リレーと整流ダイオードの疑問
リレーの逆起電力対策として整流ダイオードを入れる理由と、その必要性

リレーを使うときに整流ダイオードを入れる理由、または入れなくても大丈夫な理由について。リレーの電流が逆流することがあるのでその対策として整流ダイオードを入れておく…という話を聞いたことはあるものの、実際にはどうしよう? と迷える人向けの解説。
一般的な車の電装DIYでリレーを使うときも整流ダイオードが必要なのか?
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今日は読者の方から頂いた、鋭い質問に答えていきたいと思います。
●DIYラボ 本館:イルミちゃん
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実は「リレーの逆起電流」の話は、水面下ではときどき出てきてはいるんですが……
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そうですね。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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しかしDIYラボ内で連載していた服部研究員のリレー講習では、この話が出てきたことがありませんね?
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はい。その理由も含めて今日は解説したいと思います。
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まずリレーの逆起電流とか逆起電圧とか言われても、なんの話なのか分からない人がほとんどだと思うので、そこから説明すると……
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カンタンに説明すると、リレーは「コイル」と「接点」で構成されています。
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コイルに電気が流れたら、接点が切り替わる。それがリレーです。
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……で、コイルの特性として、最初に「オン」になるときには大きな電流を必要とします。
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フムフム。
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逆に「オフ」になるときに、今度はそれまでとは逆の方向に電圧がかかるんですよ。
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ん…?
どういうこと? -
例えばリレーを使ってこのような回路を組んでいたとしましょう。
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リレーのマイナス側の先にスイッチを入れておいて、そのスイッチによってリレーを制御していたとします。
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この場合は、スイッチのオンオフに連動して、接点が切り替わる。
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車の電装の場合でいくと通常だったらプラス側が+12V、マイナス側が0Vなんですが……
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しかしリレーのコイルの特性上、オフになっても電流を流し続けようとします。そのためスイッチオフの瞬間に、逆向きに高い電圧が発生するんですよ。
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逆向きっていうのがよく分からないんですが?
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今回の例でいうと0Vだったマイナス側の先に、プラス方向の電圧がかかるってことです。
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マイナス側の電圧が高くなったら電気が逆流するってこと?
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そうなんです。逆起電圧がかかることで、結果的に電流が流れるので逆起電流とも言ったりしますね。
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なんだか周辺の電装品が壊れそうな……
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今回の回路の例でいうと、リレーをマイナスコントロールしているのでマイナス側の先につながっているスイッチにその逆起電圧がかかるわけです。
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スイッチが壊れる???
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心配すべき点はそういうことなんですが、しかし実際に、一般的なスイッチがそれで壊れるかというと、普通のスイッチはそんなことで壊れたりはしないんですよ。
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ホー。
そうなんだ。 -
よっぽど繊細なスイッチなら話は別ですが……車の電装DIYで使うようなスイッチは容量も大きくて丈夫なので。
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でも先につながっているモノによっては壊れる……と?
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現実的にこの逆起電圧(逆起電流)で壊れてしまうパターンが多いのは、トランジスタを用いて回路を作っているケースです。
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ふむ……。え~っと、トランジスタってなんだっけ?
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トランジスタも電気の流れをコントロールする部品です。例えばコムエンタープライズの電装品の内部回路では、トランジスタなどが使われているんですね。
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フムフム。
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で、トランジスタの出力を用いて、外付けのリレーをマイナスコントロールする回路っていうのも、ときどき出てきます。
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つまりさっきの例に出てきたスイッチの代わりが、トランジスタってこと?
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そういうことですね。しかしスイッチと違ってトランジスタは逆方向からの電気に弱いので壊れてしまったりするんです。
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つまりコムエンタープライズの電装品が壊れるッ!!
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しかし現実にはそんなことにならないように、電装品側の内部に保護回路を入れてあります。
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あ、そうなのね?
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もしも保護回路がなかったとしたら、このパターンで電装品側が壊れる可能性がありますから、リレー側に保護回路を入れておくといいのです。
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それが整流ダイオードってことか。
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そうなんです。整流ダイオードを入れてこのような保護回路を設けます。
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こうしておくとマイナス側にプラス方向の電圧がかかっても、ダイオードを通って電気が逃げてくれます。なので、マイナスの先まで影響が行かない……というようなイメージです。
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プラス側に戻してあげる、みたいな感じか。
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ちなみにプラス側で制御(オンオフ)しているプラスコントロールの回路だとしても、整流ダイオードの入れ方は同じことです。
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プラス側で制御している場合は、プラス側に負荷がいくってこと?
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そうなりますね。その場合はプラス側にそれまでの+12Vとは逆向きの、0V方向の電圧がかかります。
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リレーのコイルのプラス側っていうと、一般的な車の電装DIYだと車両から電源や信号を取ることが多いですよねぇ?
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そうですね。イルミ電源やアクセサリー電源をリレーのコイルに入れて、マイナス側はボディアース…とかっていう組み方が多いですよね。
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その場合は車両側のイルミ電源線に対して、逆向きの電圧がかかるってことに……
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そうですね。イルミ電源に対して12Vではなくマイナス方向……0Vよりも低い電圧がかかることになります。
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それは大丈夫なのでしょうか?
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この場合はイルミの電源ラインには他にも負荷(電装品)がつながっていて電気が逃げてくれますから、問題ないんですよ。
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あー、そうなんだ。
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だからこれまでのいろいろなリレーの使い方の説明の中で、この保護回路の話が出てこなかったのです。
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そういうことね。
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それに、整流ダイオードを入れることにデメリットもありますので。
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ほお。
デメリットとは? -
リレーのコイルは本来は極性が無いものなのに、整流ダイオードを入れることで、極性が出てくるわけですよ。
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あ、そっか。
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この保護回路を入れた以上は、マイナス側にプラスをつないで、プラス側にマイナスをつないだりしてしまうと、今度はこの整流ダイオードが壊れます。
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リレーの取り扱いの注意点が増えてしまう。
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厳密に考えるなら確かに整流ダイオードを入れておいたほうが、いいことはいいのですが……しかし、一般的な車の電装DIYでのリレーの使い方だと、この現象によって壊れるモノがそうそうないんですよ。
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質問者のくろまめサンが想定しているリレーの使い方は、外付けフォグとか、内装のLED照明とか、バッ直などですが……
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ならばこの対策は基本的に不要と考えていいと思います。
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では車の電装DIYでも入れたほうがいい場面があるとしたら……?
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電装ユニットのトランジスタを保護する目的で入れることが一番多いのではないでしょうか。例えばセキュリティの取り付けで、外付けのリレーがからんでくるような場面とか。
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なるほど、なるほど。
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しかしそういった電装品を開発する側からすると、リレーの逆起電圧(逆起電流)によってトランジスタが壊れる危険があるケースでは、電装品側に保護回路を入れたりするので……この話も必須とまでは言えませんね。
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コムエンタープライズ製品なら必要ないとしても、他の電装品側の回路設計がどうなっているかは分からないから、いちおう入れておくなら有効かな?
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そうですね。そういう場合は入れておくとより安心ですね。
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少なくとも、くろまめサンの計画している用途とか、これまでDIYラボで出てきたようなリレーの使い方では必要ない……と言えそうです。
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はい。今までこの話をしなかったのは、そういう理由だったからなんです。
■ 質問
リレーを使う時に瞬間的に電流が逆流するとの理由で「対策として整流ダイオードを入れる」という様なネットの情報がありましたが、DIYラボ内ではその対策についての記事が見つからず、実際は無くても大丈夫なのでしょうか?
ちなみにエーモンのリレーを使って、外付けフォグや内装LED照明等、バッ直やリレー配線を組み合わせて取り付けたいと思っています。
質問者╱くろまめサン

基礎知識は「リレー内部のコイルと接点について理解を深めよう」などを参照。
スイッチで電装品を切り替えるリレー回路



リレーの使い方についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しているので、ぜひ見てね。

DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。配線図大好き。●コムエンタープライズ TEL
079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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