ヘッドライトをインナーブラック塗装するリスクと、その回避策
ヘッドライトのインナーブラック塗装について、ライト加工に強いプロショップ・球屋で聞いた話。以前はかなり盛んなライトカスタムだったが、最近はほとんど施工していないと言う。それは一体なぜなのか。球屋の場合、理由は2つある。
ヘッドライトのインナーブラック塗装を球屋に頼む人が少ない理由が興味深い!?
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今日はヘッドライトのインナーブラック塗装について取り上げます。最近、あまり聞かなくなった気がするけど。
●DIYラボ:イルミちゃん
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球屋でも昔はよくやりましたけど、今のような車種別のメニューを載せる形態になってからは、ほとんどやってないですね。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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そういえばライト加工メニューに「インナーブラック塗装」は、ほぼ載っていませんね。なんでだ?
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まず第一の理由としては、最近の車種のヘッドライトってほとんどが最初からインナーブラックになっているから、でしょうか。
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……あ。そういえばそうか。
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以前は、メッキのインナーを「マットブラック」や「艶ありブラック」に塗装する、あるいは「ブラックメッキ」にする、なんていう技が主流だったじゃないですか。
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なんであれ、メッキを黒系にしたい人が多かったのです。
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ところが、純正のインナーがメッキ主流ではなくなってしまったのか。
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最近の車種のヘッドライトインナーは、マットブラックか艶ありブラック、あるいはその両方を使い分けているパターンがほとんど。いずれにしてもほぼ黒系ですよね。
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そんなところも純正に取り込まれてしまったのね…。
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だからインナーブラック塗装自体、頼まれることがなくなっているので、あまりやっていないんです。
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……とはいえ、こだわって古い車に乗っている人も多いから、まだそれなりにニーズはありそうな気もしますけど?
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だと思いますが、球屋にわざわざインナーブラック塗装を頼む人が少ない理由は、もうひとつあるかも知れません。
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ほお? もうひとつの理由とは?
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ウチに依頼すると時間がかかりすぎるんです。これは頼む側にとっては大きなデメリットかと。
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そうなの? もし頼んだら、どのくらいかかるんですか?
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塗装だけで3~4週間はかかります。脱着なども入れたらさらに……
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ちょっと待てやぁ!
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……。
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今の球屋は遠方から来るお客さんも多いから、ほとんどのメニューは1日、あるいは1泊2日の納車でできるように組み立てているのでは???
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そうですね。土日しか来られない方が多いので。「加工で長期間預かり」とかいうのは、過去の話になっています。
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なんでそれが唐突に「3〜4週間」になるのよ!
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……んー、ですので、数日でやってくれる業者に頼まれる方が多いのかなと思います。だからウチは、あまり頼まれないのかなぁと。
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……4週間もかかる理由は?
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過去のいろいろな経験……それこそ失敗も含めて「ヘッドライトのインナーブラック塗装には、その位の時間を要する」というのが僕らの結論なんですよ。
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いったいどんなスゴイ塗り方してるっていうのサ?
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塗り方のモンダイではありません。
球屋が50プリウス前期のメニューで提案するブラックエクステンション。 純正シルバークロームに対して、ブラッククロームとブラックマイカの2種類の施工が用意されている。
インナーブラック塗装してレンズが曇るのは、ヘッドライト加工のあるある
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これはヘッドライトのインナーブラック塗装DIYでもあるあるの話だと思うんですが……
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ふむ。
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インナー塗装後、乾いてすぐにヘッドライトを殻閉じしてしまうと、のちのちレンズが曇ることになります。
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ヘッドライトが曇る!? 塗装が乾いてから殻閉じしたのに???
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塗料から揮発したシンナーがヘッドライト内に溜まるのが、レンズの曇りの原因なのです。
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なんと!
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蜘蛛の巣を張ったような曇り方をするので、水の浸入で曇るときとは曇り方も違います。
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原因はあとから蒸発したシンナーだったのか。
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パーツを塗装して表面上は乾いたなと思っても、中のシンナーが完全に飛ぶまではけっこうな時間がかかるんです。
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普通に考えたら、塗装したのち数日あれば問題なく乾燥するイメージですが……
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外装パーツ、例えばエアロパーツの塗装だったら2~3日後に車に取り付けて問題はないですよね。だけど、その時点でシンナーが抜けきっているわけではない。
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そのあとから、時間をかけて蒸発しているんだ。
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でもエアロパーツは「外」なんで、車に付けるときにシンナーが抜けきっている必要はありません。
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ところがヘッドライトのインナー塗装の場合は……
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完全に密閉された空間にとじこめてしまいますから、少しでもシンナーが残っていれば、あとからライト内に溜まることになります。
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そういう理屈だったんだ。
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ですので、僕らは塗装してからヘッドライトを閉じるまで、少なくとも3週間はぜったい空けます。
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その3週間はどこから出てきた数字なんでしょう?
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球屋が信頼して仕事を頼んでいる塗装屋さんからも、「シンナーを完全に抜こうと思ったら、3週間から4週間は待たないと絶対抜けきらないよ」と言われているので。塗装のプロの見解です。
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そういうことか~。
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もちろん、中の中まで完全にシンナーが飛ぶのを待つとなると……っていう話ですけどね。
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球屋はそこを厳密にやっている。
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ヘッドライトのインナーブラック塗装は特に狭い空間に閉じ込めることになるので、かなりシビアなんですよ。僕も過去に失敗した経験があるからこそ、の対策なんです。
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外装パーツの塗装とはぜんぜん事情が違うんですね~。
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というわけで、ヘッドライトのインナー塗装を仕事として受ける場合は、トータル4週間は見てもらいます。
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時間がかかるのはデメリットだけど……
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時間が経過したのち、ヘッドライトが曇るよりはいいでしょう。
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それは……間違いない。
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長い、遅いとは言われますけど、仕方ないですね。「ヘッドライトのインナーブラック塗装とは、本来そういうものです」ということなので。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。最先端かつデザイン性の高いライト加工技の探求者にして、アクリルづかいの若き老練者。純正風で分かりにくいまでにさり気ない、内装LEDイルミも精力的に提案。派手さより「完成度と質感」を重視する。
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