足まわりコラム
ツライチとは? その意味、定義、歴史をまとめた初心者向きホイール入門
車のドレスアップ用語「ツライチ」とは、ホイールとフェンダーの面が揃った状態のこと。カタカナ表記が普通だが、漢字で書くと面一。そんなツライチの「語源」「歴史」「定義」「車検」「デメリット」等、初心者が気になる点をまとめて解説する。
ツライチとは?
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車のドレスアップ用語としてよく登場する「ツライチ」の意味を、初心者向きに解説します。まずはその語源から!
●レポーター:イルミちゃん
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車関連でツライチといえば、ホイールとフェンダーの面が揃っている状態のことですね。
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ホイールの場合は、一番外側に来るのがリムなので、正確に言うと、リムとフェンダーが揃っている状態がツライチです。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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なお、このツライチという表現にも歴史あり。DIYラボで、独自調査してみました。
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ウ〜ム。ずいぶんと歴史の重みを感じたところで、話を現代に戻します。
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今日のドレスアップの世界のツライチの定義は、いろいろな派生がありますよね〜。
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確かに。「ツライチのこだわりもいろいろ」とよく言われます。
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例えばリムが完全に外に出ている「アウトリップ」。引っ張ったタイヤ上部の面と、フェンダーの面を揃えるような、いわばタイヤツライチの状態です。
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……それってホイール(リム)は外に出ているんですよね。それもツライチなの?
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厳密に言えばハミタイ(ハミ出しタイヤ)の状態ですね。でも「ツライチ」と聞いて、そういうスタイルをイメージする人も多いはず。
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そういうのは時代と共に変化しますからね〜。
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あるいは、そもそも全然タイヤを引っ張ったりしていなくて、ホイールよりタイヤが外に来る(普通の履き方だとそうなる)状態で、タイヤをフェンダーのギリギリまで持ってくるのもタイヤツライチと言いますが……
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アウトリップ的な引っ張りタイヤツライチとは、全然違いますね。
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そうなんです。これはどちらかというと、ホイールはツライチではなくて引っ込んでいます。
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ツライチの解釈とか定義は、かなり広いというか……
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どこでツラ(面)を合わせるかは、人によるってことですね。
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なるほど。
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ただ、基本形としては、ホイール(リム)とフェンダーが一直線に揃った状態がツライチですね。
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アウトリップでは、車検も通らないしなぁ。
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……それを言ったら、普通のツライチも車検には通らないと考えたほうがいいです。
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あれ?
「ツライチ(面一)」の語源は、大工さんが使っていた建築用語。 2つの部材の〈面〉と〈面〉に、段差がない状態であることを指す。
✔ ツライチの歴史
●車の改造における「ツライチ」という表現を、公式の場で初めて用いたのは雑誌「ヤングオート」である可能性が高い。
●当時のヤングオート編集部員の証言によれば、1991年2月号(!)の表紙の車として掲載された、ロングノーズの910ブルーバードのオーナーが、「オーバーフェンダーから引っ張りタイヤ、ホイールまでの一連の流れが線でつながっている」という意味で、ツライチという言葉を使っているという。
●「当時はノーサス・ラバーなしの福岡仕様(シンプルな仕様だけど色がハデ)が流行っていた時代です。その少し前から福岡ではツライチの概念はあったようですが、言葉として定着したのは、多分それからだと思います」
(元ヤングオート編集部員・G氏)
元祖的な王道ツライチ
厳密なツライチなら、車検には通らない可能性が高い
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「車検に通るようにホイールをツライチにする」っていうのは、まず無理な話です。
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ハミ出ないギリギリの、元祖ツライチなら問題ないのでは?
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てっぺんの部分がツライチだとすると、車検で問われるこの範囲を、フェンダー内に収めることは無理です。
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タイヤ&ホイールには少なからずキャンバー角が付いていますから、下に行くほど外に出ることになります。
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ツライチとは、ホイールとかタイヤの上部をギリギリまで出すことを指しているから……
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それより下部のリムは、ハミ出てしまうってことです。
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でも、もしキャンバー角がゼロで、まっすぐ突っ立っているとしたら?
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そういう車種だったとしても、厳しいと思います。最近の車のボディ形状は、下にいくほどバンパー形状を絞っていたりするので。
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なるほど。まあ、どうせほとんどの車種には純正でキャンバー角は付いているしなァ。
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そうですね。車検対応のスタイルでタイヤ&ホイールを履くっていうことは、現実的には(ツライチではなく)ツラウチになります。
この範囲がフェンダー内に収まっていないと車検はNG
✔ 車検の問題は「ツライチと車検。合法と非合法の境界線」参照。
ツライチはカッコいいけど、乗り心地が犠牲になる。干渉リスクも大
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スパイスの場合だと、「ツライチにしたい」と言うお客さんは、どこでフェンダーと揃えたいと言ってくるのでしょうか?
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基本的にはリムですよね。……アウトリップみたいなスタイルまでやるのは少数です。あそこまでいくと、ハミタイなんで。
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車検に通らない以外にもリスクがある?
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リムを外に出すということは、ホイールは傷付きやすいし、うかつに人も乗せられません。
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沈み込んだら当たるから……。
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そうですね。だから、そもそもストロークしないガチガチの足回りにして、当たらないようにセッティングしていたりするんですよ。
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ストロークしないって、どうやって?
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バンプラバーが入っている部分に、ゴム板とかブッシュみたいなものを足して、わざとバンプタッチさせて、それ以上足回りが沈み込まないようにしたりとか。
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ツライチを守るために意地でも動きを止める、みたいな感じですね。
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フタのないジュースは飲めませんよ。
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なんのこと?
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足回りが衝撃を吸収できないから、路面からの突き上げでジュースもこぼれてしまいます。ジュースはフタ付きを買わないといけません。
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……それが究極のツライチの世界。
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セダンなど四輪独立式の足回りは、ストローク時にキャンバー角が付きます。ホイールの頂点が内側にかわしてくれるから、ツライチも狙いやすいんですけどね。
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しかし、一般的なトーションビーム式の足回りでは無理なんです。しかもトーションビーム式は、(ラテラルロッドも付いていないので)横方向の支えがない。横には、けっこう動くんです。
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そういう理由でも、ホイールがツライチだと干渉してしまいますよ。
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カッコいいけど、実用性の面では苦しい。
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普段から人を乗せるとすれば……足回りをガチガチにしてストロークを止めるのは、無理がありますよね。
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スパイスは、一般街乗りユーザーが多いプロショップですけど、どうしているんでしょうか?
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乗り心地を犠牲にするレベルまでは、あまりやらないですね。
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ジュースくらい普通に飲みたいですよね、やはり。
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バネをガチガチに固くして、とかバンプタッチさせて無理矢理止めて……とかっていう足回りのセッティングだと、どうしても乗っていて苦になります。
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確かにね。
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で、セカンドカーを用意して、けっきょく乗るのはそっちばかりになってしまったり……。
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もったいないですね。
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乗り心地も考えると、「ツライチよりも、無理しない範囲で外に近づける」ぐらいの履き方がオススメです。
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なるほどね。
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それから、タイヤを引っ張らないでツライチに近づけるのも無理があります。タイヤがフェンダーに当たってしまいます。
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ツライチと引っ張りタイヤ事実上セットですね。
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そうなんです。しかし、極端に引っ張ることにはリスクも出てきます。そのあたりを許容できる人ならいいんですけどね。
通常は、車高を落とした状態でのストローク量を確保するためにバンプラバーをカットしたりするが、ツライチだとそもそもストロークが敵になる。
セダンや30アルファードのような四輪独立式は、まだツライチを狙いやすい。
✔ 足回りの構造上の違いは「ツライチにできる足回りと、できない足回りの違い」参照。
✔ 引っ張りタイヤの善し悪しについては「「引っ張りタイヤのリスクマネージメント」参照。
では、ホイールメーカー推奨サイズでいいのか?
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ホイールマッチングの基準になるのは、ホイールメーカーが公開している車種別のマッチングデータですよね。
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基準としてはそうですが、万人を想定して出している「安パイなサイズ」なので、当然ツラは引っ込みます。
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それってどの位?
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車種によっては例えば、「後から15ミリとか20ミリのスペーサーを足せるくらい」、引っ込んでいるケースもあります。
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……それだと、そもそものホイールサイズがちょっと引っ込み過ぎですね。
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だから、プロショップでは、メーカー推奨サイズとツライチの間で、いいところを狙っていくわけですね。
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その計算方法は下記の記事でやりました。
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ただし、フェンダーから糸を垂らして計算すれば、確かにリムはその位置にくるからツライチにはなるんですけど、タイヤもすぐ近くにきますよね。
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両者はくっついているのでトーゼンですね。
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そうすると、タイヤがフェンダー折り返しのツメに干渉してしまいます。
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ここで、ツメを切る人もいれば残したい人もいる。
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そこも、ツライチの分岐点ですね。
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というわけでツライチはカッコいいけど、現実的にはなかなか難しい面もあります。
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万人向けのホイールの履き方とは言えませんので。
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そうですね。無理しない範囲で、「ツライチに近づける」というのが、現実的なホイールセッティングではないでしょうか。
具体的なツライチの狙い方は、「ツライチオフセットの計算方法」参照。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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