塗装の悩みをプロに聞く
新車だから、パーツ塗装時に色合わせしなくても色が合う、というのは誤解
塗装の色合わせの誤解については、過去記事でもいくつかのパターンを解説しているが、今回は「新車の色」にまつわる話。新車は経年変化の退色や色あせがないから、データ塗装で色がキッチリ合いそうだが、プロに言わせるとそうではないらしい。その理由は……
塗装の色合わせ(調色)をしないデータ塗装のおさらい
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DIY読者からのパーツ塗装依頼を日々受けているほんだ塗装の「悩み相談」シリーズ。といっても、今日のネタは「読者の悩み相談」に本多研究員が答えるのではなく……
●レポーター:イルミちゃん
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……。
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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本多研究員、つまり「プロ側の悩み」を読者の方に伝える、という逆方向の巻です。
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……。
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本多研究員の悩みとは、どんな内容でしょうか?
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実は、データ塗装について誤解している人がけっこう多いので、ここでお伝えしようかと。
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データ塗装とは、色合わせ(調色)しないで、レシピ通りに塗装する手法のことですね。
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ハイ。各塗料メーカーが公開している「この車のこの色を作るためには、ウチの塗料ではこういう配合になります」という、配合データ通りに塗る方法です。
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データで塗装すると、ある程度、ボディ色に近い色では塗れますが、「ボディときっちり色が合う」ことまでは望めません。
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ふむ。
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だから、本来であれば、きっちり色合わせしたい場合は、パーツの塗装であっても現車を持ち込んでもらって調色(色合わせ)するほうが望ましいんですが……
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しかし、そのためには車を(ほんだ塗装に)持ち込む必要があるし、データ塗装のようには、安く塗ることはできなくなります。色合わせは一番大変な作業なので。
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だから、遠方からパーツの塗装依頼をする人だと、現実的にはデータで塗装するしかない。
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現状でDIYラボ読者の方からの塗装依頼のほとんどは、「パーツ単体を送ってもらって、データで塗装して送り返す」方式です。これなら車はなくてもいいし、なにより安価に塗装できるから。
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ふむ。……そこまでは分かっている人も多いと思いますが、それで悩みっていうのは?
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「データでいいですよ」と言っている人の中に、少なからず、「新車に取り付けるパーツだからデータでいい」という人がいます。これは完全に誤解です。
新車なら色褪せや経年変化もないから、色合わせは必要ない……?
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その人達が意図しているのは、「新車に付けるパーツだから、色合わせ(調色)はしなくても色は合う」ということです。
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その根拠は……
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ボディの色褪せなどは、まだ進行していない状態だから、現車で色合わせをしなくても色は合うはずだ、と思っているんですね。
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なるほど。
それで、色は合うの? -
合いません。新車だからデータ塗装でも色が合う、というのは誤解です。
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確かに色褪せなどの経年変化がない新車なら、色合わせしなくてもよい気もするが……
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「色合わせの必要性」とは、そういう問題(だけ)ではないんですよ。
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では、経年変化以外の、色が合わない原因は?
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まず、自動車メーカーが使う塗料と、まったく同じ塗料を使って板金屋が塗装しているわけではないこと。ほんだ塗装の例でいうと、関西ペイントの塗料を使っています。
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しかし新車の塗装がどんな塗料を使っているかは、メーカーにもよるし、塗装工場によっても変わってくる。
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そうか。そもそも純正と同じ塗料ではなく、純正に寄せた色を作っての塗装だから……。
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それぞれの塗料メーカーが「ウチの塗料であの車のあの色を作るには、この配合です」というデータ(※調色データ)を公開してくれていますが……
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でも、塗料メーカーの言う配合データのまま塗装しても、それで完全にボディ同色になるということはまずない。
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近い色が出せる、程度に考えたほうがいいのか。
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もちろん、塗料メーカーによっても差があると思います。あの車の色を作るなら、塗料メーカーAより塗料メーカーBのほうが近いといった差があるかもしれませんが、そんなことは分からないわけです。
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なるほど。
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それから、もっと根本的なところを言うと、新車の色自体にもバラつきがあります。
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むむ…。
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新車を塗装する工場が違うだけで、色の出方も変わってきます。細かいことを言うと、塗装する時期によっても変わってきます。年式の違いがあれば、当然変わってきても不思議はない。
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そういえば、新車でもバンパーとボディの色が全然違うとかっていう話が、ときどき話題になりますね。
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鉄のボディと樹脂のバンパーでは、新車であっても色がズレるのは避けられない。素材が異なれば、差は仕方ない問題でもある。
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……ようするに新車の色からして、ひとつではないから、絶対的な基準にはならない。
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そうですね。だから1台ごとのボディカラーにできるだけ近づける、というのが色合わせ(調色)ですが、それをやっても限界はあります。
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ましてや、データ塗装でピッタリにはならないと。
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ハイ。新車であろうとなかろうと、データで塗装して、完全なボディ同色になるとは思わないほうがいいです。
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フォローしておくと、本多研究員はデータ塗装否定派ではありません。それだと遠方からのパーツ持ち込み塗装なんて成り立たないしね。
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こういった点を踏まえてデータ塗装するならいいんですが、知らない人も多いので、毎回「車体に付けてキッチリ色が合うかといったらそれは難しいですから、分かっておいてくださいね」と説明をしています。
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新車であっても、その事情は変わりません、ということですね。
塗料メーカー(塗料の種類)ごとに色見本帳があり、各色の配合データが書かれている。
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