ダブルウィッシュボーン式のアームロックとは? その対策は?
ダブルウィッシュボーン式の足回りを採用する車が増えている。そんな中で、「ダブルウィッシュボーン式のアームロック」の問題も増えている。これはいったいどういうことなのか。有効な対策は?
ダブルウィッシュボーン式なら車高調やエアサスだけでも落としきれる、という誤解
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最近のトヨタ車では、リアにダブルウィッシュボーン式の足回りを採用する車が増えています。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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それって、30アルファードから始まった流れでしたね。
●レポーター:イルミちゃん
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そうですね。その後、プリウスも50系から切り替わり、最近話題のカローラスポーツでも、リアはダブルウィッシュボーン式が採用されました。
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これまではリアはトーションビーム式が主流でしたが……ここへきて、どんどん置き換わっているもよう。
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ではJラインのお家芸「リアアクスルを交換する」カスタムは、通用しませんね?
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ですね。
リアアクスル自体、使われていませんので。 -
……Jラインのリアアクスルキットはどうなる!?
(゚-゚) -
いや、余計な心配はしなくていいですよ?
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ダブルウィッシュボーン式なら、セダンみたいに車高調だけでも車高が落ちきるってことでしょう?
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そう単純ではないんですよ。それが今日のテーマである、アームロックの問題です。
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そういえば、最近「アームロック」という言葉を耳にする機会が増えましたね。
50プリウス後期も、リアの足回りは前期同様にダブルウィッシュボーン式。
✔ ストラット式・ダブルウィッシュボーン式・トーションビーム式の違いは、下記記事から読むとおさらいできる。
アームロックとは?
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で、アームロックとはなにか?
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最近のトヨタ車のリア・ダブルウィッシュボーン式で起こっている問題なんですが……
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フムフム。
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車高調やエアサスなどを付けて車高を低くしていくと、アームがフレームにぶつかってしまう、という問題が起こります。
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アームがぶつかるって、どのアームのこと?
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そこは車種ごとの構造によりますが、50プリウスの場合はアッパーアームが当たります。
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30アルファードはアッパーアームだけでなく、サスペンションアームやスイングアームでも、同じことが起こる。
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ぶつかったらどうなるの?
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それ以上、アームが動きません。アームの可動を強制的に止めてしまうので「アームロック」と言います。
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……ということは、車高も下げ止まってしまう。
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それもありますが、走行中に足回りがストロークして沈み込んだときに接触するのが問題です。
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あー。
鉄と鉄がぶつかるんですもんね。 -
音もするし、なによりアームにとっていいわけがありませんよね。
50プリウス
30アルファード╱ヴェルファイア
どのくらい車高を下げたらアームロックするのか?
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では、どのくらい車高を下げたらアームロックするのでしょうか?
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Jラインでもそれをよく質問されるんですが、なかなか答えるのが難しくて……
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それはなぜ?
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“アームロックする時点の車高”という意味でいうなら、例えば30アルファードは20インチホイールのリムにフェンダーがカブるぐらいの車高になればロックします。
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では、タイヤカブリで止めておけばいいんだ。
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……という風に思う人が多いんですが、走行中に沈み込めばアームロックしますよ。
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ウッ。
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よくある仕様として、タイヤのリムガードあたりまでフェンダーをカブせているとしましょう。
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リムガードツライチみたいな。
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その段階ではアームロックはしませんが、あと2~3センチ下がったらアームロックする。
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けっこう近い。
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そして、アルファード╱ヴェルファイアのような車重のある車は、走行中に2~3センチはすぐ上下してしまう。
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ウーム。
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足回りをガチガチにしていれば別だけど、しかし乗り心地の面から言えば、4~5センチくらいは足回りのストローク量が欲しいところです。
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でもそれでは、リムガードツライチでは余裕でアームロックしてしまう。
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そうなんです。30アルファード╱ヴェルファイアのダブルウィッシュボーン式は、わりと早い段階でアームロックします。
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どの段階でアームロックするかも、車種によって違うんですね。
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もちろん、そうです。比べると50プリウスはまだいいほうです。
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50プリウスを例にすれば、べつに純正アーム形状のアッパーアームでも、この車高にできてはいます。
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ここまで来てもアームロックしないのか。
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しかしこのまま走行して沈み込めば、リアのアッパーアームがフレームに干渉してしまいます。
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じゃあ、けっきょくアームロックはするんだ。
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上のような状態まで車高を低くするなら、アームロック対策が必要になる、ということですね。
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なるほどね。
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いっぽう、C-HRは50プリウスと同じ足回りを採用しているんですが……
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C-HRのリア・ダブルウィッシュボーン式は、Jラインデモカーでもアームロックは起こりませんでした。
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こんなに低くして走行したとしても、アームロックしないんだ。
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そうなんです。しかし、同じ足回りを採用する50プリウスでは、アームロックが起こる。
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その違いはなに?
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そこは車体側のフレーム形状の違いですね。
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そういうことか。
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ですからダブルウィッシュボーン式のアームロックといっても、事情は車種によってそれぞれ違うのです。
C-HR
アームロック対策とは?
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アームロック事情が車種それぞれなら、その対策も車種によって変わってくる?
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まあ、そうですね。30アルファード╱ヴェルファイアのアームロック対策は以前に解説しましたね。
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50プリウスを例にすれば、30アルファードのように、アッチもコッチもアームロックする、というわけではありません。
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ふむ。
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しかしリアのアッパーアームはフレームに干渉するので、対策アームをJラインで開発中です。
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上の写真はC-HR用のリアアッパーアームですが、C-HR用を50プリウスに流用すると(装着はできるけど)アームロックしてしまいました。
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C-HRはアームロックしないのに、なぜアッパーアームを作ったんでしょう?
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C-HR用のアッパーアームの目的は、ホイールのオフセット調節やキャンバー角が目的なんですよ。
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そういうことか。
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アーム交換の目的は、アームロック対策だけではありませんからね。
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いっぽう、アームロックする車種の場合は、それを回避する形状でアームを作るんだ。
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そういうことですね。そこはもう、車種ごとに事情がバラバラです。
Jラインのアンロックアッパーアーム
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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