車高を低くしないなら、ホイールのツラを出せる……という考え方の盲点
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車高はそこまで低くなくてもいい。しかしホイールのツラは出したい、という要望が増えている。車高を高めにすれば、リムの深いホイールを履けそうな気もするが、実際にはどうなのか。足回りパーツメーカーのJラインに聞いた。
Jラインのデモカーほど車高を低くしなければ、もっとホイールのツラを出せる?
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今日は、Jラインによく寄せられる悩み相談について、解説したいと思います。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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どんな悩み相談ですか?
●レポーター:イルミちゃん
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いちばん多いのは、ホイールマッチングに関する質問。
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Jラインは足回りパーツメーカーですけど、ホイールのことを聞かれるんですね。
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まあ、Jラインのリアアクスルキット(※)を買うに当たって、ホイールサイズをどうしたらいいか、という相談ですね。
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あー、なるほど。ホイールサイズ選びも、ノーマル車とは変わってくるし。
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ただ……これは聞かれても、なかなか答えるのが難しい問題ではあります。
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ですよね。
電話やメールで聞かれても……という面はある。 -
例えば、よく聞かれる質問に、こういう内容のものがあります。これはスズキやダイハツの軽自動車全般の話。
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ふむ。
ごもっともな話ではあるが。 -
おさらいですが、Jラインの軽自動車用リアアクスルキットは、6.5J+35が、15ミリ~20ミリ程度ツラウチになるように設計されています(※)
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ここでまず、「そんなにツラが引っ込むんですか!?」と、よく言われるわけです。
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刺さるコメントですね。
ワハハ。 -
引っ込むというより、引っ込めないと当たるから、そのように作っている、ということなんですが……。
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しかしそれは、Jラインが低車高を前提にしているからでしょう?
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Jラインデモカー、いわゆる〈Jライン仕様〉は、車高が低すぎる!
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それはまあ……そうなんですけど。
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こういう車高にする前提で、Jラインは「6.5J+35」と言っているのだから、実際はもっとオフセットの低いホイールで、ツラを出せるはずだ!
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言いたいことは分かります。しかし、ホイールマッチングはそう単純ではありません。
※ リアアクスルキットの基礎知識は、「J-LINEリアアクスルで車高が落ちるしくみ」参照。
Q
Jラインの軽自動車用のリアアクスルキットは、「6.5J+35」がツラウチになるように設計されているそうですが、自分はJラインのデモカーのように低くするつもりはありません。
タイヤとフェンダーの隙間が埋まる程度(つまりカブらない車高)で、十分なのです。
だとすれば、6.5J+35よりも、もっとオフセットの低い、リムの深いホイールを履けると思うのですが、いくつまで履けますか?
Jライン仕様
車高調+70ミリダウンのリアアクスルキットを組み合わせた、MH34ワゴンRの例。
「タイヤにカブらない位の車高」という前提は、走行中に崩れる
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確かに「タイヤとフェンダーの隙間が埋まるくらいの車高」でいいならば、もう少しホイールのツラを外側に出すことはできるでしょう。
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ですよね。
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感覚的に言えば、6.5J+35より、5ミリ以上はツラを出せるでしょうから、「6.5J+30」「6.5J+28」といったサイズも入るかも知れません。
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フムフム!
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しかし……
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しかし、なんですか?
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走行中に沈み込んだとき、どこまで下がるのか? これが分かっていないと、うかつにオススメもできないのですよ。
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ムムム。
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「タイヤにカブらない位の車高」といっても、それは停車時の話をしていますので。
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しかし、走行中は上下に動きます。つまり「カブらない車高」といっても、走行中は「カブる車高」にもなる、ということです。
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まあ、一瞬だけの低車高……みたいな?
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でも、その一瞬で、ホイールとフェンダーが接触すれば傷が付きますよね。
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……むぅ。
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スズキやダイハツの軽自動車の場合、四輪独立の足回りと違って、車体が沈み込んだときもキャンバー角が変化せず、タイヤ&ホイールが真っ直ぐ上に(車体に向かって)上がるので当たりやすい。
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3リンク式やトーションビーム式の注意点は、前にも勉強しました。
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こういう構造の足回りだと、どこまでホイールのツラを出せるかは、停車時の車高で決められるものではない、ということなんです。
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「どこまで沈み込むか?」問題がからんでくる。
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そしてそれは、組んでいる足回りによってバラバラなんですよ。
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ダウンサスかもしれないし、車高調かもしれないし、エアサスかもしれないし?
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車高調だって、メーカーやモデルによって固さもバラバラです。バネレートや減衰力などのセッティングにもよる。
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そう考えると、パターンはほぼ無限になってしまいますが……。
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そうなんです。
車種や足回りの状況は、ホントにバラバラ。 -
う~ん……。
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今回話題にしているホイールサイズ「6.5J+35」は、スズキとダイハツの軽自動車の、Jラインアクスル装着車の例ですが……
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ですからダイハツ車は、スズキ車よりも、付けている足回りの差が大きい、と言えます。
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これは、電話やメールでホイールマッチングを聞かれても答えようがない。
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ですね。ホイールマッチングは答えがないというか……人それぞれの答えになってくるので、一概に、オフセットいくつならOK、とは言えないのです。
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では、人はどうやって「自分の答え」を見つければよいのでしょうか?
ダイハツ車の場合は、特にショックが長く、ストローク量も大きい
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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