LED加工のプロが作る「ドアポケット照明」はなにがどうスゴイのか?
ドアポケット照明・光量アップ版が、LED加工専門店〈球屋〉の加工メニューに追加採用された。なお今までのLEDドアポケット照明よりも明るくするための方法は、LEDの数を増やすことではない。ではどうしたかというと……
純正風だった球屋の「ドアポケット照明」に光量アップ版が登場…!
-
「従来のカップホルダーイルミと〈光量アップ版〉の違い。どっちがいいの?」の続き。
●DIYラボ:イルミちゃん
-
今日はドアポケット照明について解説します。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
-
ちなみに球屋の「通常版」のドアポケット照明は、以前に解説したことがあります(↓)
-
今回レポートするのは、球屋が新たに展開をはじめた「光量アップ版」のほうです。
-
このLEDカスタムも、光量を上げようとすると根本的に作り方が変わってきます。
-
ふむ。
そこはカップホルダーイルミと同様なんですね。 -
ドアポケット照明を作るときは、車種にもよりますが、LEDチップを1~2個使っています。
-
普通に考えると、それを2~4個に増やせばいいのでは? という気がしますが……
-
こういうポケット照明の加工は、そもそも2個ぐらいまでしか入れられるスペースがありません。4個もLEDを仕込めるようなスペースがないのです。
-
でもLEDチップなんて、1個あたりほんの数ミリじゃないですか。いくらポケットが狭くても入りそうなもんですが……
-
球屋のドアポケット照明は、例によってアクリル越しに光を拡散させています。
-
ほお。
こんな小さい場所でもアクリルが使われている。 -
アクリル越しの光をポケット内に照射するために、ドア内張りにスリット(切り欠き)を入れます。
-
細長い窓みたいな状態ですね。
-
そうです。ハイラックスのドアポケット照明を例にすると、手前側の壁にスリットを入れました。
-
その切り欠きの裏面にアクリルとLEDをセットして、ポケット内の奥の壁を照らしています。
-
覗き込んで見ようとしても、全く見えませんけどね。
-
手で触っても分からないレベルですよ。
-
確かに……手で触って分かるような段差はありません。
-
そういう作りを心がけていて、ごくごく僅かな細い切り欠きしか入れないので。
-
どうせ見えない場所なのに?
-
見えなくても、頻繁に手を入れる場所じゃないですか。切り欠きの幅が太かったら、指が引っかかるので、触り心地に違和感が出ます。
-
あ~、そういうところにこだわりがあるから。
-
特によく触る部分ですからね。そして細いスリットを入れて光らせる手法は、純正LEDの仕込み方でも定番です。
-
純正でもドアポケット照明が付いている車種がありますね。
-
クラウンのフロントドアポケットを例にすると、内張りに切れ込みがあって、そこにアクリルが仕込まれています。
-
球屋では純正と同じ手法を取っているんだ。
-
というわけで「光量を上げたいから、単純にスリットを太くする」なんていう風にはできないのです。
-
触り心地に違和感が出るから?
-
そうです。
-
でもそれなら、横に長くすることはできますよね?
-
いや、切り欠きを入れられる範囲は限られています。ハイラックスのドアポケット(上)に話を戻すと、もともと「通常版」で開けられる限界まで開けているんです。
-
ではアクリルを伸ばしてLEDの数を増やすことはできないんだ。
-
そうなんです。ドア内張りってフラットな平面ではないので「好きな長さで切り欠きを入れられる」状況ではありません。
-
つまり、切り欠きは太くもできないし、長くもできないってことか。
球屋のLED加工によって光量アップされた状態だが、見た目は純正と同じ。
リスクを取らずにドアポケット照明の光量を上げるプロの技
-
そんな状況の中で、ドアポケット照明の「光量アップ版」はどうやって作っているのでしょうか?
-
結論を言うと、LEDとアクリルを換えました。
-
アクリルも?
-
はい。これまでの「通常版」だと、ドアポケット照明には乳白色アクリルを使っていました。
-
スリットが細くても、乳白色アクリルでLEDの光を拡散させることで、ぼわーっとポケット内を照らせるわけです。
-
純正っぽく光る秘訣ですね。
-
しかし、いっぽうで、乳白色アクリルは光を喰ってしまうので明るさは出しにくい。
-
ふむ。光を柔らかく拡散できるけど、弱めてしまう。
-
「純正風の明るさ」でいいなら、それで問題なかったんですけど。
-
光量を上げようとすると、乳白色アクリルではやりにくいんだ。
-
そこで、透明アクリルをブラスト加工したものに変えました。そのほうが透過率があがります。
-
乳白色アクリルよりも、透明アクリルブラスト加工のほうが導光率が高くてよく発光するのは実験済み(↓)
-
ただし、すぐ裏にあるLEDの光を「拡散させる効果」は落ちます。
-
明るくなるけど、ボワー〜ンっとはならなくなる?
-
そこでLEDは広角タイプを組み合わせました。アクリルの透明度が上がって拡散力が下がるぶんは、LEDの照射角を広げることで補っています。
-
ほほう。
照射角の違いか~。 -
結果的にトータルの拡散力で見たら同じような状態ですが、今回のやり方のほうが明るさは出せます。
-
ボワー〜ンと光っています。明るく光量アップしても「純正っぽい広がり方」は変わらず、だ。
-
ちなみに電流値は抑え気味にしてあるので、もっと明るくしようと思ったらできますが、明るくても寿命が縮んだら意味がないのでしません。
-
改造のリスク度合いは変えないで、明るさアップができている。
-
ドアポケットに手を入れて触れた感触は、「通常版」も「光量アップ版」も同じ仕上がりです。純正から特になにかが変わったとは思わないはず。
-
そこ、本当に大切にしてるんですね。
-
純正風というのは、明るさや色の話だけではなく「触ったときの違和感のなさ」も含んでいるんですよ。
-
そういうところで決して妥協しないのが、球屋のLED加工ですね。
✔ 球屋のアクリル使いの種類については、「アクリル板の種類。LEDで光らせるならどれ?」参照。
透明アクリルをブラスト加工したほうが、よく光が回るのは明らか。
光が柔らかく拡散して、ボワー〜ンっと光っている球屋のドアポケット照明。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。最先端かつデザイン性の高いライト加工技の探求者にして、アクリルづかいの若き老練者。純正風で分かりにくいまでにさり気ない、内装LEDイルミも精力的に提案。派手さより「完成度と質感」を重視する。
関連記事
- 従来のカップホルダーイルミと「光量アップ版」の違い
- ドアポケットLEDも、高級車純正風イルミのひとつとして外せない技
- 純正風インナードアランプ加工は、どこにLEDを仕込んでいるのか?
- アンビエントライトが後付け加工できる車種と、そうでない車種の違い
- アクリル板の種類。LEDで光らせるならどれ?
- アクリル板の厚みの選び方。DIYで使うなら何ミリの厚さがよい?
- アクリル板のきれいな切り方。曲線も切れる!
- アクリル板のきれいな曲げ方
- アクリル板の「押出し」と「キャスト」の違い。LED加工に使うなら?
- 乳白色アクリル板を裏に使う! プロ加工者の拡散テク
- アクリルを光らせるならサンドブラスト加工か? 手磨きか?
- アクリル板の固定・接着にコーキング剤が向きな理由
- アクリル板をDIYでブラスト加工風に処理して光らせる方法
- LEDの粒々がまったく見えない車のスピーカーイルミネーションを作るには…
- インテリアイルミネーションの後付けは、純正との調和が大切