調整式アッパーアームのメリットとデメリット
調整式アッパーアームのメリットは、当然だが調整できること。その反面、ネジがゆるむ可能性がある。このデメリットゆえ、アーム類はすべて固定式にこだわっていたJ-LINEが、調整式を新開発。一体どういうことなのか取材してきた。
C-HRのリアはダブルウィッシュボーンなので、アッパーアーム交換でキャンバー角が付く
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この記事は「J-LINEがC-HR用の足回りパーツを開発。SUVでも低車高…!」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
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C-HRのリアは、30アルファードや50プリウスと同じく、ダブルウィッシュボーン方式です。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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フムフム。
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ダブルウィッシュボーンは、カンタンに言うと、アッパアームとロアアームの2本でホイールを支える足回りです。
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アクスルビーム1本で支えている、トーションビーム式とは違いますね〜。
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で、前回は純正ロアアーム位置を下げるブラケットを解説しました。
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ロアアーム自体は交換していないけれど、ロアアーム関連パーツですね。
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このパーツの目的は、「リアの基準車高を落とす」ことと、「アームロック(干渉)の回避」です。
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2つの要素ともに、低車高に必要になってくる。
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そうですね。それに対して、「キャンバー角を付ける」という目的で交換するのがアッパーアームです。
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トーションビーム式の車なら、リアアクスルキット(つまりアクスル交換)でキャンバー角を付けていましたが……
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C-HRはアクスル方式ではありませんから、アッパーアーム交換でキャンバー角を付けています。
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ナルホド。コレを付けると、何度のキャンバー角が付きますか?
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う〜ん。
一概には言えませんね。 -
それはなぜ?
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もともと、ダブルウィッシュボーン式の足回りは、車高を落とせば落とすほど自然にキャンバー角が付くからです。
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そうか! C-HRの足回りは、車高を落とせばキャンバー角が付くんだ。
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リムカブりの低車高と、アッパーアームを併用して、このくらいです(↓)
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これ、角度てきに何度でしょう?
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開発直後でまだ測定していませんが、この車高で8度前後ってところじゃないでしょうか。
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リアアクスルでいうと、人気は5度という話(※)でしたけど、それ以上か〜。
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まあ、そこは車高によるので、このC-HRデモカーの車高なら……ということですが。
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なるほどね。
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それと、今回のアッパーアームは、調整式を採用したんですよ。だからキャンバー角の調整ができます。
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ええッ!?
ちょ……調整式ですって!
J-LINEリアアンロックシステムの構成パーツのひとつであるアッパーアーム。新作のC-HR用。
✔ 問い合わせ先:〈J-LINE〉TEL 022-367-7534╱またはお問い合わせフォームから。
✔ ひとくちメモ
●車高を落とすことで自動的に(自然に)付くキャンバー角のことを、「ナチュラルキャンバー」と呼ぶ。
●四輪独立のダブルウィッシュボーンやマルチリンク式が採用されているセダンは、車高を落とすことでキャンバー角が付くが、あれがまさにナチュラルキャンバーの代表イメージ。
✔ ひとくちメモ
●J-LINEはアクスルキットを含めて、「調整式」はやらない足回りメーカー。「固定式」を数種類用意し、選ぶ方式を取っている。
●調整式は、「調整できる」というメリットばかりが語られがちだが、反面、ネジがゆるんだり、固定位置がズレるといった可能性(デメリット)もあるためだ。
C-HR用アッパーアームで、J-LINEが初めて「調整式」を採用
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J-LINEの足回りパーツって、固定式がこだわりのはずでは?
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そうですね。調整式アームだと、ネジがゆるんで動いてしまう&ズレるという可能性がありますからね。
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では、どうして調整式に?
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このアッパーアームは、ネジ式ではなく、カム式を採用しているんですよ。
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アームには、走行中は単純な上下運動ではなく、ねじれながら上下に動くような力がかかります。
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ねじれつつ、上下に動くということは……
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ねじれる力が働いているから、ネジがゆるむトラブルが起こります。だけどコレは、そもそもネジ式ではない。ゆるむことが絶対ないカム式を採用しました。
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ゆるまない調整式アームも作れるのか〜。
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例えていうと、純正もそうじゃないですか。
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え!?
純正の足回りは、調整なんてできないのでは? -
いやいや、C-HRはダブルウィッシュボーンなので、リアのトー調整ができますが、その部分で純正が採用しているのもカム式です。それと同じ。
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言われてみれば、純正のトー角は調整式ですね。でないとトー角を調整できないし。
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その方式を、まんまアッパーアームのキャンバー調整にも使った、ということです。
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ゆるまないのは大きなメリットですが、デメリットはありますか?
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調整範囲は少ないですね。モデル車のC-HRで、すでに全開倒しの状態です。しかし、J-LINEとしては安心感を取りました。
偏心カムを使うことで、キャンバー調整できるようにするタイプ。
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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