アースを疑え! 第3章
アーシングの第一歩は、純正アースケーブルの強化
車のアースがテーマの連載「アースを疑え!」。今回のテーマはアーシング。年式が古くなった車は、純正アースのケーブルもまた劣化しているもの。このヘタった純正アースケーブルを強化することが、アーシングの第一歩だ。
アーシングとは?
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DIYライフの藤本コーチとお届けする「アースを疑え!」第3章です。
※第1章は「アース不良対策として、アースポイントを増設・延長するという発想」
●DIYラボ レポーター:イルミちゃん
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今日からはアーシングについて、初心者向きに解説していきます。
●アドバイザー:DIYライフ 藤本研究員
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アーシング? 聞いたことあるけどなんだっけ? 確かそんな健康法が……
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車のアーシングです!!
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ですよね。
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まあ、車に限定してもなお、アーシングという言葉の意味するところは広いんですが、ようは「マイナス側の電気の流れを良くする」ということです。
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ほお。
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以前に、バッ直の方法について解説したことがありましたよね。カンタンに言えば、アレはプラス線(電源)の強化です。
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消費電流の大きい電装品は、バッテリーから直接電源を引くほうが安定するという話でしたね。
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そうです。しかし電装品というのは、プラスとマイナスが流れてはじめて動作するものです。
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プラスだけでは、電気は流れない。
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だから、プラス電源側だけではなく、マイナス側も電気の通りを良くしよう、というのがつまりアーシングの考え方なのです。
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アーシングは、マイナス側の強化なんですね〜。
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そんなイメージです。電気的なことを言えば、プラス線もマイナス線も同じ太さ、同じ長さで電源とつなぐのが理想ではあります。……ただし、車ではなかなか難しい話ですけど。
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ということは、バッ直みたいに、マイナス線もバッテリーマイナスに直結しろってコト???
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極論ではそうなりますが、本当にそんなことをしたら配線だらけになってしまう。現実的ではありませんね。
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ですね。
コストもかかるし手間もかかる。 -
……だからこそ、車は車体金属をマイナス線代わりに使っているのです。
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この純正の仕組みはそのままに、アーシングの第一歩としてオススメしたいのが、純正アースケーブルの強化です。
車体=マイナス線代わり
✔ ひとくちメモ
電装品を付けたときにマイナス線は車体金属部にボディアースするのが普通だが、これで電気が流れるのは、車体そのものがマイナス線として機能しているためだ。※詳しくは「ボディアースと、家電のアースはどう違う?」参照。
純正アースケーブルってなに? どこにあるの?
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純正アースケーブルってなんですか? それって車体のコトじゃないの?
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車体を通った電気が、最終的にバッテリーマイナスに戻るために、車体とバッテリーマイナスをつないでいる配線というのがあるんですよ。
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なにこの線!?
いつの間に! -
てゆーか、最初から純正で付いてますから。でないとエンジン始動すらできません。
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そうなんだ〜。
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マイナスの電気は、最終的には純正アースケーブルを通って、バッテリーのマイナスへと戻るのですよ。
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そうだったのか。
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逆に言うと、この純正アース線があるからこそ、車体にアース接続すると電気が流れるんです。
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そういうコトね! この1本(※2本あったりもする)は、けっこう重要な配線なんですね。
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そうです!……というわけで、アーシングの概念の中に、純正アースケーブルの強化、というのがあります。
純正アースケーブル
理にかなったアーシングもある
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先に言っておきますが、アーシングは新車でやっても効果を体感しにくい技です。
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そういえばアーシング自体、眉唾(マユツバ)的に語られることも多いですよね。
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マユツバではない、理にかなったアーシングはありますよ。年式の古くなった車では、効果が出やすい。
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そうなんだ。
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今回紹介する純正アース強化、という技を例にしても、例えば10年、20年と経過している車は、純正アースケーブル自体が劣化しています。
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純正配線はそれなりにいいものを使っているとしても、経年劣化は避けられません。被覆も劣化する。
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フム。
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それと、純正アースケーブルは、そもそもそんなに太くはない。
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そういえば。
意外と細いですね。 -
車種にもよるとは言え、この細い線に、全ての電装品のマイナスを通しているわけです。
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あー、そういうことになるのか。
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むろん、新車でノーマルの車なら、細くてもコレで足りますよ。
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自動車メーカーは、当然考えて設計してるはずですよね。
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しかし、劣化して電気の通りも悪くなってきて、なおかつ電装品をいろいろ付け足しているような車だとすると、話は別です。
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……電装品を足せば、マイナス側の電流も増えているんですよね。
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そう。ボディの鉄板を通る電気は増えている。そこからバッテリーに戻る電気……つまり純正アースケーブルを流れる電気も、純正の想定を超えていくことになります。
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それなのに、最後の純正アースケーブルが劣化していたら……マズイですね。
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ココは触ったこともない、という人が多いと思いますが、試しに外してみると……(↓)
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あ〜。
端子がサビサビ〜。 -
被覆も劣化して、固くなっていますね。
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ウーム。
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ココはバッテリーに電気が戻る最後の橋。こんな状態では、ボディアースもしんどくなってきます。
エンジンルームは熱にもさらされる
純正アース強化ケーブルは、太ければいいわけではない!?
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というわけで、簡単にできるアーシングの第一歩としては、純正アースケーブルの強化になります。
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アースケーブルの強化って、どうすればいいんですか?
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オススメのやり方は、純正アースケーブルはそのままで、もう1本、強化版のアースケーブルを足すのです。
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純正よりも、太いケーブルでつなぐんですね〜。
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しかし、ただ太いケーブルを足せばいいという話ではありません。ここはポイントです。
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違うの?
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「アーシングは太ければ太いほどいい」という風に考える人が多いんですが、単純な外側の太さではケーブルの性能は測れませんよ。
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太いほうが電気が流れそうですけど?
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同じように太いケーブルでも、内部の銅線(芯線)には違いがあります。針金のように太い芯線が数本入っているのもあれば、細い線が数百本入ったケーブルもある。どっちが電気が流れやすいか、分かりますか?
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中身も太いほうがイイ!
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いや、逆ですね。内部は、細い線がたくさん入っているほうが、より電気が流れます。
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そうなの?
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なぜかというと、電気は表面を流れるからです。太い銅線といっても、実際に電気が流れるのは外側ばかりってことです。
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ほほう。
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つまり表面積が大きくなるほうが、電気は流れやすくなる。だから細い線がたくさん入っているほうが、有利なんですね。
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なるほどォ。で、このアース強化ケーブルは、何本くらい入っているの?
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200本位入っています。銅線の表面積を稼ぐために、そうなっている。
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え〜。いくら何でも200本は盛りすぎでしょう? 数えたんですかぁ?
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……疑ってますね?
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DIYライフで採用しているアースケーブルと同じ規格の線を、切ってみました(↓)疑ってはいないけれど、念のため♫
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さあ、数えてみてください。
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それは面倒くさ……あ、いや、ひとまず話を続けましょう。ヒマな時に数えますね。
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……。ま、とにかくこういう高性能なケーブルを使って、純正アースケーブルを強化します。
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つまり、アースケーブルをこっちに交換するんですね。
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いや、純正ケーブルは外さなくてもいいです。付け足すことで強化になります。
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え、劣化しているのにそのままでいいの?
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痛んでいる純正ケーブルとは別に、バイパスを作るイメージですね。
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バイパスかァ。
で、旧道はそのままにしておくんだ。 -
そもそも電気の特性として、流れやすい(抵抗の少ない)ところから流れます。そうすると必然的に、流れやすいバイパスのほうを電気が通ります。
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そういうコトか。
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リクツの上では、純正ケーブルは外してしまってもOK。ただ、作業ミスで何かあっても困るし、純正ケーブルをそのままにしておけばリスクも無く、アースの強化ができます。特に純正ケーブルを外す理由もない。
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なるほど、なるほど。
それは、言えてる♪
DIYライフの純正アース強化ケーブル。太さ8スケアで、長さは30センチ・60センチ・90センチがある。今回の用途では30センチを使用。
確かに数百本はありそうだ。
電装品を取り付けたときにアース不良で動かない!というのは超定番。アース不良をなくすための方法論については、DIYラボ〈動画部〉がYouTubeで解説しています。ボディアースの基礎知識のおさらいにも最適な動画です!
DIY Laboアドバイザー:藤本壮啓
某カー用品メーカーに長年勤務し、車業界にDIYを広めた伝説の広報マン。現在は独立して、DIY用品を扱うセレクトショップ「DIYライフ」を設立。単なる製品の宣伝トークではない、DIYユーザー側に立ったアドバイスが持ち味。通称「フジモン」。
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