社外エアサス導入ガイド(第8回╱後編)
実用性を重視したエアサスの選び方
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エアサスを選ぶ基準は、時代によって変化もあるが、ここで重視するのは「実用性」と「安定性」。毎日安心して乗れる、通勤に使える足回りだ。エアサスはどれも同じではない。スペックに現れないポイントにも言及する。
エアサス選びの基準も時代によって変わる
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前回は、エアサス取り付け(インストール)の側面から、今どきのエアサス事情を紹介しました。以前と比べると、他にもいろいろ変化があるもよう
●レポーター:イルミちゃん
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そういえば最近は、エアサスに〈速さ〉を求める人があまりいないですね。
●アドバイザー:ACC タイソン研究員
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速さって?
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車高の上げ下げのスピードのことです。
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フムフム。
どれだけ速く上がるか……ということですね。 -
しかし、速く上がるというのは、ストローク量とは無関係ですよね?
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そうですね。極端なスピードを求める理由は、実用性ウンヌンではなくて、目立つためのパフォーマンス的な意味合いです。
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なるほど。
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昔は上げ下げのスピードを速くするために、オプションを付けたりする人も多かったですね。
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例えば電磁弁なども、その例ですね。
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あとは、同じようなパフォーマンス要素として、エアサスを作動させるときの「音」がありました。
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音って?
「シュッシュッ」っていう空気の音のこと? -
そうです。昔は、エアサスというと、「どのくらい大きい音がしますか?」っていう問い合わせとかも、多かったんです。
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「エアサス組んでます」の、わかりやすいアピールですね。
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イベント会場等でのパフォーマンスという点で、「速さ」「音」が求められていたものですよ。
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へぇ〜。
でも最近は違う? -
そうですね。傾向として最近のユーザーさんは、あまりそういうのは求めていない。
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まあ、街乗りでエアサスを使うのには、関係ない話ですもんね。
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ですね。今の時代は、パフォーマンス性よりも、機能面を重視してエアサスを選ぶ人が増えました。
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機能面というと?
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例えば車高のメモリー(記憶)ができるようにしたいとか……
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「乗り心地が悪くならないようにしたい」とか「故障しないですか?」とか、そういうことを気にする人が増えましたね。
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確かに、その辺は気になる。
分かる気がします。
車高を記憶できるコントローラー
壊れにくい安心感は「機械式」だが、「電磁弁」の実用性も捨てがたい
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あのー、「車高調整のスピード」を求めないのあれば、電磁弁は付けなくてもいいということでしょうか?
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そうですね。街乗りで段差を回避するために車高を上げ下げする用途なら、シンプルな機械式で十分ですから。
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それならそれで、電磁弁の故障リスクを回避したほうが、街乗りエアサス向きな気がしますが……どうなんだろ。
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ただし、電磁弁のメリットは、「速さ」だけではないですからね。
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フム。
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実用性重視の観点からも、「リモコンがほしい」とか「車高のメモリー機能(記憶)」がほしいとなったら、電磁弁は必要になります。
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そっか。
電磁弁エアサスは、実用性につながる面もある。 -
そうですね。そのあたりまで総合的に考えると、やはり機械式と電磁弁を併用する組み方がいいのではないか、というのがACCの考え方です。
街乗り用途のエアサスなら、目に見えないスペックこそ重要になる
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イベント仕様ではなくて、普通に街乗り仕様の車にエアサスを導入するとなれば、重要なのは「パフォーマンス性」より「安定性」です。
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そうですね。毎日安心して使える、通勤にも使える足回り、でないといけなくなってきますね。
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そこで大切になってくるのは、何か?
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「壊れる」「エア漏れする」では困りますし、足回りとして固すぎるとか、ストロークしないで底付きしてしまうとか……そういう状態ではしんどいですよね。
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うーん。
オモテ向きのスペックには、現れない要素ですねぇ。 -
ショックの味付けやエアバッグの質や容量など、いろいろな要素がからんできますからね。
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ACCエアサスがブリヂストン製(あるいはファイアーストーン製)エアバッグにこだわるのも、そういう理由?
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なぜカヤバ製がいいかといったら、純正のショックも製造しているような会社なので、信頼性が高い。
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考えてみると、カヤバとブリヂストンを組み合わせているのか〜。かなり贅沢なエアサスですね。
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ショック内部のオイルにエアーが噛まないように、シール(フタ)なども重要な部品。それも、カヤバで作ってもらっているんですよ。
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フムフム。
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それと、カヤバは、減衰力のバランスデータをきちんと持っているメーカーです。
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なんですか、それ?
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例えば「ショックの減衰力の設定次第で、雨の日の事故率も変わる」ウンヌンの深いデータなどもあって、そういうのに基づいているのです。
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ほえ〜。
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そういったデータを基準にして、ACCエアサス用のショックの減衰を調整してもらっているんです。
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なるほどね。
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実際、ショックの品質を見ていても安定していますね。ヌケがないとか。
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まあ、なにしろ、カヤバですので。
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そうですね。ACCエアサスが国産一流メーカーの部品にこだわるのは、実際にその品質を目の当たりにしてきたからなんです。
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こういう話は、スペック上の数字としては出てきませんが、街乗りエアサスとしては、かなり重要ではないかと思います。
もちろんそうです。なお組み合わせるショックは、昔からカヤバ製を採用しています
DIY Laboアドバイザー:岡本泰三 エアサスメーカー・ACC代表。米国に渡り、ACC USAの立ち上げも実現。本名は泰三(たいぞう)だが、英語圏の人には発音が難しいらしく、US時代に「タイソン」が通称に。そのまま呼び名として定着している。●ACC 住所:兵庫県神崎郡福崎町西田原1512-1 TEL:0790-23-0700 http://www.accincjp.com/
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