熱で殻割りできないライトの開け方【第3回】
テールやライトを殻割りする時は防水を考えて切る
殻割りをしたら最終的には元に戻すわけだが、超音波カッターで殻割りした場合、殻とじ後に行う防水処理のやり方も変わってくる。そして防水処理のやりやすさは、殻割りの段階のライン取りで決まる。仕上げの防水処理を想定した合理的な切り方がコレだ。
ライトやテールを「閉じるとき」を先に考える
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前回は超音波カッターで殻割りするときに「どのラインで切るべきか」を教わりましたけど……、
●レポーター:イルミちゃん
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切るラインを決めるうえで、もうひとつ重要なのが「防水」の問題です。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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防水って?
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殻割りしたライトを加工後に、またくっつけ直す(殻閉じ)わけですよね。
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そりゃそうですね。
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熱で殻割りできるヘッドライトとは違って、今回紹介しているやり方のように「超音波カッターで切って開ける」場合は、最後に行う防水処理のやり方も変わってくる。
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シーリング剤で閉じるんじゃないんですか?
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その方法は「熱分解」のときです。テールなどは今回のように「切って開ける」ことが多いですが、その場合は、「樹脂を溶かして溶着し直す」「その上でコーキング剤を使う」というやり方をするんです。
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へぇ、なるほど。……でも森田研究員、まだライトを開けてもいないのに、もう閉めるときの心配なんて、気が早すぎませんか? それより早く開け方のつづきを……、
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いや〜、違うんですよネ。「防水処理のしやすさを考えながら切る」という視点が大切なのです。
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ん?
なんのこと? -
今回切っていくラインで説明していきます。まず前回記事までの解説で、ハリアーのヘッドライトの下部は切れました。
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今回はヘッドライトの外側の細いところを切って、上端へと移っていくわけですね。
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そうです。このとき下写真のような場所は、超音波カッターの刃をナナメ下方向に向けて、できるだけ下のほうを切ります。
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これを普通に横から真っ直ぐ切ろうとすると、下のような切り方になる。
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こうやって上のほうのラインを切ると防水処理がやりにくい。下のほうを切れば、ミゾの中をコーキングで埋めることで防水ができます。
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分解だけが目的なら、どっちのラインでも切れるけど……、
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のちのち、防水処理のしやすさが大きく変わってきます。
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このことを踏まえた上で、前回の続きを切っていきます。
普通は殻閉じするときはシーリング剤を使う
詳しくは「殻割りしたヘッドライトの閉じ方! プロ流の防水シーリング」を参照。
今回切っていくライン
こういう刃の向きで切る
オススメできない切り方
カットライン上の障害物は事前に切っておく
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防水のことなども考えながら切るラインを考えたら、その予定ライン上にいる障害物を先に確認しましょう。
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切りながら考えるのではなくて、先に全部決めるんですね。
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そうです。
いきあたりばったりはダメです。 -
え〜っと、今回はライト外側の細い部分を切るわけですが……、
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今回切っていくラインは、ヘッドライト一番外側の取り付けステー部分にもかかっていきます。
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まさか!
取り付けステーを切り落とす気ですか? -
いやいや。ヘッドライトが取り付けできなくなってしまいますので、それはしませんが、カットラインにかかっている部分は削り込む必要はあります。
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殻割りラインにステーがかかっていたら、この処理を先にやっておかないと、切っていくこともできません。
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なるほど。最小限ではこういう場所も切らないといけなくなってくるんですね。
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こうやってハウジングの谷になっている部分のなるべく下のほうで切ることで、「埋めて防水できる」ようにしておきます。
ステーの根元部分だけ削り込む
これでカットラインに刃が入る
これでハウジングのミゾを切っていける
ヘッドライト側面がカットできたところ
次ページでは、いよいよヘッドライト上側を切っていきます。