IG電源(イグニッション電源)をヒューズから取る場合の、要注意点!╱後編
ヒューズからIG電源(イグニッション電源)を取るとき特有の注意点について、ここで深堀り。少々マニアックだが、IG電源への理解が深まる。また「問題が起こりそうなヒューズからIG電源(信号)を取ってもいいのか・ダメなのか」の、テスターでの確認方法も解説。
ワイパーやウォッシャーのIG電源ヒューズは、事情が特殊…?
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「IG電源(イグニッション電源)をヒューズから取る場合の、要注意点!」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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前回は、ワイパーのヒューズから(信号として)IG電源を取ると「エンジンオフになっても、すぐにはIG電源オフとはならない車種がある」という話をしました。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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それにしても、なぜ「ワイパーのIG電源ヒューズ」だとそういう問題が起こるのでしょうか?
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「ウォッシャーのヒューズ」にも同じことが言えます。
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ムムム。……どっちも狙い目のIG電源ヒューズなのに。
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というのもフロントワイパー・リアワイパー・ウォッシャーあたりのヒューズは、もっと電源側の根元をたどると、同じIG電源の回路であったりするんですね。
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おおもとが同じ……?
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ヒューズはそれぞれが分かれていても、もっと電源側(バッテリー側)に近いところでは、つながっていたりするってことです。
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おおもとはひとつってこと?
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いいえ。IG電源回路は、①②③……みたいな感じで何系統かあるんですが、ワイパーやウォッシャーは電力も大きいので、他の電装品とは分けて、専用のIG電源回路が割り当てられていたりします。
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ワイパーやウォッシャーは、同じグループだったりするのね。
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このときに同じグループ内に、他の電装品がいなかったとしましょう。
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フムフム。
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そうすると「ワイパーもウォッシャーも使わない場合」は、回路全体の負荷がゼロだったことになります。
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「回路全体、お休みでしたぁ」みたいな感じか。
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……そういう場合に、エンジンオフになっても電気が残ってしまっていて「放電するのに時間がかかる」というようなイメージです。
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それでスパっと電源が落ちないのか。
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そうなんです。しかし、もしも同じIG電源回路グループ内に、ECUなどがつながっていれば負荷ゼロとはならないので、ワイパーやウォッシャーがお休みだったとしても、今回のような症状は出ません。
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つまり、IG電源回路のおおもとがどうなっているかで、症状が出る車種と出ない車種があるんだ。
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ただ、これは車両配線図を見ないと判断できません。
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つまり、一般の人には分からない……。
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そうなんです。
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……だとすると、無難に行くなら、そのヒューズは避けるしかないって話よね。
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メイン電源用ではなく、信号としてIG電源を取るならば「ワイパーやウォッシャーのヒューズ」は避けるのが無難です。
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メインの電源用に、IG電源を取るなら関係ない?
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はい。その場合は、後付けする電装品自体が、そのIG電源回路にとっての負荷になるので、ここで問題にしたような現象は起こりません。
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そういうことかー。
ワイパーのIG電源ヒューズにテスターを当てて調べる
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どうしてもワイパーやウォッシャーのヒューズからIG電源を(信号として)取りたいときには、テスターで確認する方法があります。
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今回の話って、テスターで調べて分かるものなの?
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分かりますよ。まず、エンジンオンの状態でワイパー(あるいはウォッシャー)のヒューズにテスターを当てます。
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エンジンオン状態なら当然反応しますね。
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そのままエンジンをオフにする。このときの、テスターの反応に注目します。
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ほう。
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テスターで調べて、エンジン停止時に「じわ~っと電圧が下がっていく」挙動を示すなら、信号として取るのは止めましょう。
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じわ~っとって、どのくらいのイメージですか?
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ザックリですけど10秒ぐらいかけて電圧が落ちていくようなイメージです。
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電圧が測れるサーキットテスターなら、数値に表れるのでしょうか?
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そうですね。サーキットテスターは「電圧が0Vに向かって少しずつ落ちていく」ところが数値で確認できるので、分かりやすいです。
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テスターで測ったときに、すぐにテスターの反応が消えるとしたら…?
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そのヒューズから信号としてIG電源を取ったとしても、問題はありません。
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ナルホド―。
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ちなみに今回のような症状は、IG電源ヒューズ特有の話で、ACC電源ヒューズで起こることは考えにくいです。
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それはなぜ?
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ACC電源の場合は、おおともは一系統になっている車種がほとんどと思われるためです。
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フムフム。
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そこにはナビなどの常用する電装品もつながっているので、回路全体で見たときには負荷ゼロのままエンジン停止になるようなことが起こらないんです。
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なるほどね。ちょっとマニアックな話題だったけど、勉強になりました~。
※簡易的な車用の検電テスターだとしても「音と光の反応が次第に弱くなっていく」という挙動が出るはずだが、モノによっては明確には分かりにくいかも。
ACC電源とIG電源では取り出すにあたってのリスクの違いもあります。そのあたりは、DIYラボ〈動画部〉がYouTubeで解説しています。
DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。配線図大好き。●コムエンタープライズ TEL
079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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