溶着タイプのテールやライトを切って開けたら、どうやって閉じるのか?
ドライヤーやヒートガンなどの熱で分解するタイプのヘッドライトは、シーリング剤を使って閉じる。この方法については「殻割りしたヘッドライトの閉じ方」で紹介している。が、溶着タイプのテールランプなどを超音波カッターで切断した場合、どうやって閉じるのか?
熱では殻割りできないライトはますます増える傾向
-
最近のテールランプは、熱では殻割りできないケースが多いんですよね?
●レポーター:イルミちゃん
-
傾向としては7割方、熱では開かない溶着タイプですね。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
-
その場合、前回の記事で教わった「熱では開かないライトやテールの殻割り方法」で開けるのですが……
-
そうですね。
一部のヘッドライトでも、溶着タイプは同じ開け方です。 -
ところでライトにしろテールにしろ、切って開けた場合、どのように閉じるんでしょう?
-
もともと溶着されていて開かなかったライトやテールを閉じるときは、再び溶着させるんです。
-
溶着(ようちゃく)とは?
-
樹脂を溶かすんですよ。
溶着テール殻閉じのカギはジクロロメタン
-
超音波カッターで切って開けたライトやテールを閉じるときは、アクリル用の接着剤を使います。
-
ほほう。
アクリル用を? -
ようは、樹脂を溶かして付けるタイプの溶剤です。
-
こういうのを使うのかー。
-
熱で溶かすようなやり方だと、表面しかくっつきません。コーキングでも強度的に足りない。レンズの重量もけっこうあるので、接合部の強度が弱いと割れて水が入る原因にもなります。
-
殻閉じで重要なのは、防水性ですもんね。
-
そうです。
溶剤を使えば内部までしっかり溶けてくれるので、頑丈にくっつきます。 -
ここでアクリル用接着剤が出てくるとは、意外でした。コレでライトがくっつくとは。
-
ポイントはジクロロメタンという成分です。それがプラスチック樹脂を溶かして溶着させるので。
-
ジクロロメタン、ですかー。
-
それを小瓶にして売っているのが、市販のアクリル用接着剤なんですね。
アクリル用の接着剤
レンズとハウジングの隙間に流し込む
-
でも溶かすってことは……付けすぎたら恐そうです。
-
液体なので、余計なところに付着しないよう注意は必要ですね。使うときは、表面レンズ面に垂れるような向きでは使用しないのがコツ。
-
レンズに垂れたらどうなるんだろう?
-
ちょっとでも溶剤がハネたら溶けます。
-
すぐに拭かなきゃ!
-
いや、もう拭いても遅いです。飛んだ時点でアウト。
-
アウトって?
-
溶けて痕が残ります。めっちゃ磨いたら消えるかもしれないけど、基本的に修復は困難でしょうね。
-
……重たい話ですねぇ。
どうやって作業してるんですか? -
アクリル用接着剤を使うときは、殻割りしたレンズとハウジングを圧着した状態で、流し込んでいきます。
-
流し込むとは?
どうやって? -
注射器みたいな形の先の細いスポイトを使います。
-
以前、超音波カッターで境界線を切ったら、レンズが白く濁ったのを覚えていますか?
-
そういえば。
切るときにそんな話がありましたね。 -
その部分にアクリル用接着剤を流し込んでいくんです。液体なので、入れると横にも伸びます。
-
この作業、ヘッドライトのレンズが下を向いた状態でやってはいけません。
-
垂れたら大変だから、ですよね。
-
そうです。
表から見える部分が溶けないようにやります。 -
こうやって溶着させているのか〜。
-
テールは、だいたいがこの方法で殻閉じしてます。接着剤を塗ったら3〜4時間程度おいて、そのあとで仕上げをします。
注射器型のスポイト
超音波カッターによる殻割り
切った境界線に少しずつ流し込む
アクリル用接着剤だけでは不十分
-
アクリル用接着剤でレンズとハウジングの溶着はできますが、それだけだと防水性の面で甘いです。
-
これだけだと、水が入る可能性がある?
-
溶着といっても、ところどころに小さな隙間ができる可能性はあるので。
-
中だから見えないしなー。
-
そこで! 境界線に沿って上からシリコンコーキングなどを打ちます。
-
コーキングも使うんですね。
-
そうです。コーキングは熱に強いし、形状も変わらない。耐震性もあります。
-
なるほど。
-
この作業をやりやすくするために、断面はキレイに切りたかったわけですよ。
-
開けることしか考えない切り方をすると、ここで苦労するんだ。
-
何回も刃を入れて切れば、いろいろなカットラインができてしまう。これは防水が大変です。
-
溶着タイプのライト&テールの閉じ方を教わりました。開け方は、「熱では開かないライトやテールの殻割り方法」を参考にしてくださいね。
コーキング剤
仕上げにコーキングを打つ
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
関連記事