バッテリーのマイナス端子(マイナスターミナル)を外すメリットと、デメリット╱後編
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何かの作業後、オートウインドウ機能が効かなくなった! その原因は、バッテリーのマイナス端子(マイナスターミナル)を外したことかも。知らないと故障? と慌ててしまうので、予備知識として一読をオススメする。
バッテリーのマイナス端子を外すと、パワーウインドウのオートが効かなくなるのは定番
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「バッテリーのマイナス端子を外すメリットと、デメリット」の後編です。
●レポーター:イルミちゃん
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前編では「バッテリーのマイナス端子を外しておけば、作業中のショートを防止できる」反面、「検電テスターなどは使えなくなる」というデメリットに触れました。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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そしてデメリットは、他にもまだある……という話でしたね。
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そうですね。細かいコトを言えば、車両の設定情報などが消えてしまうデメリットがあります。バッテリー交換時と同じ話ですが。
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車両の設定情報というと……
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電装品の取り付けでよくあるのが、「作業後、車のオートウインドウが効かなくなった」というもの。
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普通に手動で押し続ける分には、ウインドウの上げ下げはできる。しかし、パワーウインドウのオート機能(ワンタッチで全開・全閉できる機能)が効かなくなる症状です。
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なにが起こったの?
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この原因がまさに、「バッテリーのマイナス端子を外したこと」なんですね。
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あー。
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車のコンピューターが、ウインドウの上限位置と下限位置を学習しているのですが、その設定情報が消えてしまったために、オートウインドウ機能が使えなくなったのです。
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……どうしましょう?
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バッテリーをつないだら上限位置、下限位置を改めて教えてあげないといけません。
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どうやって?
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エンジンをかけて→ウインドウを手動で上げていって→上がりきった状態でも、しばらくスイッチを押し続けます。そうすると学習します。
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車によるでしょうが、数秒程度で学習する車が多いと思います。下限については、やらなくてもOKな車が多い。
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まあ、こういう問題はトラブルというわけではなく、再設定すれば済むことではありますが。
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知らないと、慌ててしまいそう。「壊れたかと思った〜」って。
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それはあります。
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そういえば! ナビやオーディオのメモリーなども、飛ぶっていう話もありますよね〜?
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最近のHDDナビ(あるいはSSDナビ)でしたら、バッテリーを外しても設定情報が消えないので、問題ないケースが多いとは思いますが。
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そっか。メモリーが消える心配は、ひと昔前のナビの話なんですね。
✔ 〈オートウインドウの設定方法〉は、バッテリー交換時に必要になる作業。そのため説明書にも記載があったりするし、ディーラーに聞けば教えてもらえる。
バッテリーのマイナス端子を外して回避できるミスと、回避できないミスがある
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バッテリーのマイナス端子を外すのは、いろいろなイミで手間が増えるのがデメリットではありますね。安易に外せ、と言うのもどうかという気が……。
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もうひとつ、重要な点に触れておきますと……
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なんでしょう。
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どういう意味ですか、ソレ?
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例えば、「配線のつなぎ方を間違えているせいでヒューズが飛ぶ」とします。
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バッテリーを外してあれば、ヒューズは飛ばないですよ。
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しかし、バッテリーのマイナス端子をつなぎ直した時点で飛ぶわけですから、けっきょく同じことなんです。
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……ウーン。
それもそーだなァ。 -
そういうイミでは、バッテリーをつないだ状態のままで、正しい配線なのかどうかをテスターでしっかり調べながら作業していくほうが、よっぽどミスが起こりにくいのかな、という面もあります。
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それは……言えてるかも。
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ただ、これは作業内容にもよると思います。
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と言いますと?
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ショートの中には、作業中にしか起こりえないショートもありますよね。
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ええ〜っと、例を挙げると……
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こういう作業ミスは、バッテリーのマイナスターミナルを外してあれば防げます。
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なるほど、なるほど。
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常時電源を取り出した分岐線をプラプラさせていて、車体金属に接触させる、なんていうショートも同様です。
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作業中に限定されたショートですね。
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そういうミス対策として、やはりバッテリーのマイナス端子を外しておくのは有効な防御手段と言えます。
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フムフム。
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いっぽうでコムエンタープライズの電装ユニットの取り付けなどは、いろいろな配線につなぐことになるので、バッテリーをつないだ状態で、1本1本テスターで調査・確認しながらやったほうがいいのかなとは思います。
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ただし、その場合も、ユニット本体に配線をつなぐのは最後にする。これは重要なコツです。
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何のことですか?
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コムエンタープライズの製品を例にすると、ハーネス(配線の束)とユニット本体は分かれています。
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配線が製品とつながっていなければ、作業中のミスでユニットを壊すことはありません。
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線と線をつなぐだけでは、電気は流れないから。
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そうですね。車両側への接続をすべて終えて、プラス・マイナスの間違いがないか、なども確認の上、最後にハーネスをカプラーオンでつなぎます。
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でも、製品によってはユニット本体と配線が分離できないものもありますよね?
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そういう電装品を取り付けるときは、バッテリーのマイナス端子を外しておくほうが無難と言えますね。
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そういうことか。
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要するに、取り付け作業時に、バッテリーのマイナス端子を外しておくべきか否かという問題は、正解がないので難しい話なんですが……
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自分がやろうとしている作業に応じて正しく判断できるのが、一番理想的と言えそうです。
配線作業のミスそのものは、バッテリーのマイナス端子(マイナスターミナル)を外しても防げません
✔ ドライバーでこじって電球を外そうとして、プラスとマイナスの端子の両方に同時に触れてしまう。 ドライバーの金属を介してショートする、定型的な作業ミス。
✔ 具体例を挙げると、キーレスの取り付け・アンサーバックの取り付け・セキュリティの取り付けなど。
✔ 上記のような取り付けでは、テスターを頻繁に使うことになる。バッテリーのマイナスを外して作業するとなると、かなり作業効率が落ちる。
DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。配線図大好き。●コムエンタープライズ TEL 079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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