リアキャンバー角によるタイヤの内減りを軽減させる方法
「キャンバー角を付けているから内減りするのは当たり前」と思っている人は多いが、トー角を適正化すれば偏摩耗は軽減できるって、知ってる?
その偏摩耗、本当にキャンバー角のせいですか?
-
キャンバー角を付けたら、タイヤが内減りしてしまうのは当然なんですよね?
●レポーター:イルミちゃん
-
タイヤの内側しか接地していない状態で内減りするのは当然なんですけれど、キャンバー角だけが原因で減っているわけではないですヨ。
●アドバイザー:Jライン 氏家研究員
-
え?
……と言いますと? -
トー角もちゃんと合っていないから偏摩耗する。内減りというか段がつく「段減り」が起きている例が多い。
-
え〜っと、トー角ってなんでしたっけ?
-
タイヤを真上から見たときの角度ですね。タイヤの向きが内股の状態なら「トーイン」、ガニ股なら「トーアウト」ってことです。
-
フムフム。
トー角は内股とガニ股の違いですね。 -
で、トーションビーム式のリアにキャンバー角を付けた状態で車高を落としていくとトー角が狂う、のが問題。
-
え? キャンバー角はホイールの倒れ具合でしょ? トー角とは関係ない気がしますが…
-
ところがおおいに関係アリ。なぜかというと、キャンバー角によって倒れたホイールの頂点が、車高を落とすことで前方向(フロント方向)にズレこんでいくからです。
-
うーむ。
話が難しくなってきたぞ。 -
キャンバー角で倒れているホイールの頂点の部分を想像してみましょう。
-
つまり内側に入り込んでいる上側のことですね。
-
そう。そのホイール頂点部分が「上側」にいてくれればいいんですが、実際には車高が低くなるほど、フロント方向に倒れ込んでいきます。
-
なんかよじれるみたいな、立体的な動きですね。
-
そうなんですよ。その状態でクルマを真上から見ると、「トーイン」(内股)になるって分かります?
-
両手でハの字をつくって、前に倒すと分かりますね! 確かに内股になる。
-
もともとはホイールを寝かせるためにキャンバー角を付けているのに、その角度のせいで同時にトーイン(内股)になってしまう。
-
なるほど〜。
で、トーインだと何が問題なんですか? -
タイヤをナナメ向きにして引きずっているような走り方になってしまいますから、段減りしてしまうんです。
-
それってキャンバー角のせいじゃないじゃん! 悪いのはトー角だったのか!
-
とはいえその原因を作ってるのはキャンバー角なので。
-
まあ、そうか。
-
キャンバーの角度が3度、5度、8度と付けば付くほど、トー角の変動も大きくなってきます。
-
セットの動きですもんね〜。じゃあキャンバー角を付ける以上は、トー角の狂いはどうしようもないんだ。
-
いやいや、そんなことはないです。J-LINEのリアアクスルはこの点を踏まえて、トー角も補正しているのですよ。
-
え、そうなんですか? じゃあJ-LINEアクスルでキャンバー角を付けた場合は、トー角は狂わない?
-
正しく選べばそういう風に作ってあるのですが、この「トー角の選び方」についてはあまり分かっていない人が多いと思われます。
車高に合ったトー角を選べば問題は解決する
J-LINEアクスルのスペック項目の中には、「トーアングル」という項目が存在する。
-
リアアクスルを買うときにみんなが考えるのは、「車高」と「キャンバー角」なんです。
-
そりゃそうでしょうね。それが目的なわけですから。
-
そうなんですけど、トー角も選べるようになっているので、「トー角はどうしますか?」ってこちらから聞くと…、「なんですかソレ?」ってなる。
-
確かに選べと言われても分かりにくい話ですよねぇ。いっそのこと、最初からJ-LINEが適正なトー角に固定しておけばいいのでは?
-
そうはいかないんですよ。
-
それはなぜ?
-
先ほどの、ホイールの頂点がズレる話を思い出してください。ズレ具合は、車高が下がるほど大きくなります。
-
ムムム。
-
キャンバー角がつけばつくほど、そして車高が下がれば下がるほど、トー角の狂いは大きくなります。
-
車高の下げ具合で、適正なトー角も変わるってことか。
-
キャンバー角のほうはJ-LINEが製造する段階で分かっていることですが、車高は付けるユーザーさん次第だから、こちらでは分からない。
-
あれ、アクスルのダウン量は決まっているじゃないですか?
-
いや。車高調+アクスルのトータルでのダウン量に合わせてトー角を決めないと、意味がないんです。
-
そういうことかぁー。 なんかモヤモヤしていたコトがわかってきたぞ。
トー角の決め方の正解
リムカブり低車高なら、トー角もスーパーローでいいのだが…
-
J-LINEアクスルのトー角は、「ハイ」「ミドル」「ロー」「スーパーロー」の4タイプがあります。
-
なんかスーパーローがよく落ちそう。
-
そういう選び方ではないです。ダウン量のことではありません。
-
どうやって選べばいいんですか?
-
どの位の車高にするつもりなのかで選びます。 ハイはタイヤにフェンダーがカブらないぐらいの車高。ミドルはタイヤに半分ほどかぶせる車高。ローはリムツラぐらいの車高。スーパーローはリムかぶりの低車高。
-
そういう選び方なんだ!
なんか面白い。 -
たとえば「ロー」を選んでおいて、車高を高めに設定したら「トーアウト」になってしまいます。これもタイヤを引きずるような格好になるので段減りしやすい。
-
あくまでも車高に合わせて選ばないと意味がないですね。
-
そうなんです。「走る車高」に合わせるものなので、エアサス車の人も勘違いしないように注意が必要。
-
エアサスはベタベタまで落とすから「スーパーロー」、というのは間違い?
-
それだと走るときに車高を上げたら、思いっきりトーアウトで走ることになります。
-
じゃあむしろ「ハイ」とか「ミドル」のほうが良さそうですね。
-
そういうことです。このトー角の選択をちゃんとやれば、リアキャンバーを付けていても「みんなが思うほどにはタイヤは減らない」のです。
-
でもハイ、ミドル、ロー、スーパーローどれがいいかってときに、「ハイで!」ってなんか言いたくないなぁ。ハイかローかって言われたら反射的にローでしょ!!!
-
いや、だから、そういう選び方やめて。
例:タイヤにちょっとカブる位の車高ならミドル
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
関連記事