古い車のメンテナンス
ラジエーターを修理するときに、費用だけで判断するのはNG
クーラント(冷却水)漏れが見つかり、ラジエーターの修理(交換)をすることになった。まず気になるのは費用だが、この修理費用には幅があって、一概には言えないもの。なぜそうなるのか、明確に理由があるので知っておこう。
ラジエーター修理……といっても、パターンはいろいろ
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「クーラント漏れに注意。ラジエーターのアッパータンクに亀裂が入る原因」で解説した通り、古い車に乗っている人にとっては、ラジエーターは要注意パーツ。
●レポーター:イルミちゃん
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今日は、クーラント(冷却水)漏れが起こっている車の、ラジエーター修理に関するお話をしておきましょう。
●アドバイザー:シャルマン 岡田研究員
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漏れているなら、当然ラジエーター修理ってことになりますね。費用はおいくらですか?
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費用が気になる気持ちは分かりますが、その前に、知っておいてほしいことがあるんです。
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ん?
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ラジエーターの修理ってパターンがいくつかあるんですよ。
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……え~っと、「水漏れ修理」をお願いしたいんですけど?
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例えばラジエーター本体から冷却水が漏れているから、ラジエーターを交換する……としますよね。
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ふむ。
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ラジエーターを交換するためには、まずロアタンクからクーラントを全部抜いて、そのあとホース類も全部外す必要があります。
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ホースは冷却水の通り道か。
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上から大きいホースで冷却水が入って、下から大きいホースで出ていくのがラジエーターの構造です。
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ちなみに、つながっているホースは冷却水だけではなくて、ラジエーターのロアタンクは、オートマオイル(ATF)のクーラーにもなっている構造の車が多いです。
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だからたいてい、オートマオイルのイン(入り口)とアウト(出口)が付いています。つまりラジエーターには合計で4本のホースがつながっているんですよ。
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ホースがいっぱい。
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まあ、とりあえずオートマオイルの話は置いといて、問題は冷却水のホースです。
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なにが、ですか?
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水漏れしているのはラジエーター本体だとしても、そういう車の場合は冷却水のホースだって、何十年も経過しているでしょう?
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……ウッ。
まあ、いっしょに年を重ねていますので。 -
ゴムだから、当然ながら劣化している。
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……それはそうだけど。
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それを再利用するのかどうか、という問題があります。本当は、このタイミングでホース類も交換したほうがいいですね。
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でも今回はラジエーター本体からの漏れ、という想定ですよね?
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しかし、劣化しているホースをいちど外して付け直すと、付け直したところから漏れたり……といったトラブルも起こりやすい。
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うぐ……。
トドメになってしまうのか。 -
まだあります。もし、冷却水漏れでオーバーヒートした車なら、サーモスタットも交換したほうがいいです。
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サーモスタットってなに?
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ラジエーターとエンジンをつなぐ境目に付いている「弁」のようなパーツです。エンジンの中の温度が一定以上になったら、その弁が開いて、ラジエーターから冷えたクーラントを送り込みます。
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なるほど、そういう仕組みなのか。
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でも、高温になりすぎるとサーモスタットのバネがおかしくなるから、オーバーヒートした車はそれも交換しておいたほうがいいんです。
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しかし、アレもコレもと言い出したら、どんどん費用が……。
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でも、部品代は3000円ぐらいのものですから。
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そういうことなら、交換してしまうほうが賢明か。
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それから、オーバーヒートした車はオイル交換もしたほうがいいです。
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ちょっと待ったぁ!
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なんですか?
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今はラジエーターの話で、エンジンオイルは無関係なのでは? 誠実さがウリのシャルマン・岡田研究員がまさかのボッタクリ?
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違います。オーバーヒートした時点で、油温が極端に上がって、エンジンオイルが高温にさらされているから、オイルの性能はなくなっていると考えたほうがいいです。
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……そ、そういうことね。
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ようするに、ラジエーターの修理とは、周辺のメニューをどこまでやるかによって修理費用がまったく変わってくるんですよ。
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思ったより、事情は複雑だった。
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「お金がないから、とりあえずラジエーター本体だけ交換したい」っていう人もいますけど、僕らからしたら、それはあまりしたくない修理方法です。
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岡田研究員は、トラブルの未来が見える人ですからね。
ラジエーターで冷やされた冷却水が、再びエンジン内に入っていくが、その調節を行っている。
ラジエーターの修理費用が高いか安いかは、内容を見てから判断しよう
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じゃあ、単純にA店とB店の修理費用だけ比較して、こっちが安いラッキー!っていう話ではありませんね。
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もちろんです。
それは内容による話です。 -
え~っと、ちなみにラジエーター本体だけだとすると?
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ラジエーターも純正を買ったら、モノだけで5万円を超えますよ。車種によりけりですが。
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高ッ!
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社外品なら5万円もあったらお釣りがくるレベルですけど……ただ、さっき言った通り、ホース類もいろいろ交換したら、普通に10万円前後はかかる修理内容です。
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う~ん。
では、こういうときこそDIYで……? -
DIYの修理は、普通の人だとちょっと無理があると思います。専用工具とまでは言わないけど、先の曲がったプライヤーなど、一般的ではない工具も必要になったりするし。
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フムフム。
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さらにラジエーター交換=クーラントも全部入れ直しになるので、ちゃんとエア抜きもしないと、エアを噛んでしまって、かえってオーバーヒートすることもあり得るし。
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修理したつもりで、またオーバーヒートなんて…。
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整備に馴れた上級者はべつとして、一般的にはDIYでオススメできるようなメニューとは言えませんね。
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なるほどね。
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オーバーヒートまでいってしまうとなおさら費用がかさむから、そういう意味でも「漏れの日常点検」が重要です。
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「予防」なら誰でもDIYでできますからね~。
というわけで、ラジエーターの修理費用は、一概には言えないのです
DIY Laboアドバイザー:岡田 健
シャルマンはドレスアップ専門中古車店。車購入後のドレスアップ依頼もプロショップ並にこなすうえに、トラブル対応にめっぽう強い。●オートショップシャルマン TEL:0066-9709-8501 住所:大阪府摂津市鳥飼本町5-6-9 営業時間10:00〜20:00 火曜定休
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