熱で殻割りできないライトの開け方【第2回】
超音波カッターによる殻割りは、切るラインが重要
熱では分解できないヘッドライトやテールランプを、超音波カッターで殻割りする方法。連載第2回目のテーマは、「レンズとハウジングの境界線を切るとは限らない」というお話。超音波カッターで切るとはいっても、「正しい切り口」なんて存在しない。試行錯誤で切っていくわけだから、カットするときのライン取りをどうするかは難しい問題だ。殻割り慣れした「球屋」の考え方はかなり参考になる。
レンズとハウジングの境界線を切るとは限らない!
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ここまでは超音波カッターで殻割りするための、基本的なコツを教わりました。
●レポーター:イルミちゃん
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前回は比較的切りやすい箇所で説明しました。が、そのままレンズ面とハウジングの境界をキレイに切っていけるとは限りません。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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……今日もまた重たい感じのフリから入るんですね。
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ハリアーのライトでいうと、こんな切り方をする場面も出てきます。
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ええー!! なにコレ。レンズを思いっきり切ってるじゃないですか!
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とはいえもちろん、車体に取り付けたら表側からは見えない部分での話です。ライト底面です。
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それにしても……なぜわざわざこんなライン取り??? もしかして寝ながら切った?
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前回切り始めたライト底面側の直線は、レンズとハウジングの境界をきれいに切っていけますが、そのうち障害物が出てくるんです。
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あー、ホントだ。超音波カッターがヘッドライト取り付け用のステーにぶつかってしまいますね。
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こんなとき、じゃあ刃を立てて切ればいいのかと言うと、こんな切り方になります。
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この刃の入れ方は、ハウジングを切り込んでいるだけで、奥のレンズ溶着面をとらえられない。それでは1本のラインでライトは開かない。
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どこ切ってるの?
状態ですね。 -
それとヘンな角度で刃を入れて切っていると、超音波カッターの刃がすぐ折れます。
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ムムム……
刃がもったいない。 -
そんなレベルの話ではなく……この部分、今まで切ってきた底面よりも、表面レンズに近い場所まで来ています。
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それが何か?
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刃が折れたときに恐いのは、折れたあとの反動なんです。折れた先でレンズの無関係な部分をガシっとやってしまう可能性もある。
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つまりオモテ面のレンズに近い場所で刃が折れたら……
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反動で「ヘッドライト表面をザクっと傷付ける」可能性が高まるってことです。
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ひええ〜。重たさMAXだ。
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できることなら、「刃を進めている方向に表面のレンズがある」という向きで切らないのがコツですが、ココは仕方ない場面。
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つまり、いろんな意味で難所なんだ。
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そうですね。こういう場所は刃が滑ったりしただけでも、ピって傷付けてしまいますよ。
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滑ったらけっこう刃が遠くまでいってしまうんですね。
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樹脂を切っている途中で滑ったら、10センチ〜15センチは刃先が動いてしまいます。自分でも気づかないうちにそれ位は力を入れているはず。
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う〜ん。
恐いなー。 -
そもそも、こういう箇所を開けるのに、何回も何回も切ってやっと開くみたいなライン取りはしないことが大切。最後の防水がやりにくくなるので。
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1発のラインで切るほうが、防水性という面で有利ってことですね。
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そうです。
こういうことを総合的に考えて、レンズ面を大胆に切断するときもあるわけです。表からは見えないんだから。
大胆にレンズをカット!
そのままのラインでは障害物にぶつかる
こうしか切れないが……
超音波カッターで切るときは姿勢も大切
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刃が滑ったら、思わぬところを傷付けるリスクがあるという話のつづきですが、姿勢も大切です。
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なにごともフォームが大切ですよね。
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例えばこんな風に(↓)手を身体から離した姿勢で切っていると、滑りやすい。反動で手が動いてしまう量も大きくなります。
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身体の近くで切るほうが滑りにくいです。そもそも滑ったときに手が動いてしまう量も少ない。
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脇を締める、みたいな。
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ウチの田中が切っているときの姿勢はこんなカンジ。
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近いですね。
これは田中さんが目が悪いから、ではない? -
そうではないんですね。手の動きで切るんじゃなくて、手首は固まった状態で、「手の先は単なる棒」みたいに考えて、その棒を身体で動かしている感じです。
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手だけ伸ばして遠くから切るのは……、
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絶対やめたほうがいいですね。高い確率で失敗します。
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なるほどねぇ。
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それと前回、「切断面をキレイにするには、なるべく刃を途中で止めないほうがいい」とは言いましたが、刃が身体の近くまできてしまって切りにくくなってきたら、いったん刃を抜きましょう。
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途中で刃を抜く時のコツは、前回教わりましたね。
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無理な姿勢のままやるのも絶対失敗します。
手先が身体から離れすぎている
田中さんが普段切っている姿勢
この記事の実践アドバイザー
球屋・田中宏信サン。森田研究員に輪をかけたドM。働き者。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
この記事は「テールやライトを殻割りは、防水を考えて切る」へと続きます。