LEDのVf値と抵抗計算
LEDのVfの表記に幅がある場合は、どの数値を元に抵抗計算すればいいのか?
LEDのVfについての、読者からの疑問。LEDや抵抗を購入する際に、抵抗計算をして選ぼうとすると、例えば2.8〜3.2VのようにVf値の表記に幅があったりする。この場合は2.8Vと3.2Vのどっちで抵抗計算するべきなのか? それとも平均を取って3V?
Vf2.8V~3.2Vと書いてあったら、どの数値で抵抗計算すればいいのか?
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LEDパーツを自作する読者の方から、貴重な視点での質問を頂きました。
●レポーター:イルミちゃん
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質問の本題に入る前に、まず「Vfとは何か?」からおさらいしておきましょう。自作派でも、ちゃんとは知らない人も多いと思うので…。
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Vfとは、LEDの順方向電圧(じゅんほうこうでんあつ)のことです。
●アドバイザー:エルパラ 平川研究員
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日本語で言われても、まだよく意味が分かりませんが?
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LEDは電圧が低いと(電流を流しても)発光しないんですね。「ある電圧を超えたところ」から大きな電流が流れて、ぱっと点灯するんですよ。その電圧がVfです。
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ふむ。LEDが光るには、一定の電圧が必要なのね。
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Vfは、ようするに「そのLEDが光るために必要な電圧」。「LED自体の電圧」と言い替えてもいいですね。
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だから抵抗計算するときは、Vfを「LEDの電圧」として計算するんだ。
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ちなみにVfは一定ではなく、そこから電流が増えるにしたがってVfも増えますが。
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可変するのか…。
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なので、正確に言うと「規定の電流(砲弾型なら20ミリアンペアなど)が流れたときの値」を示しています。
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20ミリアンペア流せるLEDだとしたら、20ミリアンペア流れた時点での電圧なんですね。
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言い替えると「20ミリアンペアの電流を流すために必要な電圧」になります。
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そっかー。それをもっとカンタンに言っているのが「そのLEDが光るために必要な電圧」という言い方だ。
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そういうことですね。
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Vfがなんなのかイメージできたところで本題に入ります。
■ 質問
LED自作などの記事を参考にたまに自作をしていますが、抵抗値や容量の計算、また計算値にマージンを取るなどの啓発がとても参考になっています。
購入するLEDや抵抗などを選ぶ際には、抵抗計算して選択しますが、LEDによってはVf値が、例えば1.8〜2.2Vのように開きがある品物があります。
この場合、計算するのに1.8Vと2.2Vどちらを基準にした方がよいでしょうか? あるいは平均値の2.0Vで計算するとか? マージンを取りつつ、できるだけ明るくしたいと思うので迷うところです。
質問者╱金乃字さん
✔ 抵抗計算方法については「LEDテールランプ(ダブル球)の抵抗計算方法をプロが解説」などを参照。
Vf表記に開きがあってもなくても、Vfにバラツキはある?
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抵抗計算するときは、Vfを「LEDの電圧」として計算していきますが……
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しかしこのVfは、販売されているLEDの表記を見るとアバウトです。
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赤色LEDだと「1.8〜2.2V」とか、白色LEDだと「2.8V~3.2V」って書いてあったりするという問題。
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そうですね。いっぽうでVfが固定で表記されているものでも、実際にはバラつきはあります。
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ええッ!
そうなのッ!? -
例えば「Vf3V」と書かれていても、それは標準値を表記しているだけ、というふうに捉えましょう。
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つまり「2.8V~3.2V」と書いてあっても「3V」と書いてあっても、バラツキがあるという点では……同じ?
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そうなんです。
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「Vf2.8~3.2V」のものよりは、「Vf3V」と書いてあるほうが、バラツキのないLEDなのかと思いきや。
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それは誤解ですね。「範囲」を言っているか「標準値」を言っているかの違いでしかありません。
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そうだったのか…。
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なぜかというと、完全にビシッと同じVfで揃うようにLEDを生産することなどできないからですよ。
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ふむ。
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もっというと、Vfは同じLEDであっても生産ロット毎に変わりますから。
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え……!?
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ロット毎のVfでは、だいたい0.2Vの範囲くらいでカテゴライズされているLEDが多いと思います。
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つまり「2.8~3V」みたいな感じか。少し範囲が狭くなりましたね。
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そうなんですが、LED販売業者がロット毎のVfまでを正確に表記しているかと言ったら、現実にはそこまで細かく対応できていなかったりします。本当はそれが望ましいとは言え。
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えーっと、それだとLED販売店が表記しているVfは、どこから来た数値なんでしょうか?
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「このLEDの規格では、Vfは2.8~3.2Vですよ」的なメーカーの公称値みたいなものがあるので、それをそのまま表記しているケースが多いかと。
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なるほど。
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そのような理由で「Vfの表記はアバウト」なのが一般的なのです。
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そんなアバウトな数値をもとに抵抗計算して大丈夫なのでしょうか? 金乃字さんが指摘してくれた以上に、これは問題なのでは???
Vf2.8~3.2VというLEDだったら、2.8Vで抵抗計算するのが無難
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対処方法としては大きく2つあって、まずは「購入したLEDのVfを測ってみる」手があります。これが一番確実な方法ですね。
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規格上のVfには幅があるから、実測で見る、ということですね。
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例えば20ミリアンペアの電流を流せる砲弾型LEDなら、実際にLEDに20ミリアンペアの電流を流しつつ、電極にテスターを当てて電圧を測定します。
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これはあくまでも簡易的な測定方法ですが、アタリを付けるには十分です。
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しかしこの方法はテスターを持っていないとできませんね。点灯確認用のテスターと、サーキットテスターが両方ないとできない。
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では次に、テスターなどを持っていなくてもできる方法。表記されているVfを元に抵抗計算する場合は、どうしたらいいのか。
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そこが金乃字さんの質問です。
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Vfの表記に範囲がある場合には「低いほうの数値で計算する」のがいいと思います。
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では「Vf2.8~3.2V」というLEDだったら、LEDの電圧は2.8Vとして抵抗計算すればいいのね。
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そうですね。安全側に振っておく、ということです。
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ちなみにですが「真ん中の標準値」とか「大きいほうのVf」で抵抗計算すると、なにが問題なのでしょうか?
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ここから先は机上の論ではなく、実際に実験を行ってみましょう。
LEDの点灯確認に使うテスターを使って電流を流しながら、サーキットテスターで電圧を測定。
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