加工したヘッドライトを曇らせない! プロの防水シーリング
- 1
- 2
シーリングやブチルゴムを温めて、レンズとハウジングを分解するのが「殻割り」だが、今回は分解したライトを戻すときの「防水」について解説。
純正ヘッドライトのシーリング剤は再利用できる?
-
ヘッドライトの殻割り方法については「ヘッドライトの殻割り方法 序盤のコツ」等で解説してきた通りですが、今回は殻閉じ(からとじ)についてです。
●レポーター:イルミちゃん
-
殻割りしたヘッドライトを戻すときに重要になるのが、防水のためのシーリングをどうするかという問題です。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
-
ヘッドライトを閉じるときは純正のシーリングを温めなおして再利用している人が多いと思いますが…
-
ところが純正のシーリングが再利用できる車種は、どんどん減ってきています。
-
え、どういうことですか?
今回も期待を裏切らない重たい話になりそうです! -
最近の傾向として「溶着」または「ゴム」を挟んでいるだけ、というライトが増えているためです。
-
溶着タイプは、そもそも熱分解できないライトのことですね?
-
そうです。超音波カッターで切るしかないパターン。
-
溶着タイプは横に置いておくとして、熱分解できるライトは純正のシーリングを再利用しながら閉じるんじゃないんですか?
-
以前のシーリング剤はそれができたんですが、最近はゴムを使っているものが増えてまして…。
-
純正ライトが使っているのがゴムの場合は、再利用ができない?
-
やろうと思ったら出来なくはないですが、リスクが高すぎるのでできないと考えたほうがいいです。隙間ができて水が入る可能性が高い。
-
確かにこんなボヨンボヨンでは、密着できなさそう。
-
実際のところ、このゴムは純正でも水が入りやすいようです。分解する前から水が入っているのを何度も見ているので、僕はそもそも信用してないんです。
-
森田研究員は防水の鬼ですもんね。メーカー側は経費節減の鬼になりがちな時代だし。
-
というわけでウチは、純正がゴムだったらヘッドライトを閉じるときに再利用しません。
こんな感じのゴムが使われているライトも多い
80ヴォクシーのライトが使っていたもの。実際にはこんな風にキレイに取れるものでもない。
シリコンコーキング等は避けて、自動車用の防水シーリングを使うべき
-
純正が再利用できないなら、殻閉じのときどうするんですか?
-
ゴムは全部剥がしてしまって、新たにシーリングを投入してしっかり埋めます。
-
このあとシリコンコーキングなどを使って閉じる人も多いですが…
-
それをやってしまうと熱分解できないライトになりますので、やめたほうがいいです。純正ライトと同じくシーリングを使いましょう。
-
分解しないつもりなら、コーキングでもいいですか?
-
LEDは球切れするものです。修理不能にするのはリスキー過ぎる。
-
そっか〜。
-
だから自動車用の防水シーリングを使うのが一番いいのです。それなら再度、熱分解もできるので。
-
そうは言っても、自作ユーザーはプロの人が使っているシーリングが手に入りませんよね?
-
そういう声が多かったので、僕らが使っているシーリングは球屋でも単品で販売していますよ。純正ライトが使っているのと同じ、自動車専用シーリングです。
-
じゃあ自作ユーザーもプロと同じ方法が使えるんだ!
純正ゴムはミゾから完全に取り去る
>>>TAMAYA通販ショップ
防水シーリング
純正ヘッドライトが採用しているものと同じ、自動車ランプ専用のシーリング剤。球屋が実際にヘッドライト加工で使っているものと同じ。500グラムの大容量で販売。
-
ずいぶんと大きいブロックですね……コレ。業務用みたいな。
-
実際、これぐらいあったほうがいいので、ブロックのまま販売しているんですよ。色もグレーと黒の2色あります。
-
色まで選べるんだー。
-
大容量なので、量を気にせず防水第一で作業できます。
-
って言われても、どうやるんだコレ。
というわけで、実際に球屋がやっているシーリング方法を教えてもらいました!
ヘッドライトのシーリング方法
購入時のシーリングはこんな感じ。
-
このシーリングを細く切り出して、ハウジングのミゾに入れて温めるんですが、ひとつ注意点があります。
-
なんでしょう?
-
シーリングを柔らかくするためにヒートガンで熱をかけるんですが、このときに周囲に「熱に弱いメッキパーツ」などが付いていないほうがいい。
-
メッキは熱に弱いですもんね。
-
そうです。だからそれらを外した状態で行います。理想はハウジングのみの状態。
-
次はハウジングのミゾに残っている純正シーリングの油分を取り去るため、パーツクリーナーやシリコンオフで脱脂します。
-
シーリングの切り出しですが、普通のカッターだとくっついてしまって切れないので超音波カッターがベスト。
-
超音波カッターを持っていない人は?
-
はんだごての先がナイフ状になっている「ホットカッター」などの工具を使えばジワジワ切れると思います。
こういうメッキパーツは外しておく
ハウジングのミゾに近いパーツは特に外しておきたい。
ハウジングのミゾを拭くのは綿棒などが便利
次に!
ハウジングのミゾに合わせて細く切り込む
ココで
超音波カッターで切り込んでも、熱を持った切り口が再びくっつこうとするので、再び切り込みます。2回目からは、指で引き離すように力を加えながら切りますよ。
引っ張りながら刃を入れると裂ける
続いて
ブロックを倒して別の方向からも切り込む
シーリングが細く切り出せました
続いて
切り出したシーリングをハウジングのミゾに入れて、ヒートガンまたはドライヤーで温めます。
注①ヒートガンの場合は10センチ程度距離を開けて
-
シーリング量は、ミゾの深さに対して半分程度。満タンに入れてしまうとレンズ閉じたときにブチャっとハミ出てしまいますので。
-
見える場所でハミ出たらタイヘン。
-
それと、ただ熱で柔らかくするのではなく、マイナスドライバーのようなものを使ってハウジングに押しつけるように塗ること。
-
中に空気が入ると、そこが弾けたときに「巣穴」になるので、防水性が下がってしまいます。だから押しつけて隙間をつぶすんです。
-
なるほど〜。こうやってやっていけば、しっかり防水できるんだ!
-
今回の80ヴォクシーは純正がゴムだったので完全除去した上で入れ直しましたが、違うパターンもありますよ。
-
違うパターンとは?
-
純正もシーリングが使われているヘッドライトの場合は、それを再利用しつつシーリングを付け足すのが一番イイのです。
注③グイグイしっかり押しつけるように
次ページでは、純正シーリングを再利用するヘッドライトの場合を解説します