車検の知識
10月1日から「車両総重量1.1倍以下ルール」が運用開始。カスタムカーの「重量増」にも規制が入る!?
車の改造・カスタムによる「重量増」に、今までになかった規制が入る。運用開始は10月1日。あと1か月弱で発動するというのに、全く認知されていない「車両総重量1.1倍以下ルール」について、車検の専門家が警鐘を鳴らす。
10月1日から車の改造・カスタムによる「重量増」に規制が入る!?
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突然ですが、緊急ニュースをお伝えします!!
●レポーター:イルミちゃん
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車業界では、まだ誰も話題にしていないようなんですけれど……
●アドバイザー:TIC 越川研究員
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越川研究員が出てくる時点で、嫌なニュースの予感がしますね……。
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ってそれ失礼でしょ!
……まあ、でも当たってるのか。 -
……で、どんな話題ですか?
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今後は、カスタムカーを作る上で、「総重量」を気にしないといけなくなりそうです。
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重量……?
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ようは、車を改造することでの「重量増の問題」が問われることなります。
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……ムムム。
それって、いつから? -
10月1日から、運用開始されることになっています。
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ええ〜!!
もう1ヶ月切ってるじゃないですか。急すぎる〜! -
いや、実はコレ、少し前からすでに公開されている情報なんですよ。これまでは「みなし期間」で、運用されていなかっただけ。
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どこにそんな公開情報が?
みんな知らないんでしょう? -
「審査事務規定」には、すでに現時点で盛り込まれている文言なのです。(※平成29年6月29日に最終改正されている)
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しんさじむきてい……?
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審査事務規定とは、「車検場の検査をこのように行いますよ」というのを定めたルールのことです。
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この審査事務規定(第4章-20)の中に、「架装等により車両重量が増加した乗用自動車等の審査」という項目が加わったのです。
※乗用車に限定された規制で、貨物は除く。 -
カソウ等により……車両重量が増加した車?
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まあ、ようするに、改造された車両のことでカスタムカーとかドレスアップカーをふくみます。
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パーツを付けたら、重量が増えるケースは多いですからねぇ。
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例えば、エアサスを付けましたとか、オーディオを組みましたとか、大きい20インチのホイールを付けましたとか……
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ちょ……そんなこと言い出したら、全部じゃないですか!!
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全部とは言いませんが、重量増になるカスタムは多いですよね。
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増えたら、どうすると言うんですか?
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まず、カンタンに言うと、「車両総重量に対して1.1倍まで」という上限が定められました。
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総重量、というのは乗車定員も含めた重さですね。
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そうですね。車両重量ではなく、乗車定員(ひとり55キロ計算)の重さも含めた総重量の1.1倍です。例えば1500キロの車なら、1650キロまで(1650キロ以下)は認めましょう、と。
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つまり、ちょっとは超えてもいいんですね……少しホッとした。
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正確な言い方をすれば、「車両総重量の1.1倍以下」なら、何も検討しなくていいですよ、ということです。
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そのまま車検に通るんですね。
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ハイ。むろん、個々の改造内容に対する検討はまた別問題ですけれど、重量増に関しては問題とされない。
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……で、総重量の1.1倍を超えたらどうなるの?
審査事務規定は公開されている文書。独立行政法人・自動車技術総合機構のHPでも確認できる。
ホイールも大径サイズは重たい
総重量1.1倍を超えた車が、やらないといけないコト
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総重量1500キロの車が、改造によって2000キロになったとしましょう。
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1.1倍を超えている例ですね。
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総重量が重くなると、車のどこに問題が生じるか。それはいろいろあるんですけど、一番問題となるのはブレーキですよね。
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重くなったら止まらない。
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逆に言うと、「重くはなっているけど、それでもこの車のブレーキは持ちますよ」という証明を出せばいいことになりますが……
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証明って……?
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ブレーキの場合、それはすごくハードルが高いです。ブレーキというのは、ひとつの基準を満たすために何百万円もの費用がかかるような話なんです。
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……うぐ。
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自動ブレーキ装置的なものが付いているとすれば、電磁波の影響とか……つまり悪意を持った人間に、リモートコントロールされないようにする対策なども含めたテストをしたりで……さらに桁違いの費用がかかるんですよー。
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そういうのは自動車メーカーがやること、ですよねぇ?
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そうなんですけど、自動車メーカーが行っているのは、あくまでも諸元上の「車両総重量」に対しての証明です。2トンに増えたのなら、2トンの車重の上で、証明し直しなさい、ということになります。
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ムムム……。
そういう理屈になるのか。 -
というわけで、「総重量1.1倍を超えた車を作ってはいけない」というルールはどこにもないけれど……
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ブレーキ性能を証明することに現実味はない、ということですね。
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ですね。そもそも1.1倍の根拠としては、自動車メーカー側もだいたい15〜20%ぐらいの重量増は見越してテストをしているものだからです。
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ふむ。
重たい荷物を積むこともありますし。 -
だから、ひとつの線引きとして、「総重量1.1倍以下」と決めたわけです。
1.1倍ルールは、どういうカスタムに影響が出るのか!?
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「総重量の1.1倍まで」と言われてもピンと来ない人が多いと思うのですが、実際のところ、どういうカスタムやドレスアップが影響を受けるのでしょう?
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通常のドレスアップでは、1割増し以上重量が増えるっていうことは、なかなかないと思うんですよ。
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フム。
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実際のところでは、本格的なカスタムカーの世界に限られるでしょう。
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越川研究員は公認車検のプロだから、本格的なカスタムカーを扱うことも多いですよね?
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100キロ増くらいの車を扱うことは、ザラにありますね。
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それ、どういう車ですか?
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カスタムオーディオ系が多いですね。それとハイドロを組んでいる車なら、割とカンタンに100キロいきますよね。バッテリーがあるから重い。
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なるほど、なるほど。
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あと意外とありがちなのが、NAエンジンからターボエンジンに載せ替えて、さらにロールバーを組んだ車。こういうのは、100キロ位はすぐにいってしまいます。
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とくに最近流行りの、エコエンジン→旧世代の鋳鉄エンジンへの載せ替えは、当然ながら重量増ですよね。
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100キロくらいの重量増の例は、けっこうある話、ということですね。
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でも今回の話に照らすと、100キロ増が上限になるのは、もともとの総重量1000キロ(1トン)の車です。軽自動車なら、ギリギリとなってくる範囲ですが。
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……なるほど。考えてみると、総重量の1.1倍以下ルールなら、そんなに深刻な影響は出ないのかも!?
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しかし、この話はこれで終わらないんですよ。問題はココからなんです。
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?
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そもそも今回解説したルールは「どういう条件下で1.1倍まで」とされているか、という話なんですけどね…… まだそれを言ってなかったですね。
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条件って?
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「自動車の制動装置に変更がなく…」という文言が入っているのです。
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それって……。
ブレーキをいじっていないことが条件だと? -
そういうことです。まあ、理屈の上からもブレーキが変わっていたら、1.1倍位は大丈夫だろうという根拠も崩れますから……
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あの〜。
では、ブレーキをいじっている車の場合はどうなるの? -
ハイ! ここからがいよいよ、深刻な問題に突入していくんですね。
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ええ〜!!
ターボエンジンに載せ替えれば当然重量アップ
DIY Laboアドバイザー:越川 靖
公認車検専門店「TIC」代表。公認申請歴26年のベテラン。「車好きが堂々とカスタムカー・改造車に乗れるように」と使命感を持つ。自身も大の車好き。車検完璧対応のワンオフマフラーを自ら溶接する、職人系の公認車検屋。●TIC(http://www.tic-group.jp/index.html)
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