検電テスターとサーキットテスターの使い分け
検電テスターよりもサーキットテスターの方が、テスターとして本格的。しかしサーキットテスターがあれば、検電テスターはいらないということにはならない。実際に両方を使い分けている、電装のプロに話を聞いた。
検電テスターのほうが便利なこともある
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簡易的な検電テスターに対して、本格的なサーキットテスター。両者の違いは以前に勉強しましたが……
●レポーター:イルミちゃん
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サーキットテスターを持っている人は、検電テスターはいらないのでしょうか?
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そんなことはないです。検電テスターは安いし、どっちにしても1本持っておくと便利です。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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サーキットテスターが手元にあっても?
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そうですね。
検電テスターのメリットもありますから。 -
ほう。
それってどんな場面のことですか? -
検電テスターは一瞬の信号を見つけやすい。その点が大きなメリットです。
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一瞬の信号ってなに?
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例えば、よくあるのが車のロック信号・アンロック信号を探すとき。
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ロック時、あるいはアンロック時に、一瞬しか電気が流れません。一瞬とは、1秒にも満たない「コンマ何秒」レベルのことです。
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確かに、検電テスターは反応しますが……サーキットテスターだとダメなの?
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サーキットテスターでも針や数字が一瞬上昇する、という意味では反応はしますけど、実際の作業上では分かりづらいんですよ。
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あー。
そうかもしれない。 -
こういう場面では、光だけでなく音(ブザー)も鳴ってくれるタイプの検電テスターが、一番やりやすいです。
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何かのアクション(動作)のタイミングで、一瞬だけ流れる「イベント信号」を調べるときは、検電テスターのほうが見やすいですよね。
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なるほど。
言われてみれば。 -
ただ、正確な電圧は分からないので、それが12Vであることが分かっている場合は、という前提ですけど。
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電圧や電流を測るならサーキットテスターの出番だけど、タイミングだけ調べるなら検電テスター、みたいな感じか。
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そういうことですね。
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サーキットテスターには、ブザーはないの?
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サーキットテスターにも付いていますが、導通確認のときにブザーが鳴るタイプが多いと思います。
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電圧計としてブザーが鳴るというのは、基本的にはないですね。なぜなら、何Vを測ろうとしているのかテスター側には分からないことなんで。
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そういえばそうだ。
別に、12V専用ではないし。 -
検電テスターの場合、車専用に設計されているものなら、12Vの電気を探すのが前提になっているじゃないですか。
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12Vの電気が来ていれば、光る(モデルによっては鳴る)というシンプルさがメリットなんだ。
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逆に、サーキットテスターは何Vでも測れるので、電圧を正確に調べたいならサーキットテスターの出番です。
✔ 具体的なやり方は、「ドアロックモーター配線(ドアロック線&アンロック線)の探し方」参照。
検電テスターにもブザーが鳴るタイプと、音は出ないタイプがある。
✔ やり方は、「電気用語の導通とは? テスターでのチェック(導通確認)方法」参照。
✔ 定番のエーモン検電テスター(A49)を例にすれば、検出可能な電圧はDC6V~24V用だ。
✔ やり方は「車の電圧の正しい測り方(テスターの使い方)」参照。
サーキットテスターは両手が塞がるのがデメリット。ワニグチクリップがほしい
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サーキットテスターと比較して、検電テスターにはもうひとつメリットがあります。
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ほう。
まだあるのか。 -
それは、片方がハサミ(クリップ)になっている点。
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プラス線を調べるときは、ハサミを車体金属に挟んでボディアースしますね。
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いっぽう、サーキットテスターは両方とも棒なので、ワニグチクリップなどを用意しないと、片方をアースとして固定しておけないのです。
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車の配線を調べる作業では、片方の手は開けたい。そういう意味で、検電テスターはよく出来ています。
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なるほど。だから車の電装では、検電テスターが定番的なんだ。
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というわけで、検電テスターのほうがツールとして便利な場面も多いです。だから、私も使い分けていますよ。
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隊長はてっきり、サーキットテスター推しなのかと思っていましたが……
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そんなことはないです。
両方とも使いますよ。 -
サーキットテスターがあろうとなかろうと、検電テスターはあったほうがいい、という結論ですね。
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サーキットテスターも高いモノから安いモノまでいろいろなんで、高機能モデルを買えば、話は変わってくる面はあるとはいえ……
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そりゃそうだ。
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しかし私は、車の電装系の作業において、高級なサーキットテスターまでは必要ないと思っているのです。それほど高い精度や、温度・音圧測定などはいらないと思いますし。
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なるほど、なるほど。
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安価なサーキットテスターと、ブザーが鳴る検電テスターの組み合わせが、一番実用的なのではないかな、と。
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それで、隊長もあまり高級なサーキットテスターは使っていなかったのか。
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強いていうなら、サーキットテスターは液晶にLEDバックライトが付いているものがいいと思います。付いていないと、暗い車内では見づらいので。
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では、ブザーが鳴る検電テスターと、バックライト付きのサーキットテスターが最強ですね♪
DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。配線図大好き。●コムエンタープライズ TEL 079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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