LEDのVf値と抵抗計算
LEDのVfの表記に幅がある場合は、どの数値を元に抵抗計算すればいいのか?(検証編)
LEDのVf値は、表記に幅がある場合がある。そんな時の抵抗計算はどうすればいいのか? 実際にVfの値を変えながら抵抗計算してみた結果は…。またそれとは逆に、Vfが固定で表記されている場合の抵抗計算のやり方もわかっておきたい。
Vfの値を変えながら抵抗計算してみた結果
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「LEDのVfの表記に幅がある場合は、どの数値を元に抵抗計算すればいいのか?」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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Vfの表記に開きがあるLEDの場合、一番小さい値で抵抗計算するのがいいと言いましたが、その理由を実際に実験しながら説明していきます。
●アドバイザー:エルパラ 平川研究員
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論より証拠、ですね。
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今回実験に使うLEDは、「Vf2.8~3.2V」と表記されている白色の砲弾型です。
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フムフム。
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テスターなどを持っていなかったとしたら、表記されている「2.8~3.2V」のどれかの値で抵抗計算することになりますよね。
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ふむ。
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そこで「2.8V(Vf表記の最小)」「3.0V(中間)」「3.2V(最大)」の3つのパターンで抵抗計算して、それぞれ実際にLEDを光らせてみます。
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ほう。なるほど。
それで何が分かるの? -
抵抗計算の結果、選択する抵抗値が変わってきますが、LEDに流れる電流がどの程度ズレてくるのか……
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それを実測で調査するのね。
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今回のテストではVf3V前後の白色LEDを1個で光らせるだけなので、ここでは5V電源を使っています。
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ではLEDの電圧を「2.8V」とした場合の計算から。
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おさらいしながら抵抗計算していきます。電源が5Vで、LEDの電圧が2.8Vだとすると……
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Vf2.8Vで計算した場合は、余剰電圧が2.2Vとなります。
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次は抵抗値を求める計算ですね。
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LEDに流す電流を(マージンを取って)15ミリアンペアとした場合に、約150Ωという抵抗値が出てきます。
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146.6の近似値で選んだのが、150Ωの抵抗。これを付けると「15ミリアンペア流しになる」というのが計算の結果です。
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実測してみます。電源電圧は(実際のところ)5.25Vで、150Ωの抵抗だと、約16.3mA流れていました。
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計算上は15ミリアンペアのつもりでしたが、実測では少しだけそれを上回る電流が流れる結果に…。
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しかし、まあまあこのくらいなら許容範囲、だいたい狙い通りと言えます。
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確かに。
そうですね。 -
計算に用いたVfと、実際のVfがほぼ同じ値だったから、誤差がほぼ出ない結果になっているわけです。
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なるほど、なるほど。
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ところが「Vf3.0」や「Vf3.2」で計算した場合では、思ったより流れる電流が多くなっていきます。
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Vf3.0Vで計算してみたところ……抵抗値が130Ωと小さくなり、実測では18.6ミリアンペア流れました。
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LEDには15ミリアンペア流すつもりで抵抗計算していたのに、実際には18.6ミリアンペア流れていて、マージンが削り取られています。
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さらにVf3.2Vで抵抗計算した場合は、抵抗値は120Ωとなり、実測電流では約20ミリアンペア流れていました。
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マージンがすっかりなくなって、砲弾型LEDのマックス電流を流すという状況になっている。
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計算が狂ってくる要因は、そもそもこのLEDのVfは(実測で測ると)2.8Vである点と、それから電源電圧の僅かな誤差などが積み重なってしまったから。
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実態としてはVf2.8VのLEDなのに、3.2Vで抵抗計算したら、思ったより電流が流れてしまう。
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はい。抵抗値が下がってくるので、当然そういうことになります。
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まあ、もしも個体のVfが3.2Vだったら問題はなかったはずですけど……
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前回解説しましたが、Vfはアバウトな数値ですから「2.8~3.2V」だったら、2.8Vである可能性もあります。
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実際、今回の個体がそうだったよね。
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思ったより電流が流れ過ぎていると、取ったつもりのマージンも結果的になくなって、LEDの寿命を縮めることになります。
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車のLED加工のように、すぐに交換できないような場所でLEDを使うとしたら、あまりにもリスキーだ。
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「Vf2.8~3.2V」のように幅がある表記では一番下の数値で計算するのがオススメ、と言っている根拠がこれです。
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ここまでは納得しましたが、問題はまだ残っています。Vf表記が固定で書かれていたらどうするのか?
5V-2.8V=2.2V
2.2V÷0.015A=146.6Ω
一番左のテスターは、実測でVfを測っている。
Vfが固定で表記されている場合の抵抗計算はどうやる?
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Vfが固定で書かれていても、けっきょくはバラツキがあるというのを前回教わりました。
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そうですね。Vf3.1Vと書いてある場合は「3.1Vあたりを標準値として製造する」みたいな指標に過ぎません。3.1より低いのも高いのも、来る可能性は十分あります。
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でも固定のVfは下限の目安も分からないから、抵抗計算するときの値はどうしたらいいのでしょう?
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Vfが固定で書かれているLEDだとしたら、流す電流のほうのマージンを増やすことをオススメします。
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ほほう。そっち側でマージンを取って計算するんだ。
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例えば20ミリアンペア流せるLEDなら、15ミリアンペアで抵抗計算するのがよいという話をこれまでにも何度かしてきましたが、さらにマージンを取って10ミリアンペアで計算する…という具合です。
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それなら思ったより電流が流れる誤差が生じても、20ミリアンペアまではいかないだろう、と踏めそうですね。
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そうなんですよ。
そのほうが安心です。 -
しかしですねぇ、平川研究員。
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はい。
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思ったより電流が多くなるケースを考えたらマージンが必要なのはよく分かりますが、誤差が生じなくて本当に10ミリアンペアになってしまったら、LEDが暗くなるんじゃないですかね?
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LEDが暗くなるのはイヤだ、できるだけ明るくはしたい……というのは分かりますが……
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いくらなんでも最大電流の半分しか流さなかったら、暗くなりそうで、それはそれでリスクでは?
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ではその点について検証するために、もうひとつ別の実験をしてみましょう。10ミリアンペアだと本当に暗いのか?
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