命を守るジャッキアップ講習
パンタグラフジャッキの危ない使い方╱タイヤ交換時
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パンタグラフジャッキの危ない使い方の後編。パンタグラフジャッキは、けっこう簡単に倒れるので使い方を誤ると危険……という基本は理解していても「ついウッカリ」はあり得る。ありがちな例としては……。
パンタグラフジャッキで車体を持ち上げる前にやること
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●レポーター:イルミちゃん
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前回は、パンタグラフジャッキで持ち上げた状態で足回りをいじるのは無謀、という話をしました。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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でも、タイヤ交換時にもNGパターンがあるって言ってましたね。
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そうなんですよ。タイヤ交換に慣れていない人がやりがちなケースがあります。
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ふむ。
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タイヤ交換の手順のおさらいですが、まずジャッキをかけて車体を持ち上げるとき……
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少しだけ車体を持ち上げた段階(タイヤはまだ接地している状況)で、ホイールナットを少しゆるめておくのがポイントです。
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ふむ。
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完全に地面に接地した状態だと、100%の荷重がかかっている。だから最初の段階でホイールナットを緩めるのも、あまりいいやり方ではないので……
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ジャッキで少し車体を持ち上げて、荷重を減らしたところで、ほんの少しだけ緩める。
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正しくはそうなんですが……ホイールナットを緩めるのを忘れて、そのまま持ち上げる人っていっぱいいるわけですよ。
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でも、その場合は、ホイールナットが回転してしまってゆるまないのでは?
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後輪はサイドブレーキを引いていればロックされているし、FF車ならシフトをパーキングに入れてあれば駆動輪である前輪もロックされています。
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あ、そっか。ということは、ジャッキアップしてから、空中で緩めることができるのか。
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そこ! ……それが、パンタグラフジャッキの危ない使い方例に突入しているのです。
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へ?
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ホイールナットをゆるめる時って、けっこうな力をかけますからね。車体が揺れるような力ですよ。
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規定トルクだと、一般的な車では100ニュートン(100N·m)の力で締まっていますからね。
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あ。
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パンタグラフジャッキを伸ばしきってから、車体を揺らすような力を加えるのは危ない、という前回の話と同じ。
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そういうことか。
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ただ、タイヤ交換の場合は、正しい手順を踏めば問題はないことになりますよね。
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忘れずに、先に少しだけ緩めておけばいい話。
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そうなんです。しかし、それができないのが、ワイドトレッドスペーサーの取り付け時です。
ワイドトレッドスペーサー取り付けをパンタグラフジャッキで行うのは危ない
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パンタグラフジャッキで持ち上げて、ワイドトレッドスペーサーを付ける人はけっこう多いです。
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……まあ、足回り交換作業ではないし?
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……。
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それに、タイヤ&ホイール交換にともなってワイドトレッドスペーサーを付けたり外したり、というのはよくある話でしょう?
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それは、そうなんですよね。
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春になって、スタッドレスタイヤからドレスアップ仕様に戻すときとか……
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けっこういるでしょうね。
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ワイドトレッドスペーサー取り付けの、何が問題なのでしょうか?
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通常のタイヤ交換なら、タイヤが設置した状態ではじめてホイールナットを本締めします。
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一般的なホイールナットの締め付けトルクは、100ニュートンでしたね。
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で、ワイドトレッドスペーサー取り付けも、ホイールナット締め付けと同じトルクをかける作業なんですよ。
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……それ、100ニュートンだっ!
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それを、パンタグラフジャッキで浮かせただけの状態でやるのは、危ないっていう話です。
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ウッ。
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タイヤが外れている時点でパンタグラフジャッキをかなり伸ばしてあるし、しかもワイドトレッドスペーサーは、タイヤも外れた状態で付けるわけですから……。
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この状態でジャッキがパタンと倒れたら、大惨事……。
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そうなんです。やりがちな、危ないパンタグラフジャッキの使い方例と言えます。
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じゃあ、ワイドトレッドスペーサーを付けるときの正しいやり方としては……
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そもそも、フロアジャッキ(ガレージジャッキ)で持ち上げて、ウマをかけた状態でやるべきですね。
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少なくともパンタグラフジャッキはやめてほしいです。
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う~ん、確かにDIYでワイドトレッドスペーサーを付けるとなると、このパターンは多そうです。注意しましょう。
通常のタイヤ交換の本締め
ワイドトレッドスペーサー取り付け
✔ その他の注意点については、「ワイドトレッドスペーサーの取り付け方法」参照。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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