>>> J-LINE流 足回り講習(第3回)
ダブルウィッシュボーン式の仕組みとキャンバー角の関係
ダブルウィッシュボーン式は、太いホイールが履ける・ツライチにもしやすいなど、ドレスアップカー的メリットがある。ダブルウィッシュボーンの仕組みとキャンバー角の関係を知ると、その理由が明快にわかる。
ダブルウィッシュボーン式とトーションビーム式の違い
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J-LINE流 足回り講習・第3回目。
今日はダブルウィッシュボーン式についてです。●レポーター:イルミちゃん
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ダブルウィッシュボーン式は昔からありますが、最近ではアルファードが、リアの足回りをトーションビーム式から変更したのが話題になりました。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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フルモデルチェンジとはいえ、同車種で足回り構造をがらっと変えるなんて、珍しい話です。
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そうなんですね。
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プリウスも30系まではトーションビーム式だったのが、50系からダブルウィッシュボーン式になりました。
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トヨタ内で流行っているのか。
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もともとダブルウィッシュボーン式と言えば、高級セダンやスポーツカーに使われるイメージの強い足回りですが、ここへきて、採用車種を増やしていますね。
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ハリアーやC-HRみたいな、SUVだと?
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やはり、ダブルウィッシュボーン式ですよね。
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「走りにこだわる車はダブルウィッシュボーン」……みたいな棲み分けがある?
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そうですね。対して、ミニバンやコンパクトカーではトーションビーム式が主流だった。ところが、アルファードがダブルウィッシュボーン式へ切り替えたわけです。
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アルファードは他のミニバンとは違うんだぞ、ということでしょうか。
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そうなんでしょうが、そうなるとカスタマイズの手法も、がらっと変わります。
20アルファードまではリア・トーションビーム式だったが……
✔ トーションビーム式のおさらいは、「トーションビーム式とは?」を参照。
30アルファードはリア・ダブルウィッシュボーン式へ
C-HRのリアも、ダブルウィッシュボーン式。
ダブルウィッシュボーンとキャンバー角の関係。ローダウンでどう変化する?
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まずは、ダブルウィッシュボーン式のおさらいから。
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カンタンに言うと、ロアアームとアッパーアームという、2本のアームでタイヤを支えている足まわりですね。それだけではなく、スイングアームなどもありますが。
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特徴として、ロアアームのほうが長くて、アッパーアームのほうが短いケースがほとんどです。
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フムフム。
それ、ポイントなんですね。 -
アッパアームが短いと、車体が沈み込んだときには、アッパー側(上側)が引き込まれます。
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と言うことは……
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それによって、キャンバー角がつきます。
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ナルホド。
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短くすればするほど、走行中のキャンバー角の変動が大きくなってしまうので、設計する側は極力アッパーアームを長くしていると思いますが。
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それでも同じ長さにはできないから、キャンバー角が変化するんですね。
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というわけで、ダブルウィッシュボーン式の車は、車高を落とすとナチュラルキャンバーが付く。
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セダン系の「ハ」の字のイメージ。
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とはいえ、アッパーアームとロアアームの長さにそれほど差がないダブルウィッシュボーンだとしたら、あまりキャンバー角は付きませんよ。
✔「独立懸架(どくりつけんか)」方式なので、左右サスペンションが独立して上下に動く。
30アルファードはダブルウィッシュボーン式になっていじり方も変わった
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ダブルウィッシュボーン式に変わった、30アルファードの足回り。それによって(カスタマイズ的には)何が変わったのでしょう?
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太いホイールを履きやすいとか、そういう意味ではやりやすくなったと言えるでしょう。
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それはナチュラルキャンバーの恩恵?
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そうですね。アルファードの例でいうと、20系も30系もタイヤハウスの大きさ自体は、そんなに変わっていないんですが……
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フムフム。
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車体が沈み込むほどキャンバー角が付く動きというのは、ドレスアップカー的には都合がいいんですね。
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沈み込んだときに内側に入り込む(倒れ込む)ダブルウィッシュボーン式であれば、外側に寄せて太いホイールを履いても、かわしてくれます。
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つまり、太いホイールも履きやすいし、ツライチにもしやすい、ということですね。
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そうですね。停車した状態で、いい感じのツライチになっていたとします。そこから走行中に沈んでも、中に入ってくれる。だからツラを出しやすい。
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同じことをトーションビーム式ですると……
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タイヤ&ホイールが倒れず、そのままの角度で真上に動くから、フェンダーとぶつかってしまう。
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ということは、沈み込んだときに内側に入るオフセット(インセット)を選ばないといけない。
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でも入れたら入れたで、今度は内側が干渉する。だから「やっぱり9.5Jとか9Jにしておこうかな」という話になるんですね。
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ナルホド。
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実際に、「何Jまで履けるか」は車高によっても変わりますけどね。
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J-LINEのデモカーでも、20アルファードは9.5Jを履いていました。10Jだと、まさに内側が当たるからです。
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足回り構造が変わると、ホイールセッティングも変わるんですね〜。
車高が下がるほどホイールのツラが内側に入る
ダブルウィッシュボーン式のカスタマイズはアーム交換
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トーションビーム式とダブルウィッシュボーン式では、使うアイテムが全然違います。
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フムフム。
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トーションビーム式の20アルファード世代までは、リアアクスルキットで車高を落としたりキャンバー角を付けたり、といったことができました。
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しかしダブルウィッシュボーン式になると、そもそも構造的にリアアクスル(トーションビーム式ではトレーリングアームとクロスビーム)ではありません。
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足回りを構成しているのは、アッパーアームやロアアームですね。
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そこで、J-LINEとしても30アルファードからは交換用のアーム類を開発したのです。
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例えばアッパーアームを短くすることで、キャンバー角が付いたりするわけです。
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そういえば、ダブルウィッシュボーン式になって、交換用パーツの種類も増えましたね。
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そうですね。トコトンやろうとすると、費用がかかる足回りです。
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フムフム。
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ただ、アーム類の交換は必ずしもセットでやるものではなくて、必要に応じて、必要なモノだけ手を入れればいいのです。
✔ 詳しくは「J-LINEリアアクスルで車高が落ちるしくみ」参照。
✔ 詳しくは「30アルファードの車高を落としきるJ-LINEアーム登場!」参照。
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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