ツライチが左右で違う! 「左右差」の原因と対策
狙ったツライチが決まるのは、足まわりにこだわる人にとって至福の瞬間。しかし反対側を見てみたら、左右のツラ具合が違う! というショッキングな事態が起こることがある。原因は何か。修正はできるのか。どのくらいなら許容範囲か。悩ましいツライチ差を解説する。
車両誤差による1〜2ミリのツライチ差は、許容範囲!?
-
前回は「左右の車高が合わない」左右差について解説しましたが……、
※「車高が左右で違う!合わない! 車高の左右差、その理由」参照。
●レポーター:イルミちゃん
-
今回はその続き。「左右のツライチ(ツラ具合)」が、合わないという悩みですね。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
-
これって、例えば右はツライチだけど、左はツラウチみたいな状態ってことですか?
-
極端に言うと。
……そうなります。 -
ひええ。
-
あるいは片側はツライチだけど、反対側だけハミ出るとか。あり得ます。
-
それはもっと恐い。
-
ホイールを買うとき、当然ですけど、左右とも同じJ数・同じオフセット(インセット)で買うわけですが……
-
それなら、ツライチになるかどうか別にしても、少なくとも左右のツラ具合は同じになるはずではッ!
-
そうなんですけど、現実には、「同じサイズだから左右とも同じツラ具合になる」とはいかないんです。
-
うそぉ。
ホイールの作りがテキトウ? -
いや、ホイール側のオフセットは1ミリ単位でも厳密に作られていますよ。でも、「車の車体とシャーシの位置関係には誤差がある」。これは普通のこと。
-
ああ〜。
そっちね〜。 -
これは個体差もある。それと前回の車高ズレの話でも触れた通り、「ボディのゆがみ」の問題もある。
-
ようするに、そもそもハブ(ホイール取り付け面)から、フェンダーツラまでの距離が左右で違うんだ。
-
ですね。「1〜2ミリ程度のツライチ左右差」であれば、それは車の構造的に仕方ないことだと諦めましょう。
-
車高の左右差と同じく、あきらめる、も立派な解決策……か。
-
ただし。「3〜5ミリものツライチの左右差」となると、ちょっと違和感が強い。
-
確かに。
5ミリ差とか、諦め切れないカモ。 -
他の原因を疑う余地がありますね。
J数やオフセットの基礎知識は、「ツライチオフセットの計算方法」参照。
車高調取り付け時の問題を疑う
-
車両側の誤差は珍しくないとはいえ、5ミリ前後までズレるような誤差はさすがに少ないです。
-
誤差の範囲を超えているっぽい?
-
その場合、車高調取り付け時の問題などもあり得るので、確認してみましょう。
-
車高調のどこを見るんですか?
-
車高調のショックと、ナックルアームを固定する部分には2本のボルト(↓)が使われていますよね。
-
でもこのボルト、意外と車高調の穴とピッタリではなく、多少の遊びがあるんですよ。
-
キャンバーボルトの話じゃなくて?
-
キャンバーボルトに限らず、純正ボルトでも。だからショック&ナックルアームを押し込んだ状態でボルトを締めるか、手前に起こし気味にして締めるかで、多少角度が変わります。
-
これはつまり、キャンバー角が変わるということ。左右とも同じ状況でボルトを締めないと、ホイールのツライチ具合も変わる。
-
そういう差があることを、よく知らないで車高調を付けたら……、
-
ハブの倒れ方が違うから、ホイール頂点で比較したときのツライチのズレは、かなり大きくなる可能性があります。
-
左右が同じ取り付け状況かどうか、要確認ですね。
ボルトのガタがあるので付け方で角度が変わる。「車高調 取り付け方法/フロント編(ストラット式)」参照。
調整式アッパーマウントなら、調整具合を確認
-
調整式アッパーマウントの車高調を付けていたら、左右の調整が同じ状態になっているかも確認してみましょう。
-
そっか。ココがズレていたら、当然キャンバー角が変わってしまう。
-
買った車高調をポンっとそのまま付けたとしたら、左右のアッパーの固定位置がズレていることはあり得ますよ。
-
初期出荷時で左右均等とは限りません。
-
そうなんです。
-
でもこの調整式アッパーの機能を利用すれば、逆に左右のキャンバー角を変えてツラを揃えることができるのでは?
-
まあ微妙に変えて、左右のツラ具合をほぼ揃えることはできると思いますが、それをやってしまうと左右のキャンバー角がズレますよ。
-
ツラ具合は揃う。
しかしキャンバー角に左右差が生じる……。 -
足まわりは、左右均等であるべきものですから……、
-
あまり良いやり方ではないんですね。
-
車高調の状態が左右できちんと同じになっていて、その上での誤差は、気にしないことです。
リア(トーションビーム式)のツライチは妥協も必要!?
-
最近の車は、リアにトーションビーム式を採用するケースが多い。そして、このタイプはツライチの左右差は起こりやすいです。
-
この方式は、アーム2本が前方向から伸びてきて、足まわりを支えているのみ。リンク式のラテラルロッドのようなつっかえ棒はない。それで、左右のブレが大きめになる。
-
そういう理由もあるんだ。
-
トーションビーム式の場合は、走行中にもツラ具合が横方向にブレやすい。フェンダーとリムのクリアランスも、余裕を見ていないと当たりやすいです。
-
横方向の力に弱いんですね。
-
だから構造的に、例のツライチの左右差も、あって当たり前な面があります。
-
そうか。
リアだと、より起こりやすいんだ。 -
リアに関しては、そもそも左右輪をつなぐ純正のリアアクスル自体の作りが、厳密に言うと完璧な左右対称ではないケースも多いです。
-
J-LINEは毎日アクスルを溶接加工しているから、そういう差に気づくんですね。
-
純正アクスルに、もともと1度程度はキャンバー角が付いている車種が多いですけど、その角度も、完璧に左右均等ではなかったりする。
-
う〜む。
そういうもんなんですね。 -
そうなんですよ。結果的に、リアのツライチの左右差は3〜4ミリ位までなら許容範囲と思ったほうがいいです。
-
あ。もしかして!
アライメント調整したら直る? -
トーションビーム式のリアは、ズレが分かったところで、そもそも調整機構を持たないので直しようがないです。
-
そっかー。
-
左右の車高調整が均一になっていないとすれば、それによって車体が傾いて左右差は出るので、そこは念のため確認しましょう。
-
車高調整は左右均等だった。それでも数ミリズレているのは……
-
あきらめましょう!
車とはそういうものなんで。
トーションビーム式リアのキャンバー角は、それほど厳密ではない!?
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
関連記事
- 車高調のアッパーマウントでキャンバー調整する方法
- はみ出したホイールをフェンダー内に引っ込める方法
- キャンバーボルトでの調整には独自の注意点がある
- ホイールのオフセット計算はツライチへの第一歩
- ツライチとは? その意味、意義、歴史をまとめたホイール入門
- 30プリウスを例に、プロショップ流ホイールマッチングを学ぶ
- ツライチと車検。合法と非合法の境界線
- タイヤのハミ出しに関する保安基準の改正は、誤解が多い!?
- オフセット計算だけでツライチにできない理由
- ツライチとツラウチはどっちがいいの?
- ホイールとフェンダーが当たらないツラウチの極意
- ディープリム(深リム)ホイールを履くための知識まとめ
- 車高が左右で違う!合わない! 車高の左右差、その理由
- 車高調の正しい調整方法(フロント)
- 初心者のためのホイールアライメント講習スタート