電装DIYの知識
電気のショートとは何か? 車いじりで起こる原因と対策
「ショートする」。車に限らず電気系をいじっているとよく聞くフレーズだが、どういうことなのかをおさらいしよう。改めてショートとは何なのか。その原因を、よくある具体例とともに検証。どうすれば防げるのかがわかる。
ショートする、ってどういう意味?
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今日は「ショート」を解説します。よく電気が「ショートする」という表現を使いますよね。
●アドバイザー:エーモン 中塚研究員
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縁起の悪い話題だなぁ……。
●レポーター:イルミちゃん
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しかし車のDIYにとって、非常に重要な問題ですので。
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そういえば「ショートする」って、言葉はしばしば耳にしますが、「どういうことなのか、正確にはよく知らない」という人は多そうですね。
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そうなんです。
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いっぱい光モノを付けている車に対して「ショートしそう!」とか、イメージで語る人も多いような。
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そもそもショートは、「電装品を介さずに電気が流れること」ですので、光モノを付けていなくても起こります。
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え!?
いじっていなくてもショートするって意味ですか? -
そうです。車で一番分かりやすい例をあげると、バッテリーのプラスとマイナスを直接つないだら、それがショートです。(※危険なので絶対にやってはいけません)
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わざわざ、そんなことをする人もいないと思われますが……
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でも金属製の工具などが両方の端子に同時に接触して、意図せずにプラスとマイナスをつなぐ状態が生まれることならあります。
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このまま接触させたら、ショートです(↑)
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ど、どうなるんですか?
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一瞬でも、過電流が流れて火花が飛びます。危険だし、バッテリーの破損にもつながります。
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ウッ。
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さらに、継続的なショート状態が続いたら、発火します。
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縁起悪いどころじゃなく、コワイ話題だった。
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ちなみにバッテリー交換時など、金属工具の接触が危険なので、エーモンでは「電気を通さない素材のレンチ」も開発しているんですよ〜(↓)
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これは樹脂コーティングがしてあって、電気が流れないのです。
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要するに、電気が流れる素材でバッテリーのプラスとマイナスを橋渡ししたらショートするんだ。
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そういうことですね。それが配線コードなら、一瞬で燃えてしまいます。
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……ひええ。
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ですが、電源(バッテリー)のプラスとマイナスの間に、電装品があれば、そこで電気が消費されますので、ショートは起きません。
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たかがLED1個あるかないかで……この差はなんなんでしょう?
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プラスとマイナスの間になにも電装品がないと、なんの抵抗もない。すると電気は流れるだけ流れる……という理屈なんです。
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抵抗というのは……すなわち電装品と置き換えて考えればいいんですね。
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そうですね。電装品を介さずに、プラスとマイナスを直結させるのがショートです。つまり、何もないとショートするんです。
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ふむ。
それは分かりましたけど…… -
まだ納得いかないようですね。
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だって、わざわざプラスとマイナスを直結するなんて子供じみたマネをする人はほとんどいないはずなのに、現実にはショートはよく起こってますよね?
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「車をいじっていたら、ショートしてヒューズが飛んだ〜」とかね。
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なぜなんだろう?
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それはですね、知らず知らずのうちに、バッテリーのプラスとマイナスを直結するのと同じことをやってしまっているから……なんですね。
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……どういうこと?
エーモンの ショート防止2wayレンチ
これなら、エーモンLEDの消費電力に合わせた僅かな電流しか流れない。
✔ 「ショート」とは、抵抗なしでそのまま電源のプラスとマイナスをつなぐこと。
※オームの法則を用いると、抵抗ゼロで無限大の電気が流れる理屈を説明できるが、初心者には分かりにくいので、そういう説明はここではしません。
車内でショートを起こす原因はいろいろある
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さきほどは(よりわかりやすいので)バッテリーを例に出しましたが、現実のショートはエンジンルーム以外でも起こりますよね。
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例えばどんな場面があるか、考えてみましょう。
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切れた電球(ルームランプ)を交換する、というだけの作業でも、ミスをすればショートは起きます。
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「まさか!?」という感じがしますけれど……
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ありがちなのは、舟形電球を外そうとしているシーン(↓)
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ドライバーでこじって外そうとしていて、プラスとマイナスの電極に両方同時に触れてしまうとショートします。
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ずいぶんアッサリと、ショートが起きてしまう。
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先ほど言った通り、「電装品を介さずにプラスとマイナスをつなげたらショート」ですので……
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この場合は、電球が電装品ですね。
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そうです。しかし、プラスの電極とマイナスの電極を、ドライバーで橋渡ししてしまったら、「電球を介さずにプラスとマイナスをつなげたのと同じ」です。
電球交換の作業ミス
電源線を車体金属に当てる
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ヒューズや配線から電源を取り出す、というのはよく行う作業ですが、取り出した電源線の扱いは注意が必要です。
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この(↑)電源線の先端を、車体金属に当てたら、ショートします。
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なぜそうなるの?
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車体金属は、バッテリーのマイナス端子とつながっているからです。
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本来であれば、プラス線は電装品につなぎ、電装品のマイナス線を、車体金属につなげますよね。
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これがボディアースする、ということです。
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ここから先は車体金属がマイナス線代わりになって、バッテリーマイナスまで電気を流しているんですよね。
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ところが電装品につなぐ前のプラス線は、抵抗がない状態。なので、マイナスにつないだ瞬間にショートします。
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わざわざこのままマイナスにつないだりしないよ、って思うかもですが……、
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車体金属=マイナス線ですので。
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金属に当てたらマズイ理由が分かりますね。
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ヒューズから電源を取った場合も、この電源線を車体金属に当てないように注意が必要ですが……
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エーモンのヒューズ電源の先には、ギボシ端子メスが付いているのがポイント(↓)
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ギボシ端子メスは、スリーブが大きくて端子全体を覆っていますよね。
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フムフム。
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だから、車体金属に端子が直接触れる心配はないんです。
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もしこれがオス端子だったら……
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電装品につなぐ前は、コロンって放置してあったりする。で、車体金属に当てた瞬間に、ショートです。
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あとは、こんなケース(↓)もあります。
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プラス線とマイナス線が一体化したダブルコードなどを、通電している状態でまとめて切断したらショートします。
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え……!? 配線を切ったら、むしろ電気が流れないはずなのでは。
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そうではなくて、切る寸前に、刃を介してプラスとマイナスを直結した状態になるので、その瞬間にショートしているんです。
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切り終わったときには……
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おそらくは、電源元のヒューズが飛んでいるはずです。
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なるほど……ね。
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1本ずつ切ればショートは起きません。あるいはバッテリーのマイナス端子を外して作業していれば、そもそもショートは起きません。
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ココ大事ですね。
メモしておこうっと。 -
しかしながら、意図せずにプラスとマイナスを直結してしまうことは、主にDIY作業中のいろいろな場面でありがちなのです。
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ショートさせないように、注意しましょう〜。
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……というのはもちろん大切なんですが、ショートさせた時のために、ヒューズをかませておく、という点が一番重要です。
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なるほど。
この後「ヒューズをかませるって、なんのこと?」の記事につながるんですね〜。続けて読むと、わかりやすい♫
✔ 車は、車体金属をマイナス線代わりに使っている
写真はナビのステーだが、車体金属とつながっていれば同じこと。
※電源の取り方については、「ACC電源をヒューズから取り出す方法」参照。
プラスとマイナスの線を同時に切る
配線の切断シーン
DIY Laboアドバイザー:中塚雅彦
カーDIY用品メーカー・エーモン広報担当で、エーモンの顔と言える人物。端子や配線コードの仕様など細かいところまで深い知識を持っているので、DIYラボでは「電装DIYのきほん」に関する記事を担当。中塚ハカセ、とも呼ばれている。
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