足回りパーツにピロボールを使わないJラインのこだわり
足回りのピロボールには、誤解も多い。純正でゴムブッシュが使われている部分が、社外品ではピロボールだったりするため、「ブッシュよりピロの方が格上」なイメージを持っている人が多い。しかし車の使い方によっては、本質は逆転する。
社外品のアーム類など、足回りの間接に使われるピロボールだが…
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DIYラボには足回りの異音の悩みが、たくさん寄せられています。今日は、その点にも関わる話です。
●レポーター:イルミちゃん
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異音の原因になる部品のひとつが、ピロボールです。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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ピロと聞くと、車高調のピロアッパーマウントに使われているイメージがありますが……
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ピロボールが使われるのは、アッパーマウントだけではありません。社外品のアーム類などの付け根(接合部分)などにも、ピロは使われたりしているし。
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フムフム。
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足回りパーツの間接に相当する部分は、純正だとゴムブッシュが使われていますが、それを社外アームでピロボール化していったりするんですよ。
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なるほど。
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間接部分をかたっぱしからピロボールに変更することを指して、フルピロと言ったり。
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つまり、ゴムよりピロボールのほうがいいんだ?
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その点を誤解している人が多いので、今日はこの話題を持ち出してきました。
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ほう……。
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よくJラインにこんな質問がきます。「Jラインのアームは、なぜピロを使わないんですか?」って。
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Jラインはピロボールを使っていないの?
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そうですね。基本的には足回りの間接部分にはピロは使わないのが、Jラインのこだわりでもあります。車高調の付け根でもなんでもゴムブッシュを採用してきました。
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ふむふむ。
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ただ、車業界には「ブッシュがダサい」というイメージが根強くあるというか……
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そ、そうなんだ。
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だから「ピロに変更してもらえないんですか?」と言われたりすることも、しばしばあります。
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ピロボールのほうが好きな人が多いのは、どうしてなんだろう?
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そこです。「ブッシュよりピロのほうが上だ」というイメージが蔓延しているからそうなるんですが、それは間違った認識です。
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ホー。
そうくるか。 -
だって、ゴムブッシュよりピロボールのほうが絶対的に良いモノならば、純正の足回りでピロを使うはずですよね? しかし純正の足回りの間接部分は、今日でもゴムブッシュが使われています。
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む……そういえばそうだ。なんでだろう?
レース用の足回りでは重宝されるピロボールだが、一般道には向いていない面も…
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もちろんレースの世界とか、趣味でサーキットを走る人であれば、ゴムブッシュではなくピロボールを使うことにメリットがあります。
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そういえば、そもそもピロ化する目的ってなんですか?
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ピロボールは金属なので、ゴムのようによじれたり、たわんだり、「力の逃げ」が発生しませんよね。サーキットを走る車は、足回りを固める必要があり、ゴム部品を排除してピロ化するのです。
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ピロボールも走りの世界から来たものなのか。
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しかし、それを一般道に持ち込むとなると、デメリットがあります。
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ふむ。
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サーキットのように平らでキレイな路面なら、柔軟性のないピロボールでガチガチにするのもいいけど、常に凹凸のある一般道を走っていればすぐにガタが出る。
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もしかして……それが異音の原因になる。
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そうです。よくある異音の原因のひとつが、ピロボールのガタですね。車高調に限った話ではなく。
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でも、ガタが出るような部品だったらレースの世界でも使えないのでは?
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競技の世界で使われるようなパーツは、頻繁に交換するのが前提です。極端に言えば1回のレースで交換してしまったりする。
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ああ、そうか。
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でも一般道を走る一般人が、ピロボールを頻繁に交換するのかっていったら、交換なんてしない前提じゃないですか。
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そりゃそうだ。付けたら何年も付けっぱなしでしょうね。
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しかしピロボールを採用する足回りは、本来は「1年もてばいい、2年もてばいい」っていう感覚です。中には、付けて1ヶ月で異音が出だす例もザラですよね。
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せめて5年くらいは持ってほしい気がする……。
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普通の人はそういう感覚で車のパーツを買っていると思うんですよ。
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当然でしょう。
高いんだから。 -
でも街乗りで5年、あるいはそれ以上、問題なく使える足回りパーツを作るなら「関節部分はゴムであるべき」というのが、Jラインの考えです。街乗りで使う足回りの間接は、やはりゴムで吸収性があったほうがいい。
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それが冒頭に出てきた、Jラインのこだわりなんだ。
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もちろん、サーキットを走る人や、ピロボールは消耗品と割り切っている……という人なら、ピロのメリットを取る、でいいと思いますよ。
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でもほとんどの人は、街乗りで使うだけだったりする。
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だとすると乗り心地が悪くなったり、異音の原因になったりするピロボールは、デメリットのほうが際だってしまいます。
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そうはいっても、ここはピロじゃないとダメみたいな箇所はないの?
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強いて言うなら、車高調のアッパーマウントのピロボールは、まあ、キャンバー角を付けた時のこと考えると、ゴムブッシュでは負担がかかってしまう(よじれる)ので、ピロボールのほうがショックに優しい面はあります。
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ですから「キャンバー角を付ける」前提なら、ピロのほうがいいかな、とは思いますが……ただ、やはりピロアッパーマウントは持たない例が多いんですよね。
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それで、ピロアッパーマウントのコトコト音は定番になっているんだ。
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値段の高い、硬めのピロボールを使えば多少は良くはなるんでしょうけど、安価な車高調では高級なピロボールだって採用しにくいし。
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……なるほど。
業界事情ですね。 -
ちなみに、車高調のショックの一番下の取り付け部は、最近ではピロを使う車高調は減って、だいたいブッシュになっている。
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そうなんだ。そんな変化があったとは知りませんでしたが。
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ピロボールは異音の原因になりやすから、最近はメーカーもそのあたりを考えているんでしょうね。
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なんでもかんでもピロがいい、っていうのは確かに間違いですね。
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でも「ピロのほうが優れている」という誤解が多いせいで、「Jラインはなんでブッシュを採用しているのか?」と言われがちなのは、やっぱり悔しいところです。
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いっそ、ピロボールを採用すれば売れるのではないでしょうか? 「あのJラインが高品質ピロを採用!」なんつって。
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そういう考えで足回りのパーツを作ってませんから。
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知ってます。
冗談で言ってみただけですよぉ。
以前に販売されていたJライン車高調の場合は、調整式アッパーマウント部分も(ピロではなく)ゴムブッシュを採用していた。
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL
022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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