ツライチコラム
オフセット計算だけでツライチにできない理由
現実のツライチセッティングは、横方向の計算(オフセットとJ数)だけでは語れない。ホイールのインチアップ、キャンバー角、ローダウンによるトー角の変化など、複合的な要因を受ける。この「ツライチの奥の深さ」を計算に入れてこそ、なのだ。
インチアップすることで計算が狂う理由
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オフセット(インセット)計算の基本的なやり方は、「ツライチオフセットの計算方法」で教わりましたが……、
●レポーター:イルミちゃん
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とはいえ、計算だけでツライチを作るのは難しいんですよね〜。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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それはなぜでしょう?
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原因はいくつかありますが、まず、今履いているホイールよりインチアップする場合は、オフセット計算に誤差が生じます。
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インチアップはホイールの直径が大きくなるだけだから、ツラ具合(横方向)とは関係ない気がしますけど?
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ところが関係あるんですよ。キャンバー角が付いている状態でホイールの直径が大きくなると、ホイールの頂点は今より内側に入り込むからです。
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おおぉ〜、そういうことか! じゃあ同じオフセットでもツラ具合が変わるんだ!
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そうなんですよ。そしてキャンバー角は純正でも少しは付いているし。
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これは罠ですね。
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ホイールを買う前に、同じインチのホイールを履かせて、そのうえで引っ込み具合を調べるなら別ですけど……ね。
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ショップならともかく、普通はそんな都合のいいホイールが転がっているとは思えない。
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ですよね。だから例えば17インチの純正ホイールを元にツライチを計算して、19インチを買う場合は、2インチ分の誤差を計算に入れておかないと。
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どう計算するんですか?
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計算で出すというより、17インチホイールの頂点で計測するんじゃなくて、もう少し上に頂点が来るな〜という想定で、目視とスケールで確認します。
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普通はホイールの頂点で測るけれど、もっと上で測っているってことですか?
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インチアップのときは、そうなんですよね〜。もちろん、そこまでのツライチを求めているような人の場合は、ですけど。
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なるほどねぇ。この理屈だと、キャンバー角が付いている車ほど極端に変化しますね。
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そうなんです。だから今のホイールの倒れ具合を見ながら、その延長線上を目視とスケールで予測するんです。
キャンバー角が付いているとホイールが大きくなるほど頂点は内側に入る
ここで測ったままいけるのは、インチが変わらない場合
ホイールと車高調はどっちを先に買うべきか?
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車のドレスアップって、一般的にはホイールから入る人が多いとは思うんですけど……、
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そうでしょうね。
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しかしツライチ狙いなら、できれば先に足まわりを交換して車高を落としたほうがいいですね。
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引っ込んだノーマルホイールでローダウン? カッコ悪くないですかねソレ。
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まあ、そうですができれば。一時的な状態として、ガマンしてほしい。
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なんでですか?
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車高を落とした状態を作ってから、改めて履けるホイールサイズを確認する。そのほうが、攻めのマッチングはやりやすいからですよ。
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フムフム。
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例えばJ数(太さ)を決めるにしても、内側はショックに当たるまでどの位の隙間が残されているか、など車高を落とした状態でチェックするほうが確実。
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車高調によって、ショックの太さも違いますしねぇ。
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フロントは車高調を入れたことで、ピロアッパーになってキャンバー角を付けられるようになったりもしますよね。でもキャンバー角を付けるのなら、ホイールマッチングは大きく変わる。
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後から倒したら、ツラが奥に引っ込んでしまいますね。
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リアはトーションビーム式が多いから、それほどキャンバー角に変化はないけれど、それでもトー角は変化します。
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トー角は内股、ガニ股の違いですね。
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車高を落とすとトーイン(内股)になったりする車が多い。それによってホイールの後ろ側が外方向に振られるので、リアバンパー付け根に干渉し出したりする。
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でも、それはトー角の問題なんだから、トー角を戻せばいいんでしょう?
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トーションビーム式は、その補正ができないんですよ。J-LINEのリアアクスルに交換するなら、車高に合わせてトー角を選べますけど、普通はそれができない。
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つまり、トー角の狂いも計算に入れるなら、ツラを出し過ぎてもダメってことかー。
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そういう意味でも、まず車高を落としてしまって、その状態を見ながらホイールサイズを決めるのが確実というわけです。
ホイール交換より先に車高を落とす
ホイール内側のマージンを確認
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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