足まわりコラム
車高を前後水平に調整するコツとは?
車高調で車高を調整しているうちに、前後・左右の車高がバラバラになってしまうことがある。このように前後の高さが違ってしまった車高を水平に調整するのはなかなかに難しいので、足まわりのプロにコツを取材した。
車高を水平にするのは意外と難しい?
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車高調の調整方法については、これまでにも何度か記事にしていますが……
●レポーター:イルミちゃん
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やり方だけ分かっていても、なかなか難しいのが前後水平に整える作業です。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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フロントとリアを同じ車高にする、という話ですね。
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今回のモデル車の50エスティマを例にして、説明していきましょう。
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今の状態だと……前下がりの車高になっている!?
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DIYで調整しているうちに、前後左右の車高がバラバラになり、分からなくなってしまったようです。
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それでスパイスに依頼が来たんですね。
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オーナーの希望は、「フロントは1センチ上げて、それに合わせて水平にしてほしい」というもの。
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なるほど、なるほど。
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フロントバンパーが低いので走りにくいみたいです。でも反対に、リアには下げ余地がある。リアはハンドルも切らないですしね。
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つまり調整次第で、今より実用的&カッコ良くもできるんですね!
サイドステップの地上高を基準にする方法
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現状の車高は前下がり。前後水平にするには、フロントは上げて、リアは下げればいいんですよね。
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そーなんですけど、それをヤミクモにやっても、なかなか水平な車高にはなりません。
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うーむ。確かに。
調整は、ジャッキアップした状態でするし。 -
だから、水平にしたい場合は、前後の車高の高さを測りながらやるのがオススメです。
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分かった!
前後のアーチの高さを測って揃えるんだ。 -
いいえ。アーチ高は、この場合はガイドにはなりません。フロントはタイヤを切るので、基本的にどの車もフロントのほうがタイヤハウスやフェンダーアーチの作りが大きくなっています。
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そっか。
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車高を水平にしたいなら、サイドステップが水平になるのが、横姿として一番自然に見えると思います。
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一般的にはフェンダーアーチとタイヤの隙間を見て、車高を決める人が多いと思うんですが……、
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しかし、フェンダーとタイヤの距離だけで前後の車高を揃えようとすれば、フロントのほうがかなり低い車高になってしまいます。
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アーチの大きさが、そもそも違うんですもんね。
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もっとも、前傾姿勢が好きという人はそれでもいいんですけどね。
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今回はあくまでも「水平」にこだわる場合の話なので……、
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それならば、サイドステップの前側と後ろ側の高さを測って、同じ位になるようにするといいです(※サイドステップの直線ライン上で!)
基準になるのはサイドステップの水平
サイドステップの前端と後端を測ってみる
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実際に、サイドステップの高さを測ってみましょう。まずは前側。
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サイドステップの前端の地上高が、13センチでした。
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続いてリア側を測ってみると……、
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こちらは、16.5センチあります。
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つまり今の車高は、前後で3.5センチも高低差があるんですね。
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見た目以上に違いがありますね。ダウンサスのローダウン量くらい、差があるということだ。
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そうなんですよ。
測ってみれば、それが分かります。 -
なるほどね〜。
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車高を調整するときって至近距離で見て車高を決める人が多いんですが、それをフロントとリアで別々にやっていたら、前後の車高は合わないですね。
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まあ、車庫で車高調整していたら、離れたところから車の横姿を見るのも難しいでしょうしね。
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そういう場合にも、サイドステップを測る方法はオススメです。
調整量が決まっている場合はアーチ高を目安にする
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ところで今回の50エスティマは、「水平にしたい」依頼の前に、まず「フロントを1センチ上げたい」という希望があります。
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そうでしたね。
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で、今の車高よりきっちり1センチ上げたことを確認するには、フェンダーアーチの高さが役立ちます。
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ほほう。
この場面ではアーチ高が役に立つのか。 -
そうなんです。ちなみに、フェンダーアーチの高さを測るときは、僕の場合は、下のリムからフェンダーアーチを測ります。
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なんだか中途半端な距離を測っているように見えるんですが……なぜ地面から測らないの?
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この場合はそれでもいいんですが、それだとタイヤの空気圧などの影響も受けるので、(左右の差を見たいときなどは)下リムからがいいんです。
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あー、なるほど。
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かといって上のリムからアーチまでだと距離が短いから、誤差が出やすいかなーと。
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細かいところに技がありますね〜。
下側のリムから測って、約58.5センチ。
車高調整をするときの順番にも注意
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今回は、「フロントを1センチ上げたい」というリクエストが決まっていますから、フロントから先に上げるのがいいですね。
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うーん。
リアからやったほうがいいかなぁ。 -
え!? それはなぜ?
フロントの上げ幅は決まっているんだから、そこを決めて、リアを合わせればいいのに! -
でもフロントを1センチ先に上げて、そのあとリア車高を下げると、フロントの上げ幅が1センチではなくなる可能性があるのです。
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ムムム。
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今回のように、前後でけっこう車高差がある場合はなおさらですね。おそらくリアは、3センチ程度ダウンさせることになります。
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すると、どうなるの?
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先にフロント車高を決めたつもりが、リアを3〜4センチも下げたら、フロント車高も変わってしまいます(少し下がる)
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な、なるほどね。
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リアはあまり動かさない、というのであればそこまで気にしなくて大丈夫ですけどね。
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そういうことまで考えながらやっていたのか〜。車高の水平調整も、奥が深いな。
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必ずリアからやるという決まりではなく、ケースバイケースですけれど。
リア車高のほうが先に限界に当たるケースが多い
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今回のケースでは、まずリア車高を落とします。
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いざ、やってみたら、車高調の限界で2センチしか落とせませんでした。そこで、リアはロックシート抜きで落としきります。
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ロックシート抜きは、以前に教わった技ですね〜。
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結果としてリアは2.5センチほど追加で落として、限界を迎えました。
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そしてフロントへ。
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フロント車高は、リア車高を下げた時点で、最初より5ミリほど低くなりましたので、結果的に15ミリ上げる調整を行いました。
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やっぱりリアを先にやって正解なんだ。
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15ミリ上げた結果として、「最初のアーチ高より10ミリ高くなっている」ということですね。
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リアはすでに限界車高なのだから、「できることはやった」という感じですね。
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それでは、もう一度サイドステップの高さを測ってみましょう。
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おー。だいぶ差がなくなりましたね。1センチ以内の差だ。
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もう少しリアが落ちれば水平ですが、リアはすでにロックシートまで抜いてますので。
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少し離れてサイドステップを見てみると……ほぼ水平に見えます。
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サイドステップが水平になれば、車全体の横姿は、きれいな水平に見えますよ。
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最後に、調整前の状態と比較してみましょう。
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明らかに、キレイな水平車高になりましたね〜!
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これでもフロント車高は1センチ上げているから、走りやすさも、調整後のほうがアップしている、というのもポイントですね。
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実用性重視の面も、スパイスらしい仕上がりと言えます。
具体的なリア車高の調整方法は、「トーションビーム式(リア)の車高調整方法」参照。
詳しくは、「車高調のロックシート抜きで、限界車高が数ミリ下がる」参照。
フロント車高の調整方法は、「車高調の正しい調整方法」参照。
下側のリムから測って、約59.5センチ。
フロント約13センチ
リア14センチ弱
調整前の車高
サイドステップの前後高さの差は3.5センチ。
調整後の車高
サイドステップの前後高さの差は1センチ未満。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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