電位差とは? 電圧との違いはなに?
電位差(でんいさ)の意味がわからない、電圧ならわかるけど……という人は、実は半分わかっている。ここでは「電位差と電圧の違い」と「テスターは電位差を見ている」の意味するところを解説。ここがわかると、電気スキルが一段上がる。
電位差と電圧の違い
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テスターの使いこなしについては、これまでにいろいろ解説してきました。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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「テスター」というのは、検電テスターとかサーキットテスターとか。
●レポーター:イルミちゃん
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そうですね。で、それらのテスターを使いこなすという意味で知っておいてほしいのが今回の話。
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なんでしょう?
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それは「テスターは電位差を見ている」ということです。
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デ、デンイサ?
隊長、突然どした? -
電位差(でんいさ)という言葉は、ときどき出てくる電気用語ですよ。
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……そういえば聞いたことある気もする。
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そうですよね。
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難しそうだからスルーしていました。
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……。
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電圧なら知ってるけど、電位差とか難しいコト言われるとちょっと……
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電位差は、電圧と同じ意味です。……というか電圧って、電位差のことなんですよ。
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はあ!?
同じってどういうこと??? -
車のバッテリーの電圧は12Vですよね。
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でも正確には、マイナス側の0Vとプラス側の12Vがあって「12V分の差がある」から、電気が流れるんですよ。
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そうか。言われてみれば、12Vバッテリーといっても、マイナス側は0V……。
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その両者の差が「電位差」であり、車のバッテリーでいうと12Vなのです。
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落差があるから、電気が流れるみたいなハナシ?
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まさにそういうことです。電気はよく水に例えられますが、「電位」とは(イメージ的にとらえると)電気の高さのことです。
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電気にも高いとか低いとか、差があるんだ。
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だからこそ、両者をつなぐ道を作る(回路を作る)と、電気が流れるのです。
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ホホウ。なるほど。
確かに水に似ている。
テスターは電位差を見ている(測っている)
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検電テスターを使うときに、通常は、クリップ側をボディアースしますよね。
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これはなぜ、そうするのか考えてみましょう。
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う~ん……。
そういう決まりだから。 -
いや、ルールとはちょっと違う。だって、マイナス線を調べたいときは、逆にテスターに電源を取るでしょう?
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そういえば!
これはルール破りでは。 -
ルール破りではなく、これもテスターの使い方なのです。
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検電テスターは、なぜ、逆向きにするとマイナス線に反応するんだろう?
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なぜこういう使い方をするのか? それは最初に言った通り「テスターは電位差を見ている」からです。
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……隊長。
依然として、その言葉の意味が分かりません! -
通常の検電テスターの使い方だと、あらかじめ片側を0V(アース)につないでおいて、反対側を12Vの線に当てたとき、12V分の電位差を検知しています。
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電気が通っているから反応する、としか考えていなかったけど……アレは電位差に反応しているんだ。
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逆向きに使って12Vを取っておけば、0Vのマイナス線に反応する……これも「12V分の電位差に反応している」点で、同じことなんですよ。
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プラス線とマイナス線の、電圧の差を測っているわけですね。
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ハイ。テスターをアースした状態だと、基準は0V。この状態でマイナス線に当てても、「差」がないから反応しないんですよ。
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だから、普通の使い方だとマイナス線は検知できない。
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そうです。検電テスターを使うときは、「差」をつけないといけない。
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そういうことか〜。
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この点はサーキットテスターも同じですが、サーキットテスターならこの電位差を「数字」として見られます。
✔ マイナス線の調べ方については、「検電テスターでマイナス線を調べるときに便利なゼムクリップ」参照。
検出できる電位差の範囲(測定できる電圧)は、検電テスターの仕様による。
テスターは電位差を見ている、を知らないと誤解が生じる場面
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サーキットテスターには、赤と黒の2本の棒が付いています(↓)
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この両者の棒を当てた先の、電位差を見ているのです。
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ふむふむ。
2本の棒の電位差ってことね。 -
片方を12Vの電源線に、片方をアース線に当てると、約「12」という数字が出てきます。
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黒をアース・赤をプラスに当てると「12」と出ますし、反対に赤をアース、黒をプラスにあてると「−12」と出ますが、どっちにしても12Vの電位差を検出しているのは同じです。
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なるほど。
べつに逆に当ててもいいのか。 -
よくある例で、考えてみましょう。アース不良が起きて、そのアースポイントが問題ないのかを調べたい場合。
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ふむ。
アースポイントが悪いのはよくある話。 -
まず、サーキットテスターの片側を12Vの電源に当てます。ここでは分かりやすく、バッテリーのプラス端子に当てたとします。
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そのときに「12」あるいは棒の向きが逆で「−12」と電位差が表示されるなら、そのアースポイントは0Vです。
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ということは、どういうこと?
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0V=マイナス線ですから、「アースポイントとして使える」ことが分かります。
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じゃあ、もし、使えないアースポイントだとしたら?
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樹脂に囲まれた、電気の流れそうにないネジに当ててみましょう。
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「0」と出ました。
これも0V……? -
いいえ。このゼロは、0V(マイナス)ではありません。電気的にはどこにもつながっていない、「浮いている線」だということです。
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0と0Vは違うのか。
……なんか紛らわしい。 -
だって、今は片方を「12V」のバッテリープラス端子に当てているのです。もしもホンモノの「0V」なら、電位差は12V生じるのですから、「12」あるいは「−12」と出るはずではありませんか。
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おお、そういえば!
0Vなら、「0」と出るはずがない。 -
つまり、ここは車体金属とつながていない=アースポイントとしては使えない、ということです。
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そういうことか~。
やっと意味が分かりました。 -
テスターが測っているのは電位差。これが分かっていないと、「0」だったから「0V」という風にも勘違いしかねません。
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確かにそうだ。
ひとつ賢くなった気がします。 -
「テスターは電位差を見ている」という意識を持っていれば、テスターの使いこなしの幅が広がりますよ。
そして、反対側をアースポイントに当てる
DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。配線図大好き。●コムエンタープライズ TEL 079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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