引っ張りタイヤの「限界サイズ」とは?
引っ張りタイヤの「限界サイズ」とはどのくらいなのか。無謀レベルに突入する手前の境界線は、どこにあるのか。20インチ低車高でよく使われる225/30-20と235/30-20を例にして、「ビードが上がりきっていない」と「リムに届いていない」の差を解説。読むと引っ張りタイヤの理解がグッと深まる!
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今日は引っ張りタイヤの限界サイズを探ります。といっても、そもそもタイヤメーカーが規定している範囲(限界)を越えているのが引っ張りタイヤですが……
●レポーター:イルミちゃん
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まあ、ここまでが限界とか、これ以上は危ないっていうのは、乗り方によって(あるいはタイヤによって)変わる話ではありますけどね。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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とはいえ、なにかこう、「無謀レベル」に突入する手前の境界線がわかればいいのになぁと思うんですが?
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ひとつの目安として言えるのは、「リムにタイヤのビードが届いていない状態」はリスクが大きいと思います。
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それって……。
そもそも履けていないってことでは? -
いや、「ビードが上がりきっていない状態」だとすぐにエア漏れしてしまいますが、それとは別の状態です。
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「リムに届いてない」と「ビードが上がりきっていない」の違いとか、よく分かりませんけどォ。
「ビードが上がりきってない」と「リムに届いていない」はどう違う?
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ビードとは、ホイール(リム)に固定する部分のことですね。
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ホイール側には、タイヤのビードを載せる部分がありますが、その部分にビード全部がちゃんとはまっていない……それが「ビードが上がりきっていない」状態です。
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「ビードが上がりきっていない」は、ホイールにタイヤが組めてないってことですよね?
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そうですね。全周のうちどこか少しでも上がりきっていない部分があると、すぐにエア漏れしてスコンとタイヤが外れる可能性がありますので。
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つまり完全に走行NGの状態ですね。
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もちろん。
上がりきっていないのはNGです。 -
では、「リムに届いていない」は?
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届いていないというのは、「タイヤのビード側面部分が、ホイールのリムフランジに届いていない状態」のことですね。
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リムに届かないって、コレ(↑)のことか〜。
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本来であれば、ビードを載せるだけでなく、側面側の部分までリムにピタっと密着させることで、エア漏れしにくくしているのがタイヤの作りなんですが……、
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なぜこのような状態になっているかというと……
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タイヤがホイールに対して細すぎると、タイヤの側面がリムまで届かず、隙間ができている状態になります。これが「リムに届いてない」と言われる状態なんです。
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で、気になるのがこの先。
リムに届いていないリスクとは? -
一番はエアーが漏れる可能性が高まる。よくあるのは、ハンドルを切ったはずみにエアーが抜けたりとか。
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密着している面積が縦方向だけで少ないですもんね。
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駐車場とかでハンドルを切るとねじられるので、外れやすい。ビード周りの剛性が低いタイヤだと特にそうなるから、全部同じとは言いませんけどね。
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つまり、この状態からは引っ張りタイヤのリスクが一段上がるわけですね。
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そうなんです。例えば20インチの9.5Jに225/30-20を組んだりすると、そういう状態になります。
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9Jなら届くんですけどね。9.5Jだと、上のように隙間ができます。
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これはマッチングとしては、無謀レベルってこと?
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ただ、以前のJ-LINEデモカーの20アルファードは、このマッチングで普通に乗っていたんですよ。ビードが上がりきっていれば、カンタンに空気が漏れるわけではないので。
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こういう車の乗り方を心得ているなら、乗れるってことでしょうか?
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あとはタイヤの問題もあります。J-LINEがルッチーニを使っている理由のひとつが、引っ張って履いたときにエア漏れしにくいことなんですね。
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ほほう。
なぜタイヤ銘柄でそんな差が生まれるんだろう? -
ビード周りの強度があるから、というのが理由のようです。おかげでタイヤを組む時は、固くて大変ですけど。
ビードとは、ホイールと組み合わさって固定される部分
タイヤとリムに隙間がある状態
9.5Jに225/30-20を組んだ状態
タイヤはルッチーニ ブォーノスポーツ。同銘柄では20インチ最細・最小外径サイズの225/30-20
リムに届いている引っ張りタイヤマッチング
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リムに届いていない状態はイヤだな、という人は?
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同じ9.5Jとすれば、タイヤを1サイズ上げます。235/30-20を組めば、ビード側面部までピチっとリムに届きますよ。
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あるいは225/30-20でも9Jまでなら、同じようにリムまで届きます。
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同じ引っ張りタイヤでも、このステージならエア漏れリスクも減るんだ。
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J-LINEデモカーも、30アルファードに変わったのを機に、235/30-20に換えたんですよ。
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おぉ。
氏家研究員も大人になったってことですか? -
それもある(苦笑)。しかしリスクうんぬんの問題より、リムまでしっかり届いている状態のほうが見た目もいい。リムに届いていないと、ちょっと無理矢理感が出てしまうので。
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なるほど。
見た目の問題も大切ですね。
9.5Jに235/30-20での引っ張り
ルッチーニは20インチの30扁平も充実。225/30がダメなら235/30が選べる。
19インチの場合はどうなのか?
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19インチの場合は、一番細い215/35-19を9.5Jに組んだとしても、リムに届かないほどの引っ張りタイヤにはなりません(※あくまでもルッチーニでの話)。
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19インチは、8.5J〜9.5Jあたりを使うことが多い、という話でしたよね。
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そうなんです。だから19インチは、そもそも極端に無謀な引っ張りタイヤにはなりにくいです。
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なるほど。
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でも215/35-19を10Jとかで引っ張ると、さすがにリムに届かないレベルになるでしょうね。
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それはさすがにチョット、無謀レベルってことか。
一番細い215/35-19を何Jまで組めるか?
引っ張りタイヤ最大のリスクは空気圧低下
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引っ張りタイヤのリスクを気にするなら、サイズの問題もあるけど、なによりまず空気圧ですよ。
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空気圧が減ると、普通のタイヤサイズでも危ないって言うくらいですもんね。
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タイヤを引っ張っている車って、キャンバー角とかも付いていることが多いじゃないですか。もともと内側だけが接地しているような状態なわけです。
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こういう車はタイヤの空気が減ると、すぐショルダーの部分が地面に付いてしまう。ショルダーで走ってしまうと、タイヤっていくらも持たないんです。
タイヤの内側だけが接地
マ
メ
知
識
ショルダーと呼ばれるタイヤのカドの部分は、材料が重なっている部分でもあるので強度的に弱い。空気圧が下がってショルダーに負荷がかかると、異常変形して発熱し、内側からタイヤがボロボロになる。
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引っ張りタイヤで特に注意が必要なのは、ショルダーに負担がかかりやすいからなんだ。
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そういうことです。とにかく空気圧はマメにチェックしたほうがいい。
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氏家研究員は、225/30-20を9.5Jに組むいっぽうで、そういうところ(空気)は慎重意見ですね。
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そこなんですよ。引っ張りタイヤのリスクの話をするなら、まず空気圧をキープすることが一番大切!
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サイズ選びだけで「無難」とか「無謀」とか決めるのも、ちょっと違うと。
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空気圧をしっかり管理できるなら意外と平気なマッチングも、空気圧が下がったとたんに危険な状態になるってことです。
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なるほど。
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空気圧の低下は、いつ起きているか分からない。だから、車に乗る前には、必ず車の周りを一周して、タイヤ(内側)だけは見ますね〜。
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引っ張りタイヤのリスクを最小限にするコツは、運行前点検だったのか!
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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