、三面発光はIPFも試作してみた経験があります。
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なぜ製品化しなかったの?
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三面発光の問題は、3つのチップLEDの距離が生まれてしまうところにあります。
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む。
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現状の二面発光は、チップLED同士を背中合わせにして、この距離をできるだけ縮めて、「1個の光源」の状態に近づけることを狙っています。
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ちなみに、このチップLED同士の距離を「背面間距離」と言いまして、IPFの新型LEDヘッドライトバルブでは極限まで縮めています。
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間の板を、ペラペラに薄くしたんだ。
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そうですけど、単純に薄くするだけでは放熱しきれませんから、2枚の大型銅基板を背中合わせにして、熱を効率よくヒートシンクに伝えながらの薄型化です
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何としても、LEDチップの背面間距離を縮めたいってことか。
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ようするに純正のフィラメント位置からできるだけズレないように、2つのチップLEDを配置したいんですよ。
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もともとの電球の光源は「ひとつ」なんですもんね。
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究極の理想は、フィラメントと同形状で360度に光るLEDということになりますが、それはまだ無い(※)。現実的なチョイスで「2つのチップを背中合わせにして、1個のLEDのようにしている」と言えます。
※360度発光のLEDが存在しないわけではないが、車のLEDヘッドライト用として使うにはまだ時期尚早の技術、ということ。
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それが二面発光の理由なんだ。
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これが三面発光になると、純正の配光を正確に再現するのが難しくなります。
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3人いると背中合わせには立てない、ということか。
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電球から置き換えるLEDヘッドライトバルブは、純正光源位置になぞって明るくしていくのが一番効率的なんです。
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しかしながら、そんなIPFにも、三面発光のLEDバルブがありまして……
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あるじゃないか!とツッコミたくなりますが、これはT10ウェッジ球なのです。
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ポジションランプやナンバー灯向けのLEDバルブの場合は、リフレクター反射でどうのこうのという要素がほとんどないからです。
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なるほど。
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チップLEDの照射が120度なので、それを三面に配置して360度照射を実現しています。
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まさに川崎さんの言っている三面発光で、360度照射を実現しているわけだ。
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ポジションランプやナンバー灯ならそんなにパワーも必要ないので、放熱の問題もクリアできています。
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LEDバルブとしては三面発光もアリだけど、純正光源位置を再現したいLEDヘッドライトではデメリットが出てくる、ということなんですねー。
新型の341HLB2では2個のLEDの距離が、さらに寄せられている。
IPFの502W
パーン!
✔ この威力はナンバー灯で発揮される。詳しくは、「ナンバー灯のLED化は、ムラが強いと保安基準を満たせない」参照。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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