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HIDフォグランプは車検に通るの?
HIDフォグランプが車検に通るかどうかは「条件次第」。例えば平成18年1月1日以降の車には上限の明るさの規定がないが、同時に「他の交通の妨げにならないこと」という保安基準の定めがある。フォグHIDで問題になる可能性が高い、上方散乱光の調べ方も解説。
フォグランプの明るさに上限ルールはあるのか?
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フォグランプにHIDバルブを入れても、車検には通るのでしょうか?
●レポーター:イルミちゃん
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これは条件次第ですね。HIDだとシビアな面があります。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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HIDだと明るすぎて車検に落ちる……とか?
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明るさについては、平成18年1月1日以降の車には上限の規定はないです。
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今は……ということは、昔はあったんですね?
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平成17年12月31日までの車は、「フォグランプの光度は1万カンデラ以下」という規定がありますね。
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1万カンデラと言われてもよく分かりませんが、フォグにHIDを入れたら、1万カンデラ越えになってしまう?
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灯体(ランプ本体)が大きい場合は、けっこう越えるケースがあります。
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灯体の大きさと明るさって、関係があるんですか?
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ありますよ。カンデラはルーメンとは違って、実際に灯体に収めた上での明るさ。ゆえに灯体によって変化します。
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そういうことかー。
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今どきのフォグランプの灯体は、だいたい90Φサイズが主流になっています。けれど以前はもっと大きくて、110Φなどが多かったんですよ。
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フォグランプが大きいと、同じHIDバルブでも明るくなるんですか?
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ランプ自体が大きいと、それだけバルブの光をリフレクターにぶつけられる。結果、路面照射に使える光量が増えて明るくなります。
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明るくなるのはいいことだけど、昔の車には明るさの上限が設定されているわけだから……
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例えば大きめのフォグランプに、35WのHIDバルブなどを入れると、1万カンデラを越えるケースはある。そこは注意が必要です。
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今の車はフォグランプが小さいし、そもそも明るさの上限も撤廃されているんですね。
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そうなんです。
だからカンデラを気にする必要はないんですが…… -
では! HIDフォグランプで、どんなに明るくしても大丈夫ということ?
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それはちょっと違うかなー。
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え!?
だって、上限はないんですよね? -
今は数値による規定こそありませんが、「他の交通の妨げにならないこと」という点が、保安基準で定められていますので。
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……なんだか抽象的なルールですねぇ。
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それだけに、ココが一番問題です。
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HIDフォグランプが、他の交通を妨げる可能性があると?
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フォグをHID化すると、どうしても上方散乱光が出やすくなります。これが、対向車にパッシングされるようになったりする原因ですね。
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パッシングされるのは……他の交通の妨げ認定みたいなものですね。
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そういう状態は、車検に通らないと思った方がいいです。最終的な判断は検査官に委ねられていますけれど。
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つまり焦点は、対向車に迷惑をかけないこと、か。
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そうです。対向車等に対して眩しい光が出ていなければ、HIDフォグランプでも基本的には車検に通ると思います。
昔の大きいH11フォグなどは光量が出やすい
上方向にも眩しい光が飛んでしまっている状態
HID化して上方散乱光が出ていないか調べる方法
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非常に気になる上方散乱光。コレが出ているかどうかを、事前に調べる方法についてです。
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2メーターぐらい先の壁に向かって、フォグランプを照射してみましょう。
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いわゆる壁ドン(※)ですね。壁がない人は……
(※)壁にライトの光をあてて配光を見ることを指す
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白っぽいボードなどでもOKです。
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そしてカットラインが出ているかどうか、見てみます。
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カットラインが出ていないと、車検には通らない?
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……と、規定されてはいませんが「カットラインがない」ということは「上方にまで光が飛んでしまっている」ということですので。
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なるほど。
そうなるのか。 -
カットラインまったくナシ。まるで懐中電灯のように、丸い光が飛んでいるHIDフォグランプだったとしたら、車検に通すのは難しいでしょうね。
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あるいは、カットラインは出ているけれど、鍋ぶたみたいな形状だったとしたら……
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鍋ぶた?
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基本は水平なラインが出ているけれど、真ん中付近だけ上に光が出っ張っているとか……そんな感じのカットラインだったとしたら……
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部分的にカットラインが崩れている状態ですね。
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そういう場合は、光軸を少し下げてみれば、問題ない状態にできるかな、とは思います。
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そっか。光軸調整で下向きにすれば、対向車に眩しい光を減らせるんだ。
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ただし、上方散乱光を下げるために光軸を下向きにすれば、一番明るい部分もいっしょに下がる。つまり自分が見たときの明るさは、調整前より暗くなってしまいます。
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とはいえ対向車にパッシングされるようなHIDフォグなら、光軸を下げるしかないってことですよね〜。
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そういうことです。この場合の光軸調整は、対処療法に過ぎませんね。
HIDフォグを壁に照射した状態
そもそもカットラインがないケースもあり得る
部分的に乱れたカットライン
光軸を下げ気味にして対処
具体的な作業方法は、「フォグランプ光軸調整のやり方」を参照。
カットラインの精度(配光性能)は製品の品質次第
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カットラインのキレイさというのは、製品側の問題ですよね?
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そうですね。配光性能の問題なので、光軸調整では本質的にはどうにもなりません。
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ところでカットラインがビシっと出ないのは、ナゼなのでしょうか?
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そもそもまず、純正の電球の光源位置(フィラメント)からのズレの問題があります。
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純正電球の、光源位置のズレというと……
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例えば社外品のフォグバルブは、H8/11/16兼用として売られているバルブが多いですが……
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3種類のどのバルブタイプでも付くんですよね。
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バルブの取り付けという面では、互換性がある作り。でも厳密に言うと、純正バルブの光源位置(フィラメント位置)自体が、H11とH8では違います。H16はHID化は不可なので、ここでは除外しますが。
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それは純正の電球の話ですね。
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そうです。だから、社外品のバルブを作るにあたっては、H8光源寄り、H11光源寄り、両者の中間あたり……と、どれかで落とし込むしかないわけです。
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なるほど。
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つまりH11で追い込んだHIDバルブなら、H8に入れたら(厳密には)光源はズレます。
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光源がズレると、どうなるんですか?
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カットラインが甘くなります。H11でしっかりカットラインが出ていたのに、H8に入れるとぼやけたりする。
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でもそれを言い出したら、LEDフォグランプバルブでも同じですよね? IPFのLEDバルブだって、H8/11/16兼用の作りじゃないですか。
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そうなんですけど、LEDフォグはHIDフォグほどは明るくないので、その誤差のせいでカットラインが大きく崩れるという心配はないんです。
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そういうことか。
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HIDだと光量のパワーがあるので、よりシビアなんです。
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配光性能の低いHIDバルブをフォグに入れたら、NGの可能性が高いってわけですね。
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光量を抑えたフォグランプ用のHID(25W)などで、しっかりカットラインが出ていれば、フォグHIDでも車検には通ると思いますよ。
H11の純正バルブ
H8の純正バルブ
HIDフォグは6000ケルビン台が無難
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ケルビン数は、白色範囲の上限に収まっている必要がありますが……
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7000ケルビン付近がその目安、でしたよね。
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そうなんですけど……LEDと違って、HIDはいろいろな光の掛け合わせで色を作っているため、色の出方にバラつきがあります。
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結果的に、HIDだと7000ケルビンは車検NGになるケースも出てきます。
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IPFのLEDバルブには、7000ケルビンもありますよね?(※H11ヘッドライト用バルブの場合)
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LEDでは7000ケルビンもありますが、HIDは6850ケルビンまでに抑えています。これは、HIDの色の出方を考えた上でのマージンです。
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なるほど〜。HIDフォグの人は「ケルビン数選び」でも、一段慎重になったほうが良さそうですね。
ガスを混ぜて色を作っているHID
フォグランプをLED化するときの注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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