フェンダーの爪(耳)を切る前に、知っておくべきこと(後編)
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フェンダー爪(耳)切りについて、足まわりのプロショップ・J-LINEに取材。J-LINE・氏家氏の最新の考えでは、フェンダー爪切り(耳切り)はオススメしない。爪切り前提のツライチには歴史があるが、今は爪を切らずにかわす手もあるからだ。
車体を加工する前にタイヤサイズを見直す
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さて、足まわり屋のJ-LINEが、フェンダー爪切りを勧めない理由の続きですが……
●レポーター:イルミちゃん
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以前はツライチにするために、爪切りが当たり前のように行われていました。しかし当時と比べると、今は対策パーツが豊富。まず、この点を考えてみましょう。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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対策とは、ホイールがフェンダーに当たらないようするための対策、という意味ですね?
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そうですね。
例えば以下のような点が、昔と今の違いです。 -
タイヤ&ホイールがフェンダーの爪に当たるから爪切りする、という判断をする前に、上のような選択肢もあるんですね。
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軽自動車のカスタム事情は別ですが、普通車の良いところとして、まずタイヤサイズが豊富にあります。
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ふむふむ。
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扁平率を例にすれば、20インチを普通に履くなら40扁平のところ、35扁平や30扁平みたいな極端に薄いタイヤもある。
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35扁平と30扁平では、約20ミリもの外径差が生じることを解説した記事もありますので、参照して下さい。
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そしてタイヤの横幅についても、昔はなかった細身のタイヤが、今なら選べる。
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扁平率が低いほど……そして同じ扁平率でも、細めのタイヤを履くほど、干渉しにくくなっていきます。
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でも氏家研究員、引っ張りタイヤが嫌だ、という人もいますよね。
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引っ張りタイヤのリスクを懸念する人は、多いですよね。もちろんリスクもあるのですが、それは引っ張り度合いにもよる。
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確かに。そのあたりの違いは、「引っ張りタイヤの限界サイズとは?」で触れました。
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というか、そもそもホイールのJ数に対して適正の、規定通りのタイヤサイズを履かせてツライチにするなんて無理があるんです。そんなの当たるに決まっているんだから。
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そりゃ、そうですね。
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例えば、軽く引っ張るだけで爪をかわせる状況なのに、そのことをユーザーに選択肢として伝えずに、簡単に爪切りをしてしまうケースも多い。
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うーむ。まあ、爪切りが普通のこと……みたいになっている側面のある業界ですからねぇ。
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その感覚は、今の時代はそろそろ、変わらないといけないと思います。
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もしもユーザー自身が「なるべく引っ張り具合を押さえつつ、できるだけツライチにしたい。そのための爪切りならやむなし」という考えなら?
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それなら、切ればいいし、J-LINEでも切りますよ。それがオーナーのコダワリなら、何の問題もないじゃないですか。
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なるほどね。
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でも実際は、他の選択肢を知らない(知らされていない)だけだったりするケースも多い。今回問題提起したかったのは、そこなんです。
✔ 扁平タイヤサイズが充実している
✔ アーム類も充実している
●同じ20インチ30扁平での、トレッド幅の違いを比較してみても、見た目にハッキリ分かるほど差がある(↓)
※詳しくは「20インチのタイヤサイズの選び方」参照。
アーム交換も、車体の加工を減らす手段として有効
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オーナー自身が爪切りを望んでいるケースの他に、「フェンダーの爪を切らざる得ないセッティング」も確かにあります。
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ふむふむ。
どんなケースなんでしょう? -
例えばミニバンに、10J、10.5Jといった太いホイールを履かせたいとします。内側も外側もギリギリ……という状況なら、爪切りまでしないと入らないケースはある。
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そもそも場所(奥行き)が足りないんですね。
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10Jや10.5Jがコダワリなら、それでも仕方ない、なんでしょうけど……、
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けど?
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スペックだけを雑誌などで見て、「30アルファードで10.5Jが履けるんだ!」と誤解したユーザーが、同じサイズをチョイスして、付けたらフェンダーの爪に当たる→切るしかない(泣)……このパターンはもったいない。
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それは、この業界では非常にありがちな話ですね。
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もっと車に合ったサイズのホイールを選んでおけば、爪を切らずに済んだのに、と思うケースはよくあります。
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それなら9.5Jにしておけば良かった……という人も多そうです。
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例えば、履いたホイールのオフセット(インセット)の問題で、今の位置だとフェンダーの爪に当たる……というケースでも、内側には余力があるとしたら、手はあります。
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と言うと?
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例えばアッパーアームを交換して、上側だけかわせば、今のJ数・オフセットのままでも爪切りしないで収まるかも知れません。
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ようは、ホイールを中に入れるアームを付けたら、かわせるかも知れない。
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アーム交換なら、爪切りとは違って、また純正アームに戻すこともできますからね。
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でもまあ、アーム交換は何万円という出費のかかる話だから、費用的な問題はありますが……、
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確かにね。ただ、戻すことができない車体部分を切る前には、それも選択肢としてあっていい。
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それは、そうですね。少なくとも、「爪切り」だけが道ではない、ということです。
J-LINEの30アルファード。9.5Jをフェンダー無加工で履いている。
2回に渡り、J-LINE・氏家研究員の「耳に痛い話」をお届けしました。あとは皆さんそれぞれに、「自分にとっての最良の道」を判断してもらえれば、と思います
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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